水も滴るいい女を目指します
嫌な予感はしていた。
マリエ様だけならまだしもスチュアート様とエリック様とも関わる機会が増えた。
3人とも廊下ですれ違えば話しかけてきてくれるし、上位貴族の中でもさらに上位である3人とお近づきになりたい人は大勢いるだろう。
だからといって3人と別れた途端に上から大量の水が降ってくるとは誰も思わなかった。
しかも
「クスクス」「愛人の娘ごときが調子にのるから」
「いい気味ね」「濡れ鼠ね」「殿下だけでは飽き足らずエリック様たちにも手を出すとか最低」
妬みつき。
大勢の生徒たちがこちらを見ているが誰も助けようとしない。
そういえば父が言ってたな、妬みには開き直るしかないって。
綺麗に見える角度なら熟知している。
女の武器として使えるものは何でも磨けと母が言っていたから。
完璧に綺麗に見える角度で結んでいた髪をほどき、かきあげる。
ザワザワとしているが気にしないで彼女たちを見上げる。
「負け犬の遠吠え」
大勢の父の愛人たちに絡まれて育ったてきたのだ。
これぐらいで女は勝ち抜けないと知っている。
他人を蹴落とすのも大切かもしれないが、それ以上に自分を磨かなくてはいけない。
こんな騒ぎを自ら起こす時点でマイナスだ。
そんな女に負けはしない。
不敵に微笑みその場を立ち去る。
これも母から教わったものだ。
女として母以上に優れている人を私は知らない。
平民から伯爵夫人になったのだ。
そして私を産んでいる。
悪女と言われるのなら悪女と言われた母の仕草を真似しよう。
言動による問題は起こさないようにしよう。
私はマクレル伯爵家の役に立つのだ。
学園は4年間しっかり通ってみせる。
その日のことは学園にすぐ噂として広まったらしい。
マリエ様が私の部屋に乗り込んできた。
「サラ様!お怪我はありませんか?!」
私の顔をペタペタ触りながら確認する。
「意味不明な女どもに水をかけられて殴られたと」
うん、殴られてはいないよ。
「マリエ様、大丈夫ですよ。殴られてはいません」
それでもまだ確認したりないのか、次は私の体をペタペタする。
マリエ様の突入に驚いていたケティも復活して紅茶とお菓子を持ってきてセットしていた。
「マリエ様落ち着いて。紅茶の準備ができましたから」
「あら、ごめんなさい。紅茶いただくわ」
そう言って席に座るマリエ様はさすが侯爵令嬢だ。
姿勢、仕草なにもかも美しい。
「私も個人で調べて見たのですが、サラ様の噂を流しているのはヘルデル伯爵令嬢ね。そして、その噂を広げているのが私の敵でもあるオトレッメ子爵令嬢ね」
私との情報に間違いがないか確認するマリエ様。
「私の敵?」
マリエ様の敵にケンカ売る人がいるのだろうか。
「確認したらね、オトレッメ子爵令嬢はスチュアート様に有る事無い事を吹き込んでいたの」
フフッという声とともに黒い笑みが浮かんでいる。
「子爵令嬢ごときが私に喧嘩を売ったのよ。それにサラ様は私の友達よ、味方の敵は当たり前だけど敵でしょう」
楽しそうだ。
「これは追加情報ですが、どうやらヘルデル伯爵令嬢とオトレッメ子爵令嬢が手を組んだみたいよ」
えっ、面倒くさい。
顔に出さないように頑張って我慢する。
「だから全力で潰しましょう?」
マリエ様恐い。
マリエ様が動き出しました。
サラのメインヒーローとマクレル伯爵家の方々も参戦してほしいです。