Dream or Real?
──これは、決して語られることのなかった、語ることのできなかった物語である。
「れーん!そろそろ起きなさーい!今日も学校でしょー!」
階下からいつものように母親のモーニングコールが聞こえる。
「んー!すぐいく」
ベッドから降りいつものように伸びをする。
(なんだか今日も寝た気がしないな・・・ちゃんと寝てるんだけどなあ)
「まあ、準備しなきゃな。」
いつも通りの支度、いつも通りの朝食。
そしていつも通りの登校だ。
蓮はこのいつも通りの日常に退屈はしていたが満足していた。
なぜなら蓮は以前、脳に軽い病を患って入院していた時期があり、学校に通うことのできない時期があった。
それからというものの、この当たり前におくれている日常の大切さを知っているのだ。
ドンッ!
そして蓮を待ち構えていたかのように背中を軽く押す人物がいた。
「れーんっ!おーはよ!」
「うぉ・・・! ってなんだお前かよ、朝から元気だなあ・・・。」
「何だお前かよってー!ちゃんと名前で呼べー!あと見るからにがっかりそうにするのをやめろー!」
「わーったよ、唯香。でも別にお前だからってわけじゃない、最近ちょっと朝が苦手でな・・・」
「ふーん?ちゃんと夜は寝ないとだめだよー!またゲームでもやってるんでしょー!」
「そんなんじゃねえよ、ちゃんと寝てるんだよ本当に。昨日だって9時間も寝たんだぞ。」
「9じかーん!?って私よりちゃんと寝てるじゃない!なんか嘘くさーい!」
「嘘じゃねえよ、最近変なんだよ。いつも結構寝てるのに寝起きが全くさっぱりしてない、疲れがまったくとれないどころか寝る前より疲れてるんだ。」
唯香が顔寄せて蓮の顔を覗く。
「大丈夫?なんか目の下にくままでできてるじゃない。それって変だよー。一度お医者さんに見てもらったらー?」
「そうだな、今日はちょっと難しいけど、明日あたり時間あるから病院いってみるよ。睡眠障害かなんかかなぁ。」
などと雑談をしつつも蓮たちは学校につくが、校門の前にいつも通り野球部の顧問の坂東が仁王立ちしているではないか。
「おう!お前ら今日も仲良く登校か!って・・・いつも時間ギリギリじゃねえか、もっと早くこいよ!唯香のほうは相変わらず元気そうだが・・・蓮のほうは対照的だな」
蓮はいつも多少高圧的な態度の坂東が苦手だった。
「ばんちゃんおはよー!蓮にもっと早く起きるようにきつーくいっておくね!・・・あ!そうだ私が起こしに行けばいいのかな?」
「あ、そうだじゃねえよ、絶対くるんじゃねーぞ。つーかお前は俺を待たないでいいから一人でいけ。」
「ひどーい!またお前ってゆったー!」
「怒るのはそこかよ・・・」
「おうお前ら!仲良くするのはいいけど、大概にしろなー!」
などと下らない会話をしつつもクラスに着いた。
そしてクラスに着くや否や。
「お、お二人さん今日も仲がいいねー付き合っちゃえばー?」
などと戯ける学友を当然のようにスルーする蓮と対照的な唯香は
「蓮がその気なら私は構わないよ!」
と反応するものだから俺を除いたクラス中が盛り上がってしまった。
「お前もそういうふざけたこと言うからこいつらがちょっかい出してくるんだろーが。」
「別にふざけてないよーだ!」
などとふざけているのを尻目に蓮は自分の席についた。
「ねえ、おまえらってやっぱりデキてるの?w」
などと蓮の前の席のクラスメイトが話かけてくる。
「んなわけねーだろ・・・唯の腐れ縁だよ。唯香とは幼稚園のときから一緒だからな。それだけ。」
「ふーん、でもさ、瀬野ってこういっちゃなんだけどうちのがっこー入るほど頭よくないじゃん?っていうかぶっちゃけ馬鹿だしw やっぱりお前追いかけてきたんじゃねーの?」
「んなわけねーだろ、俺もあいつもこの学校は徒歩でこれる位置だから志望しただけだし。」
「へー、瀬野はそういってたの?」
「いや、別に聞いてないけど多分そうだろ。」
「ふ~ん・・・。」
ガラガラガラ・・・
「みなさんおはようございまーす!今日もいい天気ねー!」
と、いいところに先生がクラスにきたのでクラスメイトは不満そうにしつつも前を向いて先生に対して挨拶をする。
「うーっす!まこちゃん元気ー?」
「せんせーおはよー!」
「ちゃーす」
「おはようございます!」
「じゃあ今日はね、抜き打ちテストをしちゃおうかしらー!」
「えー!!??」
と、クラス一同驚く者や落胆する者と反応は様々だ。中には「よしきました!」とでも云うように歓喜する者もいる。
「じゃあ配るわねー!問題は国語!制限時間は5分よー!始め!っていったらスタートよ。それまで問題見ちゃだめだからねー!配られたらプリントを裏返しのままにすること!」
生徒はプリントを配り終え、開始の時間を待つ。
「それじゃあ!始め!」
先生のはじめの合図と共に、不意に蓮の頭に痛みが走る。
(・・・・て・・・・・・き・・・・・ん・・・・て・・・・・れ・・・て・・・・)
頭の中心部分からくるような鈍い痛みと訴えかけるような謎の声。聞き取れそうで聞き取れない。しかし何故か聞き覚えのある声。
ほどなくし、痛みも謎の声も消えるも蓮は違和感を覚えた。
時間はどれ程経ったのだろうか。
「しゅうりょー!後ろから前の人に答案用紙を渡してねー!もうペンは置くこと!ペン持ってたらカンニングとみなすからねー!」
「うわー全然できなかったー。」
「それなー」
などとクラスが多少の盛り上がりを見せる中、蓮は茫然としていた。
「おう、蓮はどうだった?・・・ってなんか体調悪そうだな、大丈夫か?保健室でもいくか?ちょうど俺保健委員だし、あれだったら連れて行くぞ?」
「・・・すまん。ちょっと頼んでいいか?」
「いいってことよー!んじゃ・・・。せんせー!蓮が調子悪いって!保険室連れてっていいですか?」
「んー?あら、どうしちゃったの?熱でもあるのかしら?まあいいわ、頼めるかしら?」
「全然おっけーっす!じゃあ連れて行きますねー!」
クラスを出て1階にある保険室にまで向かう蓮達。
「わりぃな。迷惑かけちまって。」
「いいってことよー。それにほら、俺も授業ちょっとサボれるし?w」
「ありがとよ。」
そして保健室に到着した。
「あら。いらっしゃい。どうしたのかしら?」
「あー。なんか熱でもあるのか調子悪そうでさ、ほら、顔色もすげー悪いし。」
「そうなの?」
と蓮に改めて聞く先生。
「いや、その。熱はないと・・・思う。なんか急に眩暈がしちゃって・・・。」
「そうなの。貧血か何かかしら。とりあえずほら、そこに座ってちょうだい。熱、測るわよ。」
言われた通りに体温を測り、温度を見せるように体温計を渡す。
「なるほど、熱はないわね。貧血かしらねえ。眩暈は結構あるの?」
「時々・・・おこりますね。以前ちょっとした病気にかかってからたまにある程度ですが。」
「ふむ・・・あなた目の下にくまもあるし、寝不足からくる貧血症状かな?どうする?授業出れる?それともちょっとここで寝ていく?」
「すみません・・・ちょっとこちらで寝かせてもらってもいいでしょうか・・・」
「わかったわ。んじゃー保険委員の子、名前は何かしら?授業の先生に伝えといてちょうだい。」
「・・・あ、俺っすか。佐々木っていいます。了解っす。」
「佐々木君ね。じゃあお願いしてもいいかしら?」
「うーっす、任せてくださいっす。」
ほどなくして、意識が朦朧としてくる中で再度あの頭痛がやってきた。
(・・・・ろ・・・・き・・・・・きて・・・・・・・おきて・・・)
蓮は意識が覚醒し、あたりを見渡す。
すると、蓮は先ほどまでいた空間とは似ても似つかない空間にいることに気付いた。