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父は本当の愛を見つけたらしい  作者: 雷ライ
〜ソフィア〜
6/33

お兄様も婚約破棄経験者です

浮気・不倫の描写があります。


それでも大丈夫な方のみでお願いします。


責任は一切おうことはできません。

婚約破棄?みたいなことが起こってから一月経った、連休だったためサラとお兄様に会いに家に帰ってきた。


「おかえり、ソフィア」


玄関の扉を開けてもらい、家に入るとお兄様が出迎えてくれた。


「ただいま、お兄様。サラは?」


9歳になった妹の姿が見えないのが気になり問いかける。


「まだ、勉強中だよ」


「そうなの、残念」


サラにお土産買ってきたから渡したかったのに。


本当に残念そうな私を見てお兄様はクスクスと笑う。


「ソフィア、せっかくだから僕とお茶しない?」


「します」


お兄様にもちゃんとお土産を買ってきてあるのだ。





庭の四阿でお茶をすることになった。


「そういえばソフィア、婚約破棄されたんだって?」


一月前の話を出しからかってくる。


「お兄様」


「ラブレット子爵令嬢の教科書を破いたり、お茶会に呼ばなかったり、制服をズタズタにしたりとあげたらきりのない、いじめを繰り返していたそうだね」


今日はこの話をするために私をお茶に誘ったようだ。


「勘違いでしたから何にも問題ありませんわ。それにお兄様の婚約破棄騒動より全然マシです」


これ以上からかわれてなるものかと少しお兄様を睨みながら言う。


「それを言われるとなんともな」


お兄様は苦笑いする。


この時私とお兄様はきっと3年近く前の出来事を思い出していた。






次期伯爵でありながらお兄様は今だに独身だ。


しかし、お兄様にも3年前までは婚約者がちゃんといらっしゃった。


あの日お兄様の婚約者であるミレーヌ・ナディレ伯爵令嬢が突然なんの前振りもなく私たちの邸にやって来た。


「グレイ様、急に訪ねてきて申し訳ありません。ですが少しでいいので私に時間をください」


ミレーヌ様は瞳から涙を流していた。


顔を見合わせる私とお兄様。


「あぁ、大丈夫だよ。応接室に案内する飲みものを持ってきてくれ」




私は先回りして、応接室の隣の部屋に入る。



結婚していない男女を2人っきりにするわけにはいかないので、応接室とその隣の部屋は扉でつながっている。


お兄様の従者とミレーヌ様のメイドが隣の部屋に入ってきた。


2人は私を見て驚いたが、何も言わなかった。



「うっ、うっ」


ミレーヌ様の泣き声が聞こえる。


「ミレーヌ嬢、泣いてるだけでは君が邸に来た理由がわからないよ」


お兄様は優しい声で話を進めるように促す。


「もっ、もっ、申し訳ありませんグレイ様っ、私とのっ、婚約を破棄していただきたいのですっ」


一瞬にして室内の空気が冷える。


ミレーヌ様は涙声だが今確かにお兄様に婚約破棄を願いでた。


「理由を聞いても?」


お兄様はきっと困ったような笑みを浮かべているだろう。


「わったっし、他に好きな人がいるのですっ」


ミレーヌ様のまだ涙声だ。


「それで?」


ミレーヌ様はいくら好きな人がいても家同士の婚約をそう簡単に破棄してくれと頼むような令嬢ではない。


お兄様もそう思って続きを促したのだろう。


「その方と私は思い合っています」


少し落ち着いたようだ。


「はぁ」


お兄様そのやる気のない返事はダメです。


「そしてつい先日、私はその方と関係を持ちました」


「「はあっ?!!!」」


ミレーヌ様の発言に私とお兄様の従者は揃って声を上げてしまい、慌ててお互い口を手で塞ぐ。


まあ、それでなかったことにはならないのだが。


ミレーヌ様のメイドは無表情のまま立っている。


「そうですか。失礼でなければお相手を伺っても?」


お兄様も驚いただろうに、声からは一切感情が読み取れない。


ミレーヌ様のお相手を聞くまでは。


「 ユリウス様です」


うん?私とお兄様の従者は顔を見合わせる。


どこかで聞いたことある名前だ。


しかし、別段珍しいわけでもないので“あの人”ではないだろう。


お兄様も同じことを考えたのか少し相手を伺うような声で


「どこの家のユリウス様ですか?」


と聞く。


「マクレル伯爵家のユリウス様です」


ピキッ。


空気にヒビが入るってこんな感じなんだろうな。


さっきまでの冷たい空気ではなく。


もう壊れそうだ。


「お相手は私の父上ですかぁ」


チラッと覗いた部屋ではお兄様が顔を手で覆い天井見上げていた。


「はいっ」


ミレーヌ様は肯定する。


私は隣の部屋で父の節操のなさに苛立を感じていた。


なにで息子の婚約者に手出してるのあの人は。


「あのっユリウス様は悪くないんですっ!」


ミレーヌ様が謎か弁解を始めた。


悪くないわけあるか。


息子より年下の相手に手を出した挙句、その相手は息子の婚約者だ。


父が悪いだろう。


「どう言う経緯でそうなったのですか」


お兄様が敬語になってしまった。


確かに再発防止のため、経緯はしっかりと聞かなくてはいけない。


「初めてお会いしたのはグレイ様もご存知の通り、婚約内定の顔合わせのときです。グレイ様とは正反対でなんかどこか気になる方でした」


「無駄に美形で色気振りまいてますからね、父上は」


お兄様も容姿は整っているが、色男と言うよりは優男という風貌だ。


物語の王子様風の容姿で桜色の髪に新緑の瞳を持つ。


父はザ・色男と言う容姿だ。


桜色の長髪を後ろで緩く結び、新緑の瞳は少しタレ目だ。


左の鎖骨にある桜の模様もいい味を出しているらしい。


「それからしばらくして、学園を卒業して直ぐに友人の誘いで仮面舞踏会に行ったのです」


「父上もよく行きますね、派手な仮面を持って」


仮面舞踏会は身分が関係なくなるので暇を持て余した貴族には人気でここ数年で開催が増えて来ている。


一夜の恋を楽しむ父にはうってつけの場所だ。


「そこで初参加だった私に仮面舞踏会でのルールや、男性に絡まれた時の対処方法を教えて下さいました」


「場数踏んでますしね。何より絡む側の人間ですから父上は」


仮面舞踏会に行くと毎回違う香水の香りを漂わせている理由はそれか。


「それから何度か仮面舞踏会に参加させていただき、毎回見かけてると声をかけていただきました」


「狙い定めてますね」


スカーレット様やお母様が見たら殴りかかるでしょうね。


それより、エマ様は近いうちに離縁しそうですね。


エマ様もよく仮面舞踏会行かれてますし。


「そして数回前の仮面舞踏会で初めて愛の言葉をいただきました」


「貰ってばかりですね。あの人まだ一応既婚者なのですが」


「3回前の仮面舞踏会で一夜を過ごしました」


「愛の言葉から一気に飛びますね」


飛びましたね。


ていうか、ミレーヌ様仮面舞踏会行き過ぎではないでしょうか。


「前回の仮面舞踏会までは名前を知らなかったのです。名前を聞きいたときユリウス様のことは諦めなくてはいけないと思っていたのですが、もう身を心もユリウス様に捧げた私ではグレイ様の隣に立つのはおかしいと思い婚約破棄を相談しに参りました」


「そうですか」


だから、前回の仮面舞踏会から父が屋敷に帰ってくるのがお兄様のいない時間だけになったのか。


お兄様も父の不審な行動はご存知なので、顎に右手をあてながら頷く。


「私は同じマクレル家の方なら、グレイ様ではなくユリウス様と結ばれたいです。婚約を破棄、いえ解消していただけませんか?」


ミレーヌ様は両手を組み胸の高さまで持ち上げて言う。


仕草は満点で可愛らしい。


「そうですね、いくら私でも父と関係を持った婚約者は受け入れられない。それにミレーヌ嬢と父上が思い合っているのならそれを切り裂くのも嫌ですしね」


気になったことがあるのだが、ミレーヌ様は自分の家の断りなしにお兄様のもとに来たのだろうか?


家同士の婚約なのだ、解消を決めるのはミレーヌ様ではなくナディレ伯爵だ。


ミレーヌ様のメイトを見ると首を振る。


どうやらミレーヌ様の独断らしい。


「解消していただけるのですねっ!」


お兄様の返事を聞き身を乗り出すミレーヌ様。


表情は喜びで満ち溢れている。


「ええ、婚約解消を受け入れます」


「ありがとうございます!」


さっきまで泣いていたとは思えないほど元気なミレーヌ様。


「婚約を解消したいという旨は私からナディレ伯爵にお願いしましょう。ミレーヌ嬢に泥をかぶせるわけにはいきませんからね」


「っ本当にありがとうございます!」


ニコニコしているお兄様はなんか怪しい。


「そうとなれば早速支度をしましょう。ミレーヌ嬢本日はありがとうございました」


そう言ってミレーヌ嬢を立たせて、メイドと従者を呼ぶお兄様。


玄関まで見送る。


「では、さようならミレーヌ嬢」


「はいっ、グレイ様。私必ずユリウス様と幸せになってみせます」


ミレーヌ様はそう言って去って行った。




なんでそんなに父が好きなのだろう。


お兄様の方が絶対にいい男なのに。


それに、きっとミレーヌ様と父が結ばれることはない。



「お兄様、どうしてお兄様の方から婚約の解消を願いですのですか?」


私は疑問に思ったことをお兄様に問う。


「父が息子の婚約者に手を出した、という筋書きだと非はマクレル家にあるが、婚約者のいる娘を長期にわたり仮面舞踏会に行かせ尚且つ娘の不貞行為を阻止できなかったというナディレ伯爵にも非はある。だから、ミレーヌ嬢の不貞には目を瞑ってやるからマクレル家から金をせびるようなことはするなよって釘を刺そうかと思って。それにミレーヌ嬢は父と思い合っていると言っていたが、父からしたら単なる遊びだろうからね」


ニコニコしているから怒っているようには見えないが、これはきっと父とミレーヌ様に怒っている。


ミレーヌ様と父に対してはお兄様も私と同じ考えだった。


父は昔から【本当の愛】というものを探している。


しかし、ミレーヌ様と関係を持ちながらも父は一度も【本当の愛】について私たちに言ったかなった。


エマ様も【本当の愛】を見つけた相手だったのにこのザマだ。


ミレーヌ様は父にとって【本当の愛】をくれる相手ではないのだろう。













当時のことを思い出しながらお兄様とのお茶を楽しむ。


「結局ミレーヌ様は父とは別れて子爵家に嫁ぎましたしね」


「大方予想通りだったな」


「あの後ミレーヌ様とお兄様の婚約が解消されたと知った時の父の顔は傑作でしたね」


今思い出すだけでも笑えてくる。


お兄様も思い出したのか、笑っている。


「あれから、若い女性にはかなり慎重になっているらしい」


「当たり前です。ミレーヌ様も本当に男性を見る目がない方でしたね」


「子爵もかなりの女好きらしいからな」


「でも、純潔ではないミレーヌ様が嫁ぐことができたのはある意味幸運でしたよね」


「まあ、あれからミレーヌ嬢も少し壊れてきているらしいがな」


きっと夢見た幸せな結婚ではないのだろう。


しかし、お兄様を裏切ったのだから自業自得だ。




お兄様の従者→ザイツ

お兄様の婚約者→ミレーヌ・ナヴィレ伯爵令嬢

ミレーヌのメイド→マリ

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