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まあそれが正しいのだけど

 「今回は誰が行くの? 私も今回は連れて行って」


 「エーデル、ラミアの里に行きたいの?

  それなら今回は私の替わりに行っていいよ。 エーデルが行くなら私まで行く必要はない。

  マピドとティッタを連れて行ってね」


 「うん、レン姉、了解。

  マピ、ティッタ、おいで。 馬車に乗せてあげるから」


 「エーデルお姉ちゃんが行くなら、僕も行く。

  アンお母さん、良いでしょ、僕も行っても」


 「構わないけど、ちゃんとイクス母様やセカンお母さん、そしてエーデルお姉ちゃんの言うことをちゃんと聞くのよ。

  メリーお姉ちゃんとエーデルお姉ちゃんが揃っているからって、遊んでもらってばかりじゃダメよ。

  ウォルフだけじゃないよ、マピとティッタもそれからミランもだからね」


 アン姉の言葉を聞いているのか聞いてないのか、ウォルフが私に飛びついて来たので、抱き止めて馬車に乗せてあげる。

 馬車に乗った途端に、即座にもう遊び始めているから、きっと誰もアン姉の言葉をちゃんとは聞いていなかっただろう。 アン姉もあまりそこは拘っていないみたいだ。 どうせ向こうにはイクス母様がいるから、しっかりと引き締めてくれるだろうからだ。


 馬車の御者席にはセン姉が座っている。 どうやら今回はセン姉とレン姉の番だったようだ。


 「エーデル、子どもたちと後ろに乗る? それともこっちに乗る?」


 「前に乗る。 もう少し馬車を御すの上手くなりたいから、セン姉、教えて。

  後ろはティッタがいるから大丈夫でしょ」


 馬車の御者をするのを「教えて」と言ったけど、お兄たちが作っている町とラミアの里を繋ぐ道はもう綺麗に整備されていて、ましてやこの馬車を曳く馬は通い慣れた道だから、御者が何もしなくても声を掛けただけでその役割を果たしてくれる。 だから今セン姉に何か教わるということはない。 まあ道なき所とか、荒れた道を気を付けて進まなければならないとなると、私の腕はまだまだで、教わることはたくさんありそうだけど。


 「それでエーデル、話があるのでしょ。 聞いてあげるわよ」


 セン姉は馬車が動き出すと、すぐにそう言ってきた。 当然だけど、私が本当に御者の仕方を教わろうと思っていた訳ではないのはバレバレだ。


 「あのね、ワリファ姉に言われちゃったのだけど、やっぱり子どもたちに私の呼ばせ方変えさせた方が良いかな?」


 セン姉は、ちょっと虚をつかれた様な、間の抜けた様な顔を一瞬見せた後で、呆れた様に言った。


 「なんだ、そんな事。 好きにすれば」


 「好きにすればって、セン姉、冷たくない? セン姉にとってはそんな事でも、私にとっては重大な事なんだから。

  確かに私の呼び方が変わっても、別に何かに影響する訳じゃないけどさ」


 「まあ確かに、エーデルはアレクの妹なんだから、子どもたちにとっては本当は叔母さんで、お姉ちゃん呼びは間違いと言えば間違いだから。

  でもワリファは今頃になって急に何でそんなことを言い出したのかしら、自分たちが "おばちゃん" 呼びでエーデルが "お姉ちゃん" 呼びだからというのも今更だし。

  まあでも、一時メリーがミーレナさんを "お姉ちゃん" 呼びして、ミーリア様を "おばちゃん" 呼びしたら、ミーリア様が『どうして私は "おばちゃん" 呼びなの?』とブツクサ言っていたから、そういうものなのかしら。

  私たちはティッタが言葉を発するようになった時から、最初から "お母さん" 呼びだから、そういうのは解らないのよね。 自分の子どもが "お母さん" 呼びだったら、当然子どもと同世代は "おばちゃん" 呼びだから」


 セン姉はディー姉と共に天才軍師とか言われていて、周りの人は「頭の中で何を考えているのか見当もつかない」なんて言われているけど、私と一緒の時は考えていることをほとんど何でもそのまま口にするので、私にとってはとても分かり易い。


 「ああ、そうか。 ワーリアたちはもうすぐ子どもが産まれるから、そうするとエーデルもその子たちにとってはエーデル母さんか。

  それで、エーデルにとっては兄の子どもたちであるウチの子たちや、他の子どもたちに、ちゃんと "おばちゃん" 呼びさせた方が良いということか」


 「うん、そういうこと。

  私は、最初はメリーが "お姉ちゃん" 呼びなんだから私もって軽い気持ちだったのだけど、少し後からは、エーデルさんがエーデルおばさんと呼ばれているから、それなら私は "お姉ちゃん" の方が区別が付いて良いかなとも思ったんだよ」


 「まあ確かに今までは、ヤーレンの所のエーデルと紛らわしいから、 "お姉ちゃん" 呼びの方が都合が良かったかも知れないな。

  でもこれからはエーデルもワーリアたちの子に "エーデル母さん" と呼ばれるようになると、ウチの子たちに "お姉ちゃん" 呼びさせるのは変ではあるね。

  将来的には、エーデルの子どももワーリアたちをも "お母さん" と呼ぶのだから。

  それに、基本的には私たちやエーデルを含むワーリアは、ラミウィン子爵領となったこっちで暮らすのだから、開発のために砦やアルフさんのところにいることが多いヤーレンたちとは、今までほど一緒になる機会は少ないだろうから、どっちか分からなくて問題になることもまずないだろうし」


 「まあ、そうなんだけど、残念だけど私自身が子ども持てるのは、まだかなり先だけど。

  それでさ、今回は一応メリーにも話をしとこうと思ったのと、ルリちゃんにも聞いてみようと思って」


 「そうね、メリーはアンの妹だから、立場的にはエーデルと一緒だからね。

  まあメリーに関しては、もう変更は無理だと思うけど」


 「うん、まあ、そうだよね」


 メリーはずっとラミアの里で暮らしていたから、お兄の子どもたちだけじゃなく、お兄の仲間の子どもたち全員に "お姉ちゃん" 呼びが定着しちゃっている。

 そもそもティッタと同時期に生まれた子たちなんて、全員が半分メリーが育てたんじゃないかというような調子だったのだから、その下の子たちが一番上のお姉ちゃんに倣ってしまうのは当然の成り行きだ。


 「まあ、メリーは子どもたちと歳が近いからね」


 「私だって、メリーと3つしか違わないよ!!」

 あ、何だかミーリア様の気持ち解ったかも。 私の反応にセン姉が笑っている。



 ラミアの里のお兄たちの元の家には、今はイクス母様とメリーが住んでいる。 そこに交代でお兄の他の妻たちや子どもたちが来ている。

 メリーがこっちで暮らしているのは学校に行く都合があるからだ。

 メリー世代の子たちは今は休みの日を除いて、毎日学校に行っている。

 学校で教わっている内容は、イクス様とエレクさんの妻のシルクさんが中心になって決めていて、教えているのは基本はその2人にハーピーの女性たちで、内容によってはセン姉、ディー姉、レン姉なんかも呼ばれて教えたりもしている。

 ちなみにハーピーの女の人が飛んで行って各地で教えている内容も、基本的には同じだ。 ただしどうしても基礎的な内容に留まってしまう部分が大きくて、ラミアの里で教えている内容の方が高度な事も含むことになってしまっている。

 そこで今は、より高度なことを教える学校を新たに作って、領内から優秀な子たちを集めて教育することが計画されている。

 そんな話し合いを、イクス様はエレクさんと共に主導しているから、とてもお兄の領地の方で暮らす余裕はないのだ。 まあそれに、年上のイクス様に親しい人はみんなこっちに居るしね。


 「エーデルお姉ちゃん、それじゃあ子どもたちに "エーデルおばちゃん" と呼ばれる様に変えるの?」


 「うん、そうしようと思う。

  でもメリーは当たり前だけど、子どもたちと一緒の時以外は今まで通りだよ」


 「それは解っているよ。 エーデルお姉ちゃんは、お兄ちゃんの妹なんだから。

  でもそれじゃあ私も "おばちゃん" と呼ばせた方が良いのかな?」


 「メリーはいいんじゃない。 今更無理だと思うし。

  それにさ、私はお姉たちの姉妹であるワーリアのみんなと同じ人の妻になることになったから、その必要があるけど、メリーはお姉たちの姉妹と同じ人の妻になることはないのだから、メリーがアン姉の妹でも "お姉ちゃん" 呼びでも大丈夫だよ」


 私はルリちゃんにも、この話をした。


 「ふうん、そうなの」


 反応が薄い。


 「だって私は、もうずっと前からウチの子たちからは "ルリ母さん" と呼ばれているから、当然他の子たちからは "ルリおばちゃん" よ。

  今更同い年のエーデルちゃんが、『"おばちゃん" 呼びに変えました』って言ったって、ああそう、としか言いようがないわ」


 「えっ、そうだったの。 私、全然知らなかったわ」


 「まあエーデルちゃんは私が子どもたちと一緒の時を余り見ることがなかったからね。

  でも私だけじゃないよ。 クリちゃんとアイちゃんも同じだよ。 それぞれの家の子には "母さん" だし、それ以外の子たちには "おばちゃん" だよ」


 「そうだったんだ。 それじゃあ私がどうしようかって考える必要なかったんだ。

  ルリちゃんたちが、もうそう呼ばれていたんだったら、私も同じで当然だもの」


 セン姉に簡単にあしらわれる筈だ。

 それにしてもルリちゃんが、デイヴさんの子どもたちに"ルリ母さん" と呼ばれていると聞いたら、より一層もうすぐ産まれる子たちのことが楽しみになった。


 「アン姉はウォルフだけじゃなくて、最初の時から他の子たちにも自分のおっぱいあげていたんだよね。

  私たちももう子ども作れるのに、まだダメって止められているんだよね。 次の時は絶対私も一緒に産みたいなぁ。

  というか、次の時は私に周りが合わせてくれるんだった」


 私は人間だから、種族保存の本能が強く働いている訳じゃないと思うけど、自分の周りに下手をしたら種族が絶滅しかねないラミアとハーピーの友人がたくさんいるからか、何だかとても自分も子どもが欲しいという気持ちが高まっちゃっているんだよね。 今はまだ我慢だけど。


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