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近未来ショートストーリー  作者: 横小路櫻
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任務遂行

やっぱりやめようか…。そう思った刹那に、この職業の規則を思い出した。


一度引き受けた依頼は何があっても断れない。断れば様々な形の不利益を被る…。

ハローワークで会った男性は不利益の内容については具体的に言わなかったが、他の殺し屋が遂行した事件の犯人にされるという噂があることをこの任務を引き受けてから知った。


殺らないと消される…。


これは日本にとって、いや世界人類の未来にとって必要なことなんだ。


そう自分に言い聞かすと、僕は男性の背後から静かに近づき…

握りしめたサバイバルナイフの刃先を男性に向け、目をつぶったまま体当たりした。


「ヴッ」


男性は鈍いうめき声と共にゆっくりとこっちを振り向いた。


「君は誰だ」


僕はその瞬間、自分のしたことが恐ろしくなった。

しかし、もう後には引けない。

「ごめんなさいごめんなさい」と何度もつぶやきながら、男性の背中にもう一度ナイフを突き刺した。


男性は再び鈍いうめき声を上げると、僕の顔を睨み付けながらゆっくり崩れ落ちた。

地面が瞬く間に赤く染まる。


恐らく出血多量による失血死は免れないだろう。

僕は、痙攣し始めた男性に深々と頭を下げてから、逃げるように現場から走り去った。


1キロほど夢中で走った後、震える手で任務完了のメールを送った。


ほどなく遠くの方でサイレンが聞こえた。

それから約1時間後に、任務完了を確認した旨のメールが入った。

まだ心臓がバクバクしている…。

人を殺めるってこんな感じか…。

僕は両手を開き、その手の平を見ながらしばらく動けなかった。

しかし、徐々に手の震えが治まり、気持ちが落ち着いていく感覚を覚えていた。


その時またメールが入った。

今度は、今回の任務の報酬額が記された明細だった。

その額を見て、額の多さに驚くと同時に、不思議な達成感を感じていた。


そして、ネットやテレビの夜のニュースでこの事件が報じられたのを観たとき、自分が世の中を動かしてるのでは…、という優越感に包まれていた。

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