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ラミアの独り言 ---「気がついたらラミアに」サイド・ストーリー ---  作者: 並矢 美樹


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ある豊かになってきた実感

 ラミアは女性型だけの種族だから、人間が主な地域ならば男が受け持つような力仕事だったりも、厭わずに皆が力を合わせて受け持つ。 元々、ラミアの里に本当にラミアしか居なかった時には、それをしなければ生活が成り立たなかったのだから、当然と言えば当然なことだ。

 だからと言って、ラミアが女性らしいところを失ってしまっているかというと、全くそんなことは無くて、人間やハーピーたちの女性と同じような、女性らしい傾向というか雰囲気は、全く変わることはない。

 変な言い方だけど、ラミアは女性だけの種族だけど、自分たちの自己認識でも、あくまでラミアは女性なのだ。 ま、これは人間の男性がいなければ、子孫を残すことが出来ないから、当然の認識なのかも知れない。


 さて、そんなラミアたちだから当然のこととして、自分たちの身なりだとか、美容だとか、そういったことに対する関心は強い。

 古い話だが、日頃のお礼にヘアブラシをナーリアたちに作ってあげた時には、他のラミアもそれが欲しいと一大騒動となったっけ。 蜜蝋を利用してのクリームも、本来は傷薬が主目的だったのだけど、取り合いになりそうな騒ぎだった。


 ラミアは、髪や目、それに肌の色や、尻尾の鱗の色などは個性に溢れているのだが、その違いに起因する差別は全くない。 差別がないとは言っても、その個性に自分の美意識が向かないかというとそんなことはなくて、ディフィーは珍しいピンクの髪色を誇っているし、レンスは漆黒のサラサラな髪を長く伸ばしているし、自分の外見を気に入っていないらしいセカンも目の色だけは自慢のようだ。

 サーブは自分の外見をどう思っているのか分からないけど、瞳の色が白くて、その目と対照的に黒銀色の髪をとても短くしていた外見は、とても印象的だった。 どういう訳かサーブは、子供を産んでからは髪を伸ばして短髪はやめてしまった。 短髪は母親らしくないということらしい。

 そういう意味では、最も自分の外見に無頓着なのはナーリアなのだが、ナーリアの黄金色の髪と透き通った青い目は、何もしなくても目立つんだよな。 ナーリア以上に外見で目立ってしまうのはミーリア様くらいのものだ。



 なんでこんなことを改めて考えているかというと、つい最近ラミウィン領には、今までには無かった新たな店が出来た。 お金を払うと、髪の毛をきれいに切ってくれるという店だ。

 髪の毛なんて、長くなって邪魔になれば、適当に自分で切るか、近くにいる人に切って貰えばそれで済むことである。 ちなみに僕の場合は、長くなるとセカンがきれいに切り揃えてくれ。 僕だけでなく、我が家では他の皆も子どもたちも、手先が器用なセカンに切ってもらっている。 イクス様はこっちに居ないので、自分で切っているみたいだし、メリーはイクス様に切ってもらっているみたいだけど。

 つまり何が言いたいかというと、髪を切るということが商売になるとは僕は思っていなかったのだ。 自分で切るか、家族にでも頼めば済むことに、わざわざお金を払う人がいるのだろうか、ということだ。

 ところがどうしてどうして、そんな僕の考えは見当はずれで、その店はとても繁盛しているらしい。


 どうしてそれが分かったかというと、そういう新しいもの、珍しいものに目がないワーリアが、早速その店で髪を切って来たからだ。 順番待ちでかなり待ったということだ。 へえ〜、そんなに繁盛しているんだ。


 「やっぱり専門家は違うよね。 見てよ、この髪。 私たちが自分たちで切るのと違って、少し複雑な切り方がされているらしくて、さっと梳かすだけで髪がしっかりと綺麗にまとまるのよ」


 ワーリアは自慢して、わざわざ髪をその場で梳かして見せている。 ワーリアはナーリアとは実の姉妹だから、2人は雰囲気が全く違うから普段は思わないけど、そんな風にして顔貌を見せられると、やっぱり似ているなぁ。


 ワーリアはとても自慢そうに話したり、自分の髪を見せたりしていたのだけど、ナーリアたちにはあまり相手にされなかった。


 「確かに綺麗に切れているとは思うけど、ウチにはセカンがいるからなぁ。 わざわざ順番待ちして切ってもらう程のことじゃないな。

  今ワーリアが見せてくれた複雑な切り方というのも、セカンが見ていたから、たぶんそのまま再現してくれることも出来るぞ」


 セカンがサーブの言葉に軽く頷いた。


 「あっ、見せるんじゃなかった。 ここにはセカンが居るから、見せたら再現されてしまうのか」


 「私じゃなくても、たぶんワリファでも出来ると思う」


 「ええっ、それじゃ私だけお金と時間を損したということじゃん」


 「そんなことない。 誰かが試して、それを見せてくれないとセカンでもワリファでも再現できない」


 レンスが慰めるように言ったけど、慰めになっているのかな。 お金と時間をワーリア1人が使ったことは変わらない。


 「でもさ、そういう店がこのラミウィン領、んーん、ヴェスター領に出来て、繁盛しているって、凄いことだよ。

  もちろん特別な技術があるから商売になっているのだけど、それでも自分でしても用が済むことを、お金を払ってしてもらう人が、その店の経営がしっかり成り立つ程度存在するということだもの。

  つまり、それだけヴェスター領の領民は金銭的な余裕が出来たということなのよ。 食べるのに困っていたり、生活が苦しければ、そんなところにお金を使える訳はないのだから」


 アンの言葉に僕は納得した。 それだけヴェスター領の開発が上手くいって、領民がそれぞれに豊かになったという証拠なのだろう、その店が賑わっているのは。

 僕にはそのことが、なんだか頑張ってきた褒美のように感じられてきた。


 「そのうちに男性の髪を切る店も出来るんじゃない。

  そうしたら最初にお得意さんになるのはハーピーの男たちね」


 モエギシュウメがそんな事を言った。 確かに、ワーリアが行って来た店は女性を対象にしている店だったようだけど、男性版のそういう店が出来てもおかしくない。

 最初のお得意になるのがハーピーの男だろうという予想は、ちょっと色々な事を含んでいるな。 根本は、ハーピーが人口減少を食い止めるために、種族として堅固な一夫一婦制から、正反対の多夫多婦制に路線変更した事だろう。


 「でもやっぱり、衣食住に一応の目処が付いたら、その次はやっぱり美容関係だよね」


 えっ、ナーリアもそこは気になるのか。


 「うん、ラリファ様のところで作られている、海藻を焼いた灰を原料にした石鹸は、他の物よりもずっと高品質だから、もっとここでも売って欲しい」


 「確かにあれは高品質。

  ラリファ様は、あれを『もっと高品質にする』って言っていた。 なんでも花の香りをつけるらしい。 花の香りの香油を作る技術をエルフから教わったので、それが応用出来ると考えているらしい」


 「ドワーフの肌を守るための日焼けを防ぐクリームがあるだろう。 あれを少し効果を弱めて、ドワーフ以外の種族用に売り出すという話だぞ。 これはアレファ様から聞いた。

  凄いよな、これも臨海区の話だ。 臨海区は、漁業と水運だけでなく、どんどん発展しているな」


 「でも、普段使うクリームは、なんて言ってもラミアの里産の蜜蝋を原料にした物が最高。 比べるに値する他の物はないよ。

  使用しての効果ももちろんだけど、あの蜂蜜由来の香りは他にはないよ」


 他にも紅花を使った口紅やら、爪に塗る染料やら、次々と最近流通し始めた美容品が、みんなの話題になった。 こうなると男の僕は完全に蚊帳の外だ。

 僕は最初から話に加わっていなかったクラウスの所に向かう。

 クラウスは予想していたのか、僕のためにお茶を用意してくれていた。 うん、実に副官らしい気配りなのだろうけど、どちらかというとラミウィン領の諸々の事柄はクラウスの采配で動いているんだよなぁ。

 バンジは自分が担当することがはっきりしているけど、僕は領主という肩書きはあって、それに付随する決定したり裁定したりなんてことはあるけど、これっていう決まった仕事があるような気がしないんだよね。 人の上に立つという仕事にいまだに慣れていないからかもしれないけど。


 それにしてもヴェスター領がしっかりと発展して行っているのを、少し実感した気がする。

 臨海区に負けないように、ラミウィン領も発展するように頑張らないといけない。


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