表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛を捧げて  作者: 花恋
7/17

7、遠い距離を

「こんな手紙で呼び出して何のつもりだ?」

ここは、放課後の家庭科室

陸は沙織に呼び出されてこの場にいる。

「手紙に書いてるとうりだよ。

謝りたくて

あと、色々と話したい事があったから…」

陸に上目遣いで悲しそうな顔を向けてくる。

何だかこっちが悪い事をしている気分になってくる。

「わかった…

少しだけだからな」

冷たく言ってもオッケーをしただけで沙織はパッと笑顔になる。

「よかった。

これ、どうぞ。

紅茶とクッキーだよ。

これ用意するために家庭科室にしたんだ。

陸、私が淹れた紅茶好きだったでしょ!」

付き合っていた時と何一つ変わらない態度。

あまり、優しくしない方がいいのか…

でも言ってしまったものは仕方ないから、まだ温かい紅茶に口をつける。少し、紅茶を口にした瞬間段々身体が熱くなってくる。

「何が何でも手にいれるから」


「何よ!

あんたたち」

家庭科室についた花恋は教室の前にいる、何人かの男たちに声をかける。

「花恋ちゃん

中で沙織ちゃんが待ってるよ

どうぞ、入って」

殴りかかってくるかと思ったが、男たちは笑顔で告げてくる。

ガラガラッ


恐る恐るあけた扉の中の光景は想像を超えた光景だった…


「な、何してるの?」

教室の中では陸が沙織を床に押し倒していた。

「あん…

邪魔者…

出てってよ!

今、良いとこなんだから」

制服の前がはだけ、下着がみえた恰好で、叫んでいる。

「花恋…」

陸は見られたくないとこを見られたって感じだ。

ここで、去ればきっと陸は沙織を抱き彼女の地位を物にする。

今、陸は沙織の事を求めてた…

…心から?

きっとちがう

陸は今、出ていけって眼差しじゃなかった

だったら私が出来る事は…


花恋は震える足に無理矢理力をこめ、一歩ずつ近づいていく。

ギリギリのとこまで近づき


ダンッ


沙織の顔のすぐ横に踵をふりおとす。

「陸はあんたのことなんて求めてないんだよ!

さっさと去れよ!」

花恋の迫力に圧倒された亜弓は制服を押さえながら、急いで去って行った。

「これで、終わると思ってたら大間違いだから!」


「…大丈夫?」

沙織が去ってから何も話さない陸

「出てってくれ!」

「はぁ?

何で?」

返事をする前に花恋は床に押し倒された。

制服を脱がしていく陸。

近くに感じる彼の吐息は信じられないほど、熱くて理性がないみたい…

「ちょ…待ってよ

ん…はなし…きい…て」

陸は全く聴こえないみたいに愛撫をしていく。

「や…もう……ダメ…り…く」

「…花恋」

2人は花恋の意識が飛ぶまで何度も何度も抱きあった


「わりぃ…」

まだ、目覚めない花恋を陸は座り壁にもたれた、身体で抱きしめていた。

沙織が盛った薬のせいで、花恋の身体の事を考えず欲望のまま身体を貪った…

俺最低だな…

「ん…ここ…どこ?」

ようやく目覚めた花恋は少し寝ぼけてるみたいだ…

「家庭科室だよ」

陸の冷静な声に花恋も全てを思い出す。

「あっ…」

「ごめんな

無理矢理ヤっちまって

俺さ、普段は彼女以外とは絶対ヤらねぇんだけど

お前は彼女になんてなりたくないだろ?」

陸との繋がりに後悔はない

今までの中で誰よりも相性がよかったみたいだし

でも、彼女は…また別

「うん、ならないよ。

ねぇ、私とヤった事後悔してる?」

彼女にはならないって言ったくせに、こんな事言ってバッカみたい。

「あぁ…」

低く冷たい声で告げる陸

「当たり前だろ!

女を無理矢理犯して後悔しないわけねぇだろ

マジわりぃ…

惚れた女の身体みて止めれなかったんだよ」

陸の以外な直球に花恋は急いで顔をふせる。

「ば、バッカじゃないの?

薬のせいに決まってるのに」

花恋はぎこちない返事を返した自分に少し戸惑っていた…

バレてないよね

どうしようもなく動揺してる事

「バレたか?

でも、マジだよ

惚れた女ってとこに間違いはないから!」

一度おさまった照れが再び花恋を襲う

「な、何言ってんの…」

お願い

バレないで…

「あれ〜

花恋ちゃん照れてるの?」

わざと花恋の顔を覗きながらきいてくる陸のせいで、真っ赤になる。

「う、うるさい

もう大丈夫だから先に帰っていいよ」

照れ隠しで、つい冷たくなる…

「帰るならお前もいっしょだ。

今日は送るから

身体つらいだろ?」

陸が心から心配してくれてるのがわかる。

素直になったほうがいいよね?

「うん…

じゃあ帰ろっか」

「あぁ…」


帰り道でも陸の優しさは続いた。

鞄を持ってくれた所からはじまり、体調を気遣う言葉を何度もかけてくれる。

「ありがと…送ってくれて」

俯きながらも素直に告げる花恋に陸は笑顔になる。

「これぐらい、いいんだよ」

優しい陸…

私はまだ本気の恋とかわかんない。

だから、この優しさが特別なのかも、罪滅ぼしなのかも、誰にでもなのかも、さっぱりわからない…

「あのさ、朝、迎えにくるから」

「わかった、待ってるね」

まるで、彼氏みたい…

1番必要のない人だと思ってたけど、案外こういうのもいいな。


何だってそうだ

幸せを知れば元の知らない世界には戻れない。


「おっす」

「おはよう」

迎えにきた陸と当たり前のように声を掛け合う。

「なぁ、俺はお前にとってどういう存在?

まだ他人か?」

他愛ない会話から突如とんだ質問に花恋は言葉につまる。

こんな質問慣れっこじゃん。

今更何動揺してんだ…

心の中で自分に言い聞かせる。

「友達でしょ?」

「まぁいっか

今はな!」

どんな会話をしていても、2人だけなら問題ない。

でも、学校に近づくとそういう訳には、いかなくなってくる。


「キャー陸くんだ」

学校が近づくにつれ、生徒が増えてくる。

「えっ横にいるの花恋ちゃんだ。

2人付き合いはじめたのかな?」

「えっ会長と付き合ってるんじゃないの?」

そんな会話が次々に飛び交う。

訂正しようとした

その時、

「誤解だ!」

「誤解だよ」

2つの声が否定する。

「会長!

亜弓も!」

「おはよう、北原くん」

「おはよ、花恋」

2人の一言で花恋の噂は陸との話だけになる。

「おはよう」

「私達は仕事があるから、また後でね」

まさか…私のためだけに?

ありがと…

傷つけたのに、優しくしてくれて


「俺らは只のお友達なんだよ!

なっ?」

「う、うん」

陸が皆にきこえるぐらい大きな声で叫び、それに答える。

「おっ陸がおとせない女ついに誕生か?」

はやしたてる男子、喜ぶ男子、喜ぶ女子、人それぞれだ。

「まだ、諦めてねぇよ!

絶対おとすから覚悟しとけよ」

花恋の肩に手を掛けながら耳元で叫ばれる。

「調子に乗るな!」

手をはらわれた陸はなぜか笑顔で、まわりの皆もニコニコしている。

これが陸の世界なんだ。

いつでも、予防線を引く私とちがい誰とでも仲良く接する陸。

築かないうちに花恋は陸の世界に吸い込まれていた。


教室にはいっても、いつも以上に皆が軽く話かけてくる。

迷惑だと思ってたコミュニケーションも今はこんなに嬉しく感じる。

「花恋、今日はクラスの子といっしょに出掛けない?」

変わった花恋の態度にきずき亜弓はきいてくれる。

「たまにはいいかもね」

花恋の答えに教室内が盛り上がる。


みんなで、カラオケに向かって歩きだす。

「花恋ちゃんと遊びに行けるなんて、嬉しいなぁ」

まわりにいるクラスメイトが次々に似たような事を言ってくれる。

「私も嬉しいよ」

そう言った瞬間

肩に誰かの手を掛けられる。

「俺も嬉しいな」

この声…

まさか…

「何であなたがここに居るのよ!」

掛けられた手は陸のもので、その手は未だに離れない。

「みんなに誘われたんだ。」

軽く手をはらってやる。

でも、陸は何度も何度も手を掛けてくる。

その様子をみていた、クラスメイトは笑いをこらえているみたいだ。

恥ずかしい…

もう、気分が悪い!!

カラオケについても陸は花恋にベッタリだった。

席の隣はもちろん、デュエットしようとかそんな事ばっかり言ってる。

1人でマイクを持って立ち上がった、陸をみて、花恋はやっと諦めたかと思ったが…

曲をいれずに、マイクを持っている。

「陸、何してんだ?

歌うなら曲をいれろよ!」

きちんと陸の友達らしき、男の子にツッコミをいれられている。

「うるせー

俺は言う事があるんだよ!

花恋、俺と付き合ってくれ!」

予想もしない出来事に呆然としている花恋

ニヤニヤしているクラスメイト達

花恋以外に驚きをみせている者はいない。

まさかみんな知ってて…


「イヤ…です」

掠れた声でつぶやいた4文字はかすかに聞こえる程度だろう…

きまずくなる空気の中、陸だけは何一つ変わらない。

「うわっ

また、フラれちゃった。」

「一度告ってんのかよ(笑)」

みんなガッカリって感じだった。


カラオケの帰り道

フッた私へのみんなの態度は誰ひとり変わらない。

「陸におとせない女がいるんだな」

「何いってんだ!

女王様の勝利って事だろ」

何気ないクラスメイトの会話

私はこれでよかったのかなぁ…

陸への返事は自分の正直な気持ちだったかなぁ…

「なぁ花恋、ちょっとは考えてくれないか?

俺と付き合う事」

1人考えているといつの間にか隣に陸がいた。

ずらしてもずらしても視線をあわされる。

逃がさない

そう言われてるように

「ちょっと時間をちょうだい

ちゃんと考えるから

ね?」

「マジで!

やった

俺、いつまでも待つから」

花恋はこの時、解らなかった。

期待させる事を言えばよけ陸を苦しめてしまう事を…


どうしよう…

次の日になっても答えは出ない。誰に相談したらいいんだろう

普通に考えれば亜弓だよね

でも、なぜか今亜弓に相談したい気分じゃない

頼りになる人と言えば〜

あの人だよね。


「陸にね、付き合ってって言われたんだけどどうしよう…

付き合おうかな〜」

バサバサッ


と、ファイルが床に落ちる音がする。

「あぁ…そうか

俺は忙しいからこの部屋からでていってくれないか?」

「ひど〜い。

真剣に悩んでるのに!

篤哉ってば〜」

篤哉は黙々と落としたファイルを拾うと、ため息を吐きながらメガネを机に置いた。

「俺はいずれは付き合うと思ってたよ。

でも、こんなに早いとは思わなかった。

彼氏とか花恋が最も必要としなかった存在だろ?」

篤哉はいつも直球だった。

「それは、そうだけど…」

花恋が悩んだ顔をみせると篤哉はまたため息を吐いた。

そんなにウザいかな?

「俺はな、お前には幸せになってほしい。

けどな、その相手が山川である必要はないと思うぞ。」

花恋は何も言えなかった。

また、残酷な事をしてる。

篤哉を傷つけてる。

でも、今の私には篤哉しかいない。

「そろそろ、例の時期だろ。

頭をよく冷やして考えろ!

最後に答えを出すのはお前だ。」

例の時期…

私には忘れる事の出来ない日だったハズなのに篤哉に言われるまで思い出さないなんて…

「そうだね、ありがとう。

ゆっくり考えるよ!

またね、センパイ」


花恋が去っていったドアからすぐに人が入ってくる。

「何であんな言い方…

もっと優しく言ってあげてもいいじゃないですか?」

「あいつには、あれぐらいがあってるんだよ」

篤哉が何気なく口にした言葉が亜弓から強さを奪う。

「私、花恋からの信頼を失っちゃったんですね…

会長は私よりずっと花恋を知ってる。」

弱々しく告げた亜弓に向けて、またもやため息をこぼす。

「女ってズルいよな」

何の事なんて考える余裕はなかった。

なぜなら…

篤哉の腕の中だったから

「会長、離して下さい!」

「大丈夫だって。

花恋と西川は親友なんだから、すぐ戻る。」

「ありがとうございます。

ねぇ会長、私の事も名前で読んでくれませんか?」

「まぁじきな」

傷の舐めあい?

ちがいますよ。

いっしょにいて笑いあえる関係。

ここには、もうすぐ春がくるみたいです。


篤哉に相談した花恋は1人屋上で寝転がっていた。

あれから、また1年がたったんだ…

花恋はそっと胸ポケットから一枚の写真を取り出す。

純也…


花恋は写真を眺め、軽く写真にうつった男の子にキスをした。

写真にうつされた男の子は茶色っぽい黒髪で眩しいくらいの笑顔で写っている。

そして、隣に写った花恋も負けないくらいの眩しい笑顔で写っている。

懐かしい…

私にとって忘れる事の出来ないハズだった思い出。

過去の思いに浸っていた花恋はドアが開く音で現実の世界へと引き戻される。

「おっ

いたいた。

昼飯食おうぜ!」

「ごめん、陸。

また今度ね。

今は1人にして」

花恋から醸し出されるいつもとちがう雰囲気に陸は気付いた。

「そっか…

邪魔したな。」

去って行こうとした陸に感情なく告げる。

「やっぱり考えられないから

あんたと付き合うとか」

「は?」

いきなりで状況を理解出来ていないみたいな陸にはっきりと繰り返す。

「考えられない。

ありえない」

「じゃ、じゃあ何であんな事言うんだよ!

俺の事遊んで楽しかったか?

お前はやっぱり何も変わってねぇよ。

はじめて会ったあの日から。

もういいよ!

じゃあな」

投げるように一方的に去っていってしまった。

これでいいんだ…

後悔なんてしない…

そう考えたばかりの目から一筋の涙が流れた


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ