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同世代で同性の友人

ラミアの独り言というタイトルなのに、今回はハーピーの独り言です。

私のお祖母さんは、今のハーピーの里の最後の人型のハーピーだった。

そして私の世代になると、多種族との関わりを争いのあったラミアしか知らないから、実感としては全くわからないのだが、珍しいハーピーだったということだ。

何が珍しいのかというと、祖母はその母がハーピーで、父が人間だというのだ。

ハーピーの女性はハーピーの男性と結ばれるの人がほとんどで、人間の男と結ばれるのは珍しいことだったのだという。

ハーピーの女性は、どちらかというと守られた存在であるとも言えるかもしれないが、自由がない存在とも言えるかもしれない。

ハーピーの女性は、その里からほとんど出ることがなく、昔も男性ハーピーのように自由に飛んで、異種族と知り合うなんてことはなかったのだ。

それだから、ハーピーの男性は人間の女性と子供を作る者も昔はかなりいたらしいし、そのために人間の女性もかなりハーピーの里で暮らしていたらしい。

そもそも、異種族の人たちはハーピーというと、空を飛ぶ鳥型の種族だと思い込んでいるみたいだが、昔は飛ぶことができないハーピーの方が数が多かったらしい。

お祖母さんの母親、つまり私からしてみれば曽祖母に当たる人もそういう人で、鳥型に近かったが飛べないハーピーだったということだ。

曽祖父に当たる人は、友達になったハーピーに連れられて、半ば面白半分でハーピーの里に来たのだが、どうやら曽祖母と恋仲になったためにハーピーの里に居ついてしまったらしい。

そして、お祖母さんが生まれて少しの時、その友達と一緒に空から温泉の調査をしていて、事故で2人とも死んでしまったのだという。


ハーピーは目が良いし、私はそんな祖母を持っていたから、人間に対する興味が子供の頃から強かった。

私の1番のお気に入りの場所は、人間の道が見える峰の岩の上だった。

子供の頃私は暇な時はすぐにそこに行って、腹ばいになって、道を眺めていた。

その道を馬車が行き交ったりした時は大興奮でその光景を眺めていた。

しかし、年齢が上がってきて、もっと色々なことを見る機会ができるに従って、私は人間に対する興味を失っていった。

同族同士で争い、殺し合い、物を奪う姿に、心底がっかりしたのだ。

そして、その血が自分にも流れていることに思い至り、自己嫌悪の様な気持ちを持った。

そんな話を何時だったろうか、ハルオン様にしたことがあった。

「お前はお祖母さんが嫌いになったのか?」

「いいえ、お祖母さんは大好きです。」

「そうだろう。 なら人間の血は関係ないだろう。

 それにハーピーは誰でも少しづつは人間の血を引いている。 人間の血を引いているのはウスベニメだけではないのだよ。

 私にももちろん先祖に人間はいる。 何も気にすることはないのだよ。

 それに、もう死んでしまったが、私の1番の親友は人間だったんだ。

 良い奴もいれば、悪い奴もいる。 それは人間でもハーピーでも変わらない。

 そして良い奴ほど、早く死んでしまったりするものだ。」

最後の方は話の内容が変わってしまった気がしたが、その最後の言葉をつぶやく様に言ったハルオン様が、なんだかとても寂しそうだったので、その時のことを私は鮮明に覚えているのだ。


人間が3人、ハーピーの里にやって来た時、私は人間に対する興味が、また急に心の中に湧き上がった。

ハーピーの里に人間がやって来るなんて、年老いた人たちに聞いても、ハーピーの里がこの、山の高い場所に移ってから初めてのことらしい。

私はとにかく、実際に自分でも直接に接してみたくて仕方なくなった。

3人がやって来た時に、空を飛ぶことに慣れないので、へたり込んだ。

エレオンが仕方なく、「誰かちょっと世話してやってくれ。」と言った時、私はエレオンたちと同世代だから、その言葉に応じてあげるというフリをして、世話役を買って出た。

ま、後でモエギシュウメに「あんた、人間の世話役を他には誰にもやらせない、っていう感じだったよ。」と言われてしまったのだけど。

ま、確かに私は絶対にその役を、他の誰にも渡す気は無かったのだけど。


実際に人間に接してみると、その喋り方や物腰は丁寧で優しげなのだけど、その視線が気になった。

何だかとてもジロジロと観察するかの様に私を見るのだ。

まあ、でも私も彼らを、しっかり観察する様に見ているのだから、これはお互い様なのかもしれない。

私が近くで人間の男を見るのが初めてなように、彼らもハーピーを間近で見るのは珍しいのだろう。 尋ねてみたら、やはり彼らもハーピーを間近に見るのは初めてのことだった。 なんとなく、ちょっとだけ連帯感が出来た気がした。

そんな気持ちに少しなったのに、その直後に彼らは私たちと敵対しているラミアと暮らしていると言った。

私の連帯感、親近感は一気に吹っ飛び、警戒する気持ちで心が一杯になった。

私は、自分の幼い時からの興味で、自分がこんな役目を引き受けたことを強烈に後悔した。

油断したら何をされるか分からない、急に全身がわななき、自分でも羽毛が膨れ上がるのを感じた。

その様子に気がついた人間は、私に謝り、警戒しないでほしいと言った。

その言葉は本心の様な気はするが、一度感じてしまった警戒心が簡単に収まる訳が無い、言葉では「信じます。」と言ったけど、私はもう警戒心で一杯だった。


その人間3人はハーピーの里の客人となった。

彼らは何も気がついていないみたいだったけど、「ハーピーの里の客人」というのは、ハーピーの里に来た異種族に与えられる最高の待遇だ。

ハーピーの里にとって、とても重要な人物であって、信頼できる人物であると長たちが認めたということなのだ。

私は、それを聞いて警戒心が緩んだのを感じた。

その後、彼らが焼いてくれたウサギは懐かしい味がしたし、蒸した芋くらいの物をあんなに喜ぶとは思わなかった。

人間3人は私やエレオンたちと歳も変わらない様で、エレオンたちとは急速に親しくなっているようだった。

私も、何となく親しくしても良いかなと思うようになってきたのに、「温泉に入ってくれば良かったのに。」って、あれは何なの。

私に温泉に一緒に入れと言うの、ふざけないでよ、全く。

それから彼らは何度もハーピーの里にやって来た。

初回の時のようにハーピーの里で夜を過ごすほど長居はしなかったが、来る度に私も何となく彼らと会うようになり、温泉の時のことを除けば、彼らは気の良い信じられる人であると思うようになった。


ところで、ハーピーは今、とても人数が少ない。

このままでは種族として絶えてしまうと、長老たちはとても心配している。

話によるとラミアも人数が少ないのだが、ラミアには年長者が何故かいなくて、私たち以下の若い世代で比べれば、ハーピーはラミアの半分どころか1/3の人数もいないだろうと言うことだ。

そんな風に言われても、ハーピーの里しか知らない私には実感がない。

でも確かに親しい同世代は少ないし、同性となるとモエギシュウメくらいしか居ない。

それが普通だったから、何も感じていなかったけど、人間、いやもう個人名で語ろう、アレク、デイヴ、キースの話を聞くと、ラミアには私たちと同世代が何人も居ると言う。

エレオンたちも、アレクと一緒に暮らしているラミアの5人と会って、普通に会話したと言っていたし、ラミアって言うけど、私たちと別にそうは変わらなかったと言っていた。

私は人間に対する興味とは別に、その同世代のラミアたちにも段々とすごく興味を感じてきた。

とにかく会ってみたい。


そんなことを思っていたら、エレオンたちがハーピーとラミアの同盟の式の為の交渉係、ラミアやアレクたちとのやり取り係を任されることになった。

その一連のことから、彼らはアレクの家での食事に誘われたという。

アライムなんかは、アレクたちが用意してくれる食べ物をとても楽しみにしていて、側から見ててもウキウキしているのが丸分かりだ。

私はちょっとそれはないだろうと思ったし、それを理由に一緒に行って、ラミアに会ってみようと決心した。

「私も行くわよ。」

「招待されたのは俺たち3人で、ウスベニメは招待されてないだろ。」

「アライム、彼らが来た時、食事の用意をしたのは誰?」

「それはウスベニメだけど。」

「そうでしょ。 ただ、彼らと一緒に食べたあなたたちが招待されて、用意をしてあげた私が招待されないなんて不公平だと思わない。」

「ま、そう言われるとそうなんだけど。 でも・・・」

「アライム、諦めろ。 ああなったウスベニメは誰も止められない。

 ま、ウスベニメも参加してもアレクも別に困らないよ。

 それにラミアたちはウスベニメが行けば喜ぶんじゃないか。

 ハーピーは男だけじゃないと言ったら、同性にも会ってみたいって言ってたじゃないか。」

そうなの、ラミアも私たちに興味があるの、それならもしかしたら、仲良くなれるかもしれないと私は思った。


そして私はアレクの家に行き、同年代のラミアと知り合った。

正直に言えば私は、男たちが「ラミアでも全然変わらないよ。」と言っていた言葉を信じていなかった訳ではないけど、かなり緊張していた。

私たちはラミアと戦ったことはないけど、私たちより上の世代は命をかけて戦っていた相手なのだ、緊張するなという方が無理というものだ。

男たちが能天気に、「変わらないよ。」と言う神経を疑いたいくらいだ。

ところが会ってみたら、アライムの考えなしの無神経な言葉の話題から始まり、一気に違いが異種族であることを忘れて、男のデリカシーのないことで話しが爆発してしまった。

楽しかった。

普段私はこんな風に話すのはモエギシュウメだけなのだが、さすがに互いに知り過ぎていて、良い悪いは別にして、相手が何を言うかわかってしまっているので、話しが爆発するように盛り上がることはない。

おしゃべりがこんなに楽しいことだと初めて知ったような気がする。

気がついた時には私は彼女たちがラミアであることを、全く忘れておしゃべりに夢中になっていた。


でもそんな話の中で、私は考えたこともなかったことも聞いた。

アレク、デイヴ、キースが最初にハーピーの里に来た時、彼らは問答無用に殺される可能性も考えていて、それを覚悟した上で、自分たちの為でなくラミアの為に、私たちハーピーの里を訪ねたのだという。

そして、そんな危険な役を彼らの仲間の人間たちは、自らその危険を引き受けると争ったというのだ。

ハーピーが問答無用に殺すなんてことをする訳がないのだが、それは私たちが思うことで、その時点ではラミアにしてみれば、十分あり得ると思えることだったのだ。

彼女たちは、今では笑い話だけど、その時は死にそうに3人を心配したし、人間たちが自分たちを思ってくれる気持ちが、どれほど嬉しかったか、と語った。

それと一緒に彼女たちが、私に対して、人間たちが良い人たちであることを一生懸命伝えようとしていることにも気がついた。

私は、アレクたちに対して見る目が自分でも変わったことが分かったし、ちょっとそういう視点がなかったので、衝撃も受けた。

そして私は彼女たちにとても好意を持った。


警戒していたことを、私はあっさりと忘れて、彼女たちに会うことが楽しみで仕方なくなった。

それで私はシロシュウメ様を通して、ラミアとの連絡係に女性がいないのは問題があると進言した。

ラミアは女性だけの種族だから、連絡係が男性のみだと話しにくいことがある可能性があると思ったのだ。

ま、本音としては、私も公式に彼女たちのところに定期的に行きたいと思ったからなのだけど。

シロシュウメ様は私の言葉に頷くと、ちょっと微笑んで、

「それはそうね、良いところに気がついたわね。 あなたも連絡係の1人にするようにハルオン様に進言しましょう。

 同い年くらいの同性は少ないから、おしゃべりを楽しむといいわ。

 モエギシュウメも連れて行ってあげてね、構わないから。」

と言われてしまった。 バレバレだった。

でも私があれこれ考える前に許可ももらえた、今度行く時はモエギシュウメも連れて行こう。 きっと、おしゃべりがもっと楽しくなる。


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