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天使のお仕事。  作者: レイブン
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赤い流星、屋根に穴、巨躯の女は意識不明。

友達にのせられて、勢いだけで書きました。こんな長い文章を書いたのは、まったくはじめてです。

気分次第で続きを書くかもしれません。ただ、新しいドラクエが出ちゃったんで、どうなりますかね。

文章おかしいと思われる方もいるやもしれませんが、それはひとえに、私の能力不足です。

ご了承ください。

 流星が、夜空を一瞬横切って、消えた。

 「赤いほうき星は凶兆」というのが、昔から伝わる迷信である。

 あと数刻で夜が明ける、多くの人々が目覚めるにはだいぶ早すぎる時間。この不吉な事象に気づいた者はほんのわずかであった。


 新米神官――名をカルカという――もまた、御多分に洩れず夢の中にいた一人である。

 町外れの小高い丘の上。まだ完成してから七日ほどの天使宮がある。

 そこに併設された住居部分の寝室で、カルカは眠っていた。半開きの口からヨダレをたらし、へへへとだらしなく笑うように寝言だか寝息だかを吐いた、その直後である。

 何か大きな音が、カルカの鼓膜を衝き破らんと響いた。おそらくはとてもよいものであったろうカルカの夢を吹き飛ばし、おまけに心の臓まで止めてくれようというような轟音であった。

 慌てたカルカは、とりあえず上体を起こそうと左腕を動かした。しかし、ベッドの端から何もない空間に思い切りひじを突く形となり、勢いで半回転、そのままずでんとうつ伏せの上体で床に落ちた。


 痛でで。なんだ、なんだ。


 床に両手をついて四つんばいになると、まだ完全に覚めぬ頭で考える。


 なんだ、今のは。音だけじゃない、なにか、建物全体が揺れたような。


 足にまとわりついていたガーゼのケットをひっぺがし、どうにか立ち上がる。

 寝室の入り口、扉の横にある接触感知式魔力放出装置、まあ平たく言ってスイッチ、に触れると、天井にはめ込まれた、鏡のように磨かれた金属板が光を放つ。

 明るく照らし出された室内に、これといった異常はない……というのは、カルカの予想どおり。あの爆発だかなんだかわからない何かは、母屋、つまりはカルカの仕事場である天使宮のほうだろう。そう思い返すと同時に、胸のうちになにかざわざわと不安が広がりはじめた。

 この世に生を受けて十八年、人生の先達どもに言わせればまだまだひよっこのカルカだが、こういうときの嫌な予感は、外れたことがない。


 いやいや、外れていんだよ。そんなことに自信を持つな。これまでの経験則を覆そう。


そんなことを己に言い聞かせるように、天使宮の中心部に位置する祭室目指しながら、あえて軽い調子で呟いてみる。


「こんな時間に、いったい、なーにかなーっと」


 祭室は、天使宮の主要な部分を占める、神事の行われる部屋である。というか、この場所のために天使宮という建物があるといってもいい。入口は両開きの扉で、その右側の扉をゆっくりと引くと、恐る恐る中を覗いてみる。

 天窓から差し込む月光が、伝統的な紋様を刻み込んだ床石の一部を照らしていた。

 室内に一歩足を踏み入れると、サーッと砂の落ちる音、続いてカツンと、とごく小さな石ころがカルカの頭を小突く。

 見上げると、天井には大人でも楽に通れるくらいの大きな穴が開いていて、びっくりするほど澄んだ星空が見えた。


 ……まあ、そうだよな。この部屋には、天窓なんてなかったから。


 呆然と天井の穴を見つめながら、まったくもって馬鹿みたいに、あーあーあ、とひとしきり唸ったあと、さらなる被害状況を確認するために、部屋の明かりをともす。


 ひどい。


 祭室の正面奥にある祭壇が、めちゃめちゃに破壊されている。

 丁寧に磨かれた魔晶石、祝福された色とりどりの聖布、神聖文字の刻まれた台座。そういったものがすべて、瓦礫、としか呼べない姿になり果てていた。


 いったい、何がどうなってこんなことに。でっかい大砲でもぶち込まれたか。

 そうだとして、誰が、なんのために。ここは王都から遠く離れた辺境の町とは言え、王立の施設だ。逮捕されるリスクを賭してまで、こんな派手な攻撃を加えるイカレた人間なんているだろうか。

 人の仕業でないとすれば、魔物の類か。空を飛べる魔物が、なんらかの原因で墜落して――


「いっ・・・・・・つつー・・・・・・」


 カルカが何者かの声を聞くか聞かないか、と同時に、ついさっきまで祭壇であった瓦礫の山から、それを押しのけるようにして、突如、真っ赤なブーツが飛び出した。

 カルカは、この不意打ちにうお、と驚いて、二、三歩後ずさる。

 派手な装飾が施されたそのブーツは、平均的な男性であるカルカの履くものよりも、一回り大きいか。

 身構えるカルカの前で、今度は、これまた真っ赤な手腕甲を嵌めた左手が、瓦礫の別の部分を崩して生えてきた。また別の箇所から右手があらわになり、瓦礫の山を払いのける。


「ちっくしょう」


 祭壇の残骸の中から立ち上がったのは、果たして、女であった。

 埃にまみれた長い髪。顔立ちは整っている部類のようだが、頭からの流血によりはっきり判別できない。ただ、革鎧に包まれた大柄な体を見て、戦うことを生業としている者だろうとの想像はついた。

 さらによく見ると、革鎧の胸部は、おそらく豊満なのであろうその部分にあわせカーブを描いたつくりとなっている。


 お、お、女か!?


 カルカは大人の男性としてはごく平均的な身長だが、自分よりも頭一つ分も背の高い女を目の当たりにするのは初めてだった。しかし、カルカはそのことに驚いたのではない。


 おそらく彼女は、どこからかものすごい勢いで飛ばされるか放り投げられるかして、石材でできたこの建物の屋根を突き破り、丈夫な石造りの祭壇を壊すほどの勢いで衝突したのだ。それなのに――ちょっとばかし怪我はしているようだが――なぜ、平気なんだ。


 しばし呆気に取られていたカルカであるが、改めて彼女の顔が血で濡れていることに気付き、我に返る。

どんなときでも、病める者、傷ついた者を癒すのは神官の役目ではないか。なにをぼんやりと。


「あ、あの、こんな時間に何があったかは存じませんが」


 少し声が上擦ってしまったが、こんなイレギュラーな事態に緊張するなってのが土台無理である。


「ひどい傷を、負っているようですね。でも、ちょうどよかった。ここは天使宮。きっとここに着いたのも、神の思し召しでしょう。さあ、どうぞこちらへ。治癒の奇跡を頂きましょう」


 神官初任研修での接遇マニュアルを思い出しながら、カルカはゆっくりと息を整えるように言った。こんな事態まで想定された研修は受けていないが、まあ上出来だ。

 ところが、その声は届かなかったのか無視されたのか、血まみれの女は視線すらよこさないどころか、立った姿勢のまま目を閉じてしまった。


「あ、あ、あのー、大丈夫ですよ、まだなりたてですけど、ちゃんと神官ですから」


 カルカは、自分がどうも頼りなく見られるということを、自覚している。きっと、そういうことなんじゃないかと思ったのだが――


 女は、目を閉じたまま、深く息を吸い、そして吐いた。

 すると、見る見るうちに顔を覆っていた赤いものが、血の流れた時間を遡るかのように消えてゆく。

 埃まみれの髪も、毛先からパラパラと汚れが落ちていき、くすんだ灰褐色から、鮮やかで艶のある真紅に染まっていく。

 これは、今まさにカルカが行おうとしていた治癒の奇跡である。しかも、信じられない早さで治っていくではないか。

 カルカはもちろん、まだ、何もしていない。それに、カルカの施す治癒の奇跡では、とてもこんなスピードでは治せない。


 いったいなんなんだ、今夜は。驚くことばかりじゃないか!


 まだ実際に見たことはないが、神王庁直属の大神官クラスならこのレベルの奇跡を起こせると聞いたことがある、が、目の前の彼女は、そういった類の人物ではなさそうだ。いや、あるわけがない。


 今や、傷も汚れもいっさいなくなった彼女を、改めて観察する。

 髪は長い。腰の辺りまで伸びているそれは、艶めく鮮やかな紅色だ。

 美しさという観点からは少しはっきりしすぎの眉毛と、貴族がめかし込んでるときのような長い睫毛も同じ色である。

 薄めの唇は、女性的な魅力には乏しく感じられるが、それもまた鮮明に赤く、瑞々しさのある光沢を放っていた。

 燃えるような赤で統一されたパーツと対照的に、その肌はきめ細かく、白い。といっても、それは十分に血色のよさを感じられるものだ。

 今は閉じられているが、切れ長の大きな目。すっと通った鼻梁。全体的な顔のバランスは、文句なく器量よしと言えるだろう。

 しかし、何より目を引くのは、その背丈の大きさだ。カルカと同じくらいの目線、という女なら何度か見たことはあったが、完全に見上げる形になるのは初めてだ。

 肩、胸、胴、脚を防護する鎧は薄い皮革を使っているようで、出るところは出て、引き締まるべきところは引き締まる、ただ無骨に鍛えただけの身体でないことがわかる。胸などは、あからさまに戦闘行為には邪魔になりそうなほどのボリュームを持っている。

 一流の戦士なら当然にやっている、鎧のコーディネート。おそらくご自慢の髪の色とあわせているのだろう、そのカラーベースはやはり赤で、そこに黒のラインでアクセントを付けている。


 うん。これ、ちょっと派手過ぎやしないか。ただでさえ、でかくて目立つのに。

 伝承劇に出てくる英雄じゃあるまいし……いや、まてよ、英雄クラスの戦士なら、神に与えられた祝福で、恐るべき再生能力を持つ者もいるんだとか、聞いたような気もする。いやいやいや、そんな全世界クラスの有名人を、知らないなんてこと、あるだろうか。しかし、この姿に思い当たる人物がいない。


「うん、こんなもんかな」


 赤色の女戦士が目を開く。その瞳は、まばゆい紅玉のごとく、やはり赤く、美しいものだった。

 そして、ようやく、傍らで呆気に取られている若い男を一瞥する。


「あ、あの、あなたさまはさぞかし力のある方かと思われますが」


 さっきからずっと無視され続けてきたカルカは、今こそ目が合った、ような気がした。このチャンスを逃してはならない。


「不肖この神官カルカ、勉強不足であなたさまのことを存じ上げません。失礼ながら、あなたさまの名をお教えくださ、願えません、でしょ、しょうか」


 また緊張して、最後のあたりは、自分でも何を言うつもりだったのかすらわからなくなってしまった。


 女戦士は、ちょっと驚いたように目を見開く。これまさに、きょとん、という表情。

 そして、カルカの視線の先、カルカの話しかけている相手――傍目には、彼女自身で間違いないのだが――を確認すべく、上半身をねじって背後を振り返った。

 そこには、誰もいない。ただいくらかの空間と、壁があるのみ。


「あ、あの、いかがなされましたか?」


 カルカの声を聞いて、女戦士は、今一度前を向く。


 どうやらこの若い男、紛れもなく、私に話しかけているらしい。おかしい、そんなはずはないのだが。


「貴様、何者だ?」


 女戦士は腰をつかむような形で左手をわき腹にあてると、やや前傾姿勢をとり、あからさまに訝しげな表情でカルカに顔を近づけ、赤い瞳でねめつけた。


 神官だって言ってるだろ、とか、聞いてるのは俺のほうだ、とかそういう反論がすべて吹っ飛んでいってしまうような迫力である。泣きそう。


「は、はい、私、王立天使宮、南ナインシュ支部、第一神官、カルカと申します」


 カルカは、すっかり威圧感に飲まれた体から、どうにか搾り出すように声を張った。

 そしてちょっと近付き過ぎじゃないかという女戦士の顔を見ると、もうそこには、睨んだだけで獲物を殺せるのではないかというような視線の圧力は消え失せていた。その瞳は、赤いガラス玉に置き換えたように、生気のないものに代わっていて。


 そのまま、女戦士はぐらりと前に倒れた。

 その体は、思っていたよりずっと重く、支えようと手を伸ばしたカルカを容赦なく押し倒す。無様に女戦士の下敷きとなるカルカ。どうやら、女戦士は気を失ってしまったようだ。

 しかし、この女戦士、かなりの長身であることを差し引いても、とても普通の人間の重さではなかった。カルカの体には、女戦士の豊満な部分もしっかり当たっていたが、圧迫感からくる苦しさでそれどころではない。神官なので、邪な考えごと潰してくれるこの重さは、逆に有難いとも言えたが。


 それにしても、だ。いったい、なんなんだ。なんなんだ、これは。


 何一つ状況を整理できないが、非力なカルカが、まずはじめに考えるべきことは決まった。


 とりあえず、この状態からどうやって、抜け出そう?

これだけ書くのに1週間もかかってしまいました。

もし続きがあるとしても、同じくらいかそれ以上期間があいちゃうと思います。

一生懸命働いている合間で書いてますからね、仕方ないね(゜-゜)

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