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「アーリベ、あなたはどうするの?
私はとてもじゃないけど、アーリアには従えない。」
「もしこのままアーリアが指揮を続ける事態になったら悲劇だと思わない?
私たちは自分たちの考えに従うべきなのよ。
誰の目にもアーリアが指揮官として不適格なのは明白だわ。」
アーリク、アリトが私に迫る。
「私もアーリアは指揮官失格だと思うわ。
だけど私は同室になっているアーリルの気持ちが分からなくもないの。」
「アーリルはこれでもアーリアに従うって言ってるの?」
「そんなことないと思うけどなぁ。 私はアーリルもアーリアはダメだと判断していると思う。」
アーリナ、アーリンも私に態度を決めるように、間接的に言う。
「確かにアーリルもアーリアが指揮官を続けられるとは思っていないと私も思うよ。
だけど、アーリルはアーリアをまだ見捨てられないという気持ちを持っている。
もう少し時間をかけて、アーリアが落ち着いた時に誰が指揮をするかをはっきりさせたいと思っていると思うの。」
私は困った立場に立たされている。
元々、アーリアはアーリアのグループが少しだけ先に上位に昇格し、その後で私のグループが昇格して合わして今の隊となった。
一つの隊となったが、最初からあまり仲はよくなかった。
最初に上位としての部屋をもらえる時に二人部屋の組み合わせで揉めた。
私は二つのグループが一つになるのだから、二人部屋の組み合わせはそれぞれにアーリアのグループと私のグループの一人づつで一部屋を使い、それぞれに親睦を深めグループとの和合を計るのだと考えていた。
私は下位グループの時のリーダーとして、そのつもりだからとグループのメンバーと話しておいて、部屋割りの話に臨んだ。
正直なことを言えば、私は元々アーリアが好きではなかったから、アーリアと同じ部屋になるのは嫌だったのだが仕方ないと思っていた。
私が二つのグループの融合を図るために、それを提案するとアーリアは
「なんで順位の下の者と一緒の部屋にならなければならないの。
私は嫌だわ。」
「なんでって、今、私は意図を説明したよね。 もう一回言おうか。」
「必要ないわ。 そんな提案聞く気ないもの。」
「それでは話し合いにならないだろう。 ちゃんと話を聞こう。」
アーリルが取り成そうとしたが、アーリアは聞く耳を持たなかった。
「私たちの方が先に上位に昇格したのだから、順位は私たちの方が上よ。
その順位が上のグループのリーダーが私なのだから、このグループのリーダーは私。
私の指示に従って動いてくれればそれで良いのだわ。」
アーリアのグループの元からのメンバーは、こういったアーリアの物言いに慣れていたのか、諦めていたのか、処置無しという感じで見放している。
アーリルだけが困った顔をしている。
「そういう気だったら、それで良いんじゃない。
私たちだけが気を使う必要はないよ。」
アーリクの冷たく突き放した言い方の言葉で、もう話し合いは完全に終わった。
どうしても一部屋は一緒にならねばならないので、私が最も話が分かるアーリルと一緒の部屋になった。
そんな感じで始まったアーリアは一つの隊ということだが、実質的には二つのグループのままだった。
ただ私とアーリルだけは同室になっただけでなく、なんとなく気があったので親しくなった。
それでも二つのグループが一体化していくということはなく、一応アーリアが指揮をするが、実際は一方をアーリアがもう一方を私が指揮していた。
問題になるのは行動上グループを三班に分けねばならない時で、普通なら指揮官のいる班を4人にして、他を3人で二班にすると思うのだが、それだとアーリルが私のグループに一人で参加する形になり、アーリアが自分の影響の強い班が一つなのに私の影響が強い班が2班になることを嫌がり、自分の班を3人にして、その他で2班とすることになった。
私の元からのグループメンバーは、その馬鹿馬鹿しい班分けを嫌がり、結局私がアーリルとアリファと組むことになった。
ま、そのおかげに私だけはアリファとも少し打ち解けるようになった。
アリファも内心ではアーリアのそういうところに辟易としていたのだ。
そんなだから、アーリアに作戦行動などない。
アーリアが突っ込んでいくのを元からのグループメンバーが追い、それを私の元のグループメンバーが冷ややかな感じで、仕方なしについて行く。
それだけだった。
グループとしての作戦を考えたり、連携を考えたりすることはないから、私たちは個々の武芸を上げるしか出来ることはなかったのだが、皮肉にもそこは上位の方々の目に留まり、アーリアの隊としての評価が上がった。
ゴブとの戦いの時、隊列を作る時に大きな問題が生じた。
徐々に包囲を狭める指揮を執るという名目の為、アーリアの班が真ん中に配置されてしまい、私と元の私のグループは離れた位置になってしまったのだ。
私とアーリルが間に入って、それでなんとかなんとなく一つの隊としてやれていたのだが、このゴブとの戦いでは、それさえ無くなった。
戦いでの全体の作戦だから、アーリクたちも一応アーリアの指揮に従っているけど、何か不測の事態でも起こったら、隊としては動けないと私は思った。
アーリルもそう思っていたみたいだし、アリファもなんとなくアーリアに批判的なので、同じ様に感じていたみたいだ。
「私たちはあの時、何もアーリアを助けに行きたかった訳じゃない。
勝手に突出して行ったアーリアたちを仕方ないから追いかけただけ。
それもあなたたちが追いかけ始めたのを見たから、私たちも従っただけだった。」
そのアーリクの言葉は聞かなくても分かっていた。
私だって、追いかけるかどうか迷った。
作戦案だと、ゴブへ突入して行くなんてない、私はアーリアを無視してこの場に留まる方が良いのではないかとも考えた。
私だけではない、アーリル、アリファも迷ったみたいだ。
私も含めて3人が視線を交錯させて、それでもアーリアたち3人だけではゴブに対して危な過ぎると考えて、仕方ないという感じでアーリルが追い始めたのだ。
アリファも私も仕方ないとそれに続き、それを見てからアーリクたちも仕方なく追い始めたのだろう。
もう隊ではなかった。 アーリアに仕方なしに引きづられているだけだった。
一番鉦が鳴った時、私たちはもう完全に離ればなれだった。
私は鉦の音を聞き、もう追わなくていいやと安心した。
「その後の事態を見たミーレナ様が自分の身を顧りみず猛然と突っ込んで来て、奮闘を始められたのよ。
それを見て私たちも急いでその場に加勢に行ったのよ。
そうしたら、私たちはそのミーレナ様にアーリアを連れて逃げろと言われたのよ。
その言葉に従わない訳にはいかないわ。
私たちがアーリアを引き摺って逃げたのは、ただそれだけのことよ。
アーリアもそれが分かっているから、礼の一言もないんじゃない。」
アリトが冷たく乾いた調子で言う。
「私たちアーリアを助けなければならない義理なんてないものね。」
「そのおかげでゴブには追いつかれるし、エーレアたちや、アーレアがいなかったら私たち死んでたかも。」
アーリナ、アーリンも冷たい声で言う。
それも良く分かる。 お荷物がなくても私たちもアリファが片腕を斬られてのだ。
「これでもアーリアを指揮官にしておくなんてありえないでしょ。
元々私たちのグループはあなたがリーダーだったのだから、あなたが指揮官になれば良いのよ。
それでもなければアーリルでもいいわ。
アーリアよりダメなことはないでしょうから。」
「アーリルは唯一残ったアーリアと元から同じグループのメンバーだから、批判的ではあるけど、アーリアを見捨てることはできないみたいなのよ。」
「その個人的感情は理解できなくもないわ。
でもそれを隊という公式の場にまで、強く持ち込んで欲しくはないわ。」
アーリク、アリトに詰められる。
「アーリベが今話していることも、アーリルに対する友情から出ている言葉でしょ。」
アーリンにそう言われてしまうと返す言葉もない。
「アーリアは今人数が3人も足りていない。
根本的に隊の組み直しがされる可能性もあるけど、単純に補充される可能性もある。
補充されてくるとしたら、エーレアたちだよ。」
アーリナが現実的なことを言い出した。
「私、エーレアたちにアーリアの指揮に従えなんて言えないよ。」
それはそうだ、私だってそんなこととても言えない、言える訳がない。
「やっぱり、どう考えても私たちはアーリアを指揮官とは認められない。」
アリトの言葉にみんな頷いている。
仕方ない、どうしようもない、私も内心はその通りだと思ってしまっているんだから、何も言いようもない。
私が話している内容は、アーリルに対する友情からだけの事であるのも自覚しているから。
「それが問題になることがあったら、アーリベは何も言わなくていいよ。
私が言うから。」
アーリクがそう言った。
「アーリベはアーリルと同室だから、言いにくいのはわかるから、アーリベは黙っていてくれて構わない。」
「うん、そうだね。 アーリベはいいよ。」
私がグループのリーダーだったのに、それで良いのかと自分でも思うのだが、アーリルが困ったり、悲しんだりする顔を見るのも、それはそれで嫌なのだ。
そうなる行動を自分が先頭でするのは、やっぱり踏ん切りがつかない。