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父は本当の愛を見つけたらしい  作者: 雷ライ
〜ソフィア〜
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弟を見つけました

久しぶりにマクレル領に戻ってきた私はお兄様と一緒に身分を隠して、市場へと向かった。


サラは授業は終わったが、私を見つけ走り出したところをマナーの教師に見つかり補習中です。





市場といっても今回は裏通りを歩くつもりなので、

サラがいなくてよかったかもしれない。




「相変わらずですね、裏通り」


しばらく歩き、今回の目的地が近くなってきた。


「まあ、無くなればいいものだが無くては困るものでもあるからね」


裏通りは治安が良くない。


しかし、その分家賃も安く物価も安い。


色を売る人も多くおり、彼女たちを雇う店も多く存在する。


売らせないことができたら素晴らしいのだろうが、現実問題として難しいことが多いので、常に不快にならない最低ラインになっている。


今日裏通りに来たのは人身売買をしている店があるという情報を入手したためである。


身分を隠しているとはいえ、いいところの出であることがすぐわかる私とお兄様は囮だ。


見える範囲にはいないが騎士や自警団たちが目を光らせている。



「あそこだな」


お兄様が見つめる先にあるのは普通の居酒屋のようなお店。


「やはり目立つ見た目はしていないですね」


「売り買いしている奴らは全員捕まえなくわな。マクレル領にこれ以上の悪評が立つのは困る」


「そうですね」


父の名のおかげなのか恋をするならマクレル領と未婚の男女には大人気だが、家族連れや既婚者には評判が悪い。



店に入るとすぐに店主と目が合う。


私は髪を耳にかけるフリをして、貴族特有の花の紋を見せつける。


店主はそれを確認すると店の奥に扉に目を向ける。


お兄様はそちらに向かって歩き出す。


ここからは騎士たちは入ってこれない。


人身売買を確認したら、排気口に待機させている使役ネズミたちに笛を吹き合図を送り、ネズミたちが騎士たちに知らせる手はずになっている。


そうしたら、彼らが店に乗り込んでくるので私たちのお役目は終わりだ。


面倒臭いが国王陛下直々のご依頼なので断れない。



まあ、証拠はあっさりするほどそこらじゅうに落ちていた。


売られている人たちには値札がかかっているし、買い手の方には何人か花の紋を確認することができた。


「証拠の宝庫だな」


お兄様も周りを見て言う。


「もう合図送りましょうか」


「ああ」


お兄様に確認をとり笛を吹く。


これで暫くしたら騎士たちがくるはずだ。


「逃げられても大丈夫なように、貴族の顔だけ覚えておくか」


お兄様はそう言って、売っている人たちを見るフリをして貴族たちの観察を始めた。


暇になってしまった私があたりを見回すとパチッと十代前半ぐらいの少年と目が合う。


何かに惹かれたのか少年に近寄る。


少年の顔を見て驚いた。


驚かれるのは慣れているのか少年は何事もなかったかのように瞳をそらす。


「桜の花の紋」


「?」


私の呟きの意味がわからなかったのか少年は首をかしげる。


少年のことが気になりさらに近く。


「!」


少年は驚いているが、私はもう驚くを通り越して頭を抱えたくなる。


「あなた名前は何?」


「ルカ」


「母親の名前は?」


「ミリー」


「母親の職業は何だったの?」


「踊り子」


「貴族の屋敷なんかでも踊ってた?」


「ああ」


頭を抱える。


目があった少年・ルカの顔一面を覆うように桜の模様があり、瞳はマクレル家の男子に現れる桜色。




「ねぇ」


ルカと話そうとした途端、バンッと大きな音をたてて大勢の騎士や自警団たちが乗り込んで来た。


「動くな!」


彼らは次々と貴族や店の人たちを抑えつけていく。


貴族たちが連れて行かれると今度は売られていた人たちだ。


身元のわかる人で誘拐などで連れてこられた人は騎士たちの手によって送られる。


しかし、家族などに売られた人たちはそういう訳にはいかない。


騎士団の宿舎で一時的はに預かることができるが、ずっといることはできない。


まあ、それを考えるのはお兄様たちの仕事なので私にはどうしようもない。


それより今はルカだ。


桜の模様がある以上は彼はうちで引き取りたい。


しかしそれはこちらの勝手な都合なのでルカを説得しなくてはいけない。


とりあえず、お兄様に相談だ。


騎士たちとの会話を一通り終えたお兄様話しかける。


「お兄様、少しいいかしら?」


「ソフィア、どうかしたか?」


「見て欲しいものがあるの」


私はそう言ってお兄様の腕を掴み、呆然としているルカの元へと連れていく。


「この少年がどうかしたのか?」


「よく見てお兄様」


お兄様もすぐに気づいたのか目を見開く。


「ルカ、さっきは質問責めにしてごめんない。私はソフィア・マクレルと言います」


「はじめまして、グレイ・マクレルだ。ソフィアの兄だ」


急に自己紹介してくる私たちにルカは目を見開くが、


「あんたたちが俺を買うのか?」


と冷静に聞いてきた。


「違うわ、まずコレを外しましょう」


お兄様が騎士に頼んで鍵を持ってきてもらっていたので、ルカについている鎖を外す。


ルカは鎖が外れるのを不思議そうに見ていた。


「ルカ、あなたの顔の模様のことだけど」


私が言いかけるとルカは冷めた瞳のまま


「生まれつきだ。コレが気持ち悪いと言われて母に売られた」


言う。


「最後まで聞いてくれると嬉しいわ、ルカ」


「聞くって何を?」


「コレ見て」


私はそう言って首にある桜の模様を見せるために髪を上げる。


お兄様は右胸を見せる。


「俺の顔のと同じ」


ルカはびっくりしている。


「コレはなマクレル家の直系にだけ現れる桜の模様だ」


お兄様が説明する。


「桜の模様?」


「そうだ。お前の父親は俺たちと同じだ」



混乱しているルカ。


まあ、いきなり現れた人に父親が同じだと言われたら誰でも混乱する。


「ルカ、うちに来ませんか?」


私はルカに向かって手を差し出す。


「イヤだ」


断るルカ。


「…………」


「…………」


「…………」


全員一時停止。


「……ふられてしまいました、お兄様」


私は助けを求めるためにお兄様を見る。


「見てればわかる」


呆れ気味のお兄様。


「どうしましょう?」


「どうしようも何もあるか。連れて帰るぞ」


「誘拐になりません?」


「桜の模様を持っているだ、ルカには悪いが野放しにはできない」


「ハアッ!?イヤだって言ってんだろう」


やっと自分の置かれている状況を理解したのか、ルカは大きな声で言う。


「うるさいよ、ルカ。ソフィアの手を受け入れなかったのはお前だ。どっちにしろ行くところがないのだから、桜の模様を理由にマクレル家で引き取ると言えば誰も反対はできない」


「桜の模様とかも、父親もしらねぇよ!」


「お前の父親についてはお前の母親に聞くから問題ない」


「貴族の思い通りになんてなってたまるか!」


鎖が外れてるのをいいことにルカは走り出す。


しかしお兄様はすぐに騎士団に向かって言う。


「その子、ウチの子だから逃がさないでね」


こうしてルカの逃走は失敗に終わり、彼はマクレル伯爵家に引き取られることとなった。





この後しばらくルカとお兄様の闘いは続くこととなる。




少年→ルカ、異母弟

踊り子→ミリー、ルカの母親で父のかつての愛人の1人







結婚したくないグレイにとってルカの存在は大きい。

ルカに後を継がせようとしているため、ルカは逃げれない。



ルカとグレイは多分ひと回りぐらい年齢が離れている。

ルカはサラより年上。



桜の模様の位置

ユリウス→左の鎖骨

グレイ→右胸

ソフィア→首

ルカ→顔一面

サラ→左腕の肘の内側


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