グロ魚
(ここはどこだ・・・?)
辺りを見渡すと見たことのない建物の中のようだ。
なのに何故か既視感がある。矛盾。
心なしか、空気も澄んでいるように感じられる。
そして何故か先ほどまで授業を受けてるであろう人物。
隣には見慣れた顔がそこにはあった。
「おい、唯香ここはどこだ。」
「あ、やっと起きたー?蓮ってばずーっと寝てるんだもん。あれだけ起こそうとしたのにさー!って、ここはどこだってどういう意味?」
「は?言葉通りの意味だが、ここはどこだ?」
「うーん・・・蓮ってば寝惚けてる?」
「寝惚けてなんてない、俺はさっきまで保健室で寝てたはずだ。なのになんでこんなところにいる?」
「えー?保健室はここだよ?蓮ってばやっぱり寝惚けてるじゃん!おきろー!!」
「ちゃんと起きてるよ。冗談はよせよ、笑えない。」
「ちょっとせんせー!蓮おきたよー!起きたけど、変なこといってる!!」
(まてまて、本当にどうなってるんだこれは・・・)
「あら、やっと起きたの。あんた半日以上寝てたわよ。仕事が残ってたからいいものの、いい加減起きて帰ってもらわないとって困ってたのよ。あんた何回起こしても起きないから。」
「・・・・・・・・・半日・・・?ちょっとまて、今は何時だ?」
「21:45よ」
「本当に半日近く寝てたのか・・・ところで先生、さっきから気になってるんだがここはどこだ?
唯香に聞いてもまともに答えてくれないんだ。」
「どこって?保健室じゃない。」
「は・・・?ちょっとまってくれ二人ともなんで嘘をつくんだ?」
さっきまで珍しく静かだった唯香が口をはさむ。
「ねー!せんせー!蓮ってばおかしいでしょ?寝すぎて頭おかしくなっちゃったのかな?」
先生は急に神妙な顔つきになった。
「・・・・・・・・・!もしかしてあんた・・・いや・・・まさか・・・」
「え・・・?せんせーどうしたの?そんな真剣な顔しちゃって。」
「いや、なんでもないわ、気のせいだと思うから。それより早く帰ってちょうだい。あんたたちが帰らないと私も帰れないじゃない。」
「だってさー!蓮早くかえるよー!一応蓮ママには連絡しといたから大丈夫だと思うけど心配してるとおもうから!ねーえーはーやーくー!」
蓮は困惑しつつも帰宅することにした
(本当に俺が変になっちまったのか・・・?)
保健室?を出て外に向かおうとするも、やはり全て見たことない景色が広がっていた。
(なんだここは・・・やはり見たことない場所だ・・・でもなんだこの違和感は・・・?)
「唯香、本当にここはどこなんだ?」
「え?まーだ寝惚けてるの!?おきろー!こらー!おきろー!」
蓮の両頬をつねりながら唯香は言った。
「やめろって、どう見ても起きてるだろ。俺んちはどっちだ?」
「何いってるの!すぐそこじゃん!」
「いや・・・俺んちはこんな場所にはないはずだが・・・」
辺り一面に広がる鬱蒼とした森、どこからともなく聞こえる鳥のさえずり、そして聞こえる川のせせらぎ、澄んだ空気。
その全てが初めてのはずなのに、どこか懐かしい。
蓮は神妙な面持ちで帰路を急ぐ。
「ついたついたー!れんーついたよー!」
唯香はそう言うが、それはどう見ても蓮の家とは似ても似つかない家だった。
辺り周辺には木が生い茂っていて、蓮の過ごした家とは程遠い家だった。
「ただいまー!バスにゃん~」
「唯にゃんおかえりにゃんー」
ッ!?!?!?!?
どう見てもソレは人間ではなかった。
(コスプレか・・・?にしてはクオリティが高すぎるだろ・・・)
「ぁ・・・。ただ・・・いま・・・。」
(色々とつっこみどころが多すぎてどこから突っ込めばいいんだ?本当に俺は頭がおかしくなっちまったのか・・・?ちょっと頭を整理しよう・・・落ち着け・・・落ち着くんだ俺・・・。)
「ふぅ・・・ちょっとまて。まず始めに、ここは俺の家なんだよな?なんでお前がただいまなんだ?それと猫娘、さっさとそのコスプレをやめてくれ。」
唯香と謎の猫娘は蓮を怪訝な顔をして見つめる。
「なにいってるのー?蓮と私は家族じゃない!それとそこのバスにゃんは猫娘なんかじゃないよー!失礼だなー!」
「あらにゃ~蓮ってばどうしたにゃ?」
「いやいやいやいや、おかしいおかしい!!二人?揃って俺をだますのはよしてくれ!」
「変な蓮にゃ~、とりあえずもう夜も遅いし、二人ともしばらく何にも食べてないとおもうからご飯でも食べておちつくにゃ~。」
「ご飯・・・?あぁ・・・そういえばしばらく食べてなかったな・・・でもそれよりも・・・」
「バスにゃ~ん、もうお腹ぺこぺこだよぉ~」
蓮はごたごたがあったせいですっかり空腹なのを失念していたが、猫娘に言われてから腹がなりっぱなしになってしまった。
(とりあえずご飯を頂いて落ち着かせてからもう一度色々聞いてみよう・・・。)
「はいにゃ~、今日はいいのが獲れたにゃ~ごちそうにゃ~」
そこには大きな体躯を持った一つ目で体が緑色の魚がいた。しかも鼻を突き刺すような刺激臭。到底食えそうにはない。
「っ・・・!!おい。本当にこれ食べるのか・・・?」
こんなお世辞にもおいしそうには見えない魚の煮つけ?をみて唯香は目を輝かせて今にもかぶりつきそうな様子だ。
「何言ってるの!!食べるにきまってるじゃない!こんないい魚めったにとれないんだよー!?蓮が食欲なくて食べられないなら私が代わりに全部食べてあげるよ!」
「そうなのか・・・?まあ他にも料理はあるみたいだし、お前に任せるよそのグロ魚は・・・」
唯香はグロ魚を見て首を振る。
「グロざかな~?ううん、全然グロくないよ!かわいいじゃん!しかもすごいおいしいよ!」
「グロくなんてないにゃ~、とってもおいしいから一口だけでも食べるといいにゃ~」
「う・・・そこまで言うなら食べてみるよ・・・」
猫娘は全ての食事をテーブルに運び終わったらしく。
「それじゃー今日も自然の恵みに感謝して!いただきますにゃ~!」
「いただきまーす!」
「いただき・・・ます・・・」