聞かれても
私はゴブとの戦い以来、アーロア様と親しくなった。
アーロアの仕事の休みと、私の仕事の休みが重なると、部屋に呼んでくれたりもする。
最初は上位の部屋に行くだけでドキドキしていたのだが、最近は人間との付き合いが増え、それに伴いラーリア様たちや、特にナーリアたちの家に行くとよくミーリア様やイクス様が居たりするので、慣れてきてしまった。
緊張でオドオドすることはなくなってきた。
アーロア様にそこをからかわれたりもする。
「ねぇ、ロー、ワーリアも最近ふてぶてしくなって、可愛げがなくなったよね。」
「それはいくら何でも言い方が可哀想じゃない。 慣れてきたと言ってやらないと。」
ちなみにローとは、アーロオ様のことだ。
あまりに言いにくいので、みんなローと呼んでいて、それが普通になっている。
「アーロア様、そんなこと言われても無理です。
最近はナーリアたちのところに行くと、ほとんどいつでもミーリア様がいらっしゃるんですよ。
ミーリア様に会うことを考えたら、上位区画に来るくらい何でもなくなっちゃいます。」
「うん、それは分かるわ。 ミーリア様に慣れたら、私たちなんてどうってことないわよね。 ウンウン。」
ロー様がとても納得してくれて、アーロア様も苦笑している。
「ミーリア様は怖いからね。 本当に空気が凍るからね。
よくナーリアたちは、耐えられているな、たいしたものだ。」
「それがですね、アーロア様。
ナーリアたちの家では、そうでもないんですよ。
普通にナーリアたちと軽口叩いてますよ。
ナーリアたちも普通に言い返してますし。」
「えっ、あのミーリア様が軽口を叩くの?」
「そうなんですよ、ロー様。 最近は私たちにもそんな調子になってきてますよ。
氷のミーリア様の姿とは大違いで、偽物かと思うくらいです。」
この言葉は二人に大ウケだった。
「そう言えば、あなたの姉妹たちだけど、ナーリアたちは本当に凄いね。
小さい時から凄かったの?」
「私、そう言われても、ナーリアたちの凄さが分からないんです。
火を使えたのはびっくりしたけど、それはアレクのせいであって、今では姉妹はみんな使えますし。
そのアレクの凄さが、最近やっと分かってきたところなんです。」
「近すぎると見えないってヤツかな。」
ロー様がそう言うが、良く分からない。
「ローは本陣の戦いが見える位置に居たからな。
ローはあれ以来、ほとんどナーリアたちのファンなのよ。」
「そうは言うけど、アーロアだってあの戦いを見たのならファンになる気持ちが理解できるよ。
本当に凄かった。」
「そうらしいね。 ミーリア様たちが絶賛しているよね。」
「ヤーレアたちもです。 あれは見なければ分からないって。」
「そうだね、あれは実際に見ないと分からないかもしれないな。
単純な弓矢の能力だけじゃないのよ。 確かにそれも凄いんだけど。
何としても助けるとか、何としても役に立つとか、そういった気力というか、迫力が溢れ出るのよ。
その姿が、見ている者を奮い立たせるのよ。」
「あらら、またローの大絶賛話が始まっちゃったね。」
「ヤーレアたちもなんです。 その時の話をしだすと、絶賛して止まらなくなる。」
「そんなこと言ってるアーロアだって、あの時の作戦の話になると止まらなくなるじゃない。」
「そりゃそうよ。 あの作戦よ、本当に素晴らしいとしか言いようがない。
ミーレア様も天才的って褒めてたわ。
残念だけど、とても私には立案できないって言ってたけど、本当に同感よ。
あの作戦を立てた、セカンとディフィーは天才ね、素晴らしいわ。」
「そんなに凄い作戦だったのですか。
私は戦場自体が初めてだから、その辺は全くわかりません。」
「そうかもね。 でもね、こう言えば分かるかしら。
私たち上位は、この前のゴブとの戦いで2/3は確実に死ぬと思っていたのよ。」
私はびっくりした。
戦いは怖かったけど、そんなことは考えてもいなかった。
アーロクさんが戦死して、その亡き骸を運んだ時、これが戦いの現実なんだと思い知らされたけど、その認識さえ甘過ぎるものだった。
「アーレアたちは全滅を覚悟していたと自分たちで言っていたわ。
私たちも覚悟していたけど、全滅を覚悟していたのはアーレアたちだけかな。」
ロー様がそういう言うと、
「そんなことはない、ラーリア様たちも全滅を覚悟していたし、ミーリア様、ミーレア様たちも、ほぼ自分たちの壊滅を覚悟していた。
それだから指揮官の二人だけ、隊が押し出した時に残された。」
なんかとんでもないことを話されている気がする。
「ま、でも、そういう状況をナーリアたちは作戦とあの弓矢で覆して見せたのよ。
混乱を鎮めたのもナーリアの献策だと言うし、もう、何なのって感じよね。
知れば知るほど、特別過ぎるわ。」
「特別と言えば、アーレアたちが言っていたのだけど、アレア様が隠密の技をレンスに教わったって言ってたわ。
アレア様より隠密が上手くて、教える程ってちょっとおかしいでしょ。
アレア様は上位で一番隠密の技が上手かったんだから。」
「いや、レンスはあのイクス様の娘だというから、それはおかしくないんじゃないか。
そこはあり得る話だろう。」
「特別と言えば、あの時大怪我をしたサーブなんですけど、私、体力馬鹿だとばかり思っていたのですけど。」
「サーブか、良く生き残ったな。 それも後遺症なしだ。
同じ様な怪我をしたアリオが死んだのだから、アレクのお陰かな。」
「はい、アーロア様、そこは確実です。
ナーリアが『私は既のところでアーリア様の様に、サーブを死なせてしまうところだった。 アレクが体当たりして止めてくれた。』とも言っていましたし。
あのあまり他人を褒めないレンスが『アレクは凄かった。 アレクのお陰でサーブは助かった。』って言ってましたから。」
「アレクはやっぱり凄いんだな。
ラーリア様たちや、ミーリア様、そしてイクス様が、アレクのことを気に入っている感じはとてもするのだけど。」
「はい、アーロア様、アレクは凄いです。
私たちも最近は何かを一緒にする機会が増えたのですけど、見ていればいる程、アレクの凄さが分かってきます。
ナーリアたちがアレクの言うことにすぐに従うのが不思議だったし、ヤーレアたちなんてほとんどアレク信奉者って感じだったのですけど、だんだん私もその気持ちが分かってきて、アレクのことを気がつけば目で追っちゃうんです。
それは私に限ったことではなくて、私たちの姉妹たちにも多いのですけど、若い子たちもみんな目でアレクを追っているのが分かるんです。
何かしている場にアレクがいると、みんな作業の合間にチラッチラッとアレクの姿を視線で追うんです。」
私もアレクを絶賛するのなら、何の躊躇いもない。
知れば知るほど、アレクを絶賛し、讃えたくなる気持ちが出てきてしまうのだ。
「ほら、ワーリアもナーリアたち絶賛組の一人ね。
で、サーブはどうなったのよ。」
ロー様に笑いながら注意された。
「そうでした、サーブでした。
ただの体力馬鹿だと思っていたのですけど、まあ若い子に麦わら帽子を教えたりもしたのですけど、私の評価というか見方は変わっていなかったのですけど、最近ちょっと見方が変わりました。」
「何かあったの?」
「とにかく、若い子たちの人気が凄いんです。
ナーリアたちはみんな若い子たちに人気があるのですけど、その中でもサーブの人気はずば抜けているんです。
若い子たちはサーブが居るだけで、明るく楽しそうになるんです。
あれはもう、なんていうか一つの才能かなって、この頃になって思ってきました。」
「やっぱり、ナーリアたちはみんな凄いのね。
本当に小さい時は凄くなかったの?」
「うーん、ナーリアたちは、みんなちょっと浮いてる感じはあったけど、そんなに凄いとかなかったですよ。
逆にダメな感じは結構ありましたけど。」
「やっぱり身近すぎると見えないのよ。」
ロー様にそう言われたが、やっぱりこれと言って思い当たることはない。
聞かれても困るなぁ。