4、夢のような優しさを
〜昼休み〜
ピンポンパンポーン
「北原花恋は至急生徒会室にくるように」
昼休みに音楽よりもはやく篤哉の放送がはいる。
「花恋…私もついて行こうか?」
遠慮しがちに心配してくれているのがわかる。
「ありがと、でも大丈夫だよ
亜弓は私が帰ってくるの待っててよ。」
不安な顔ひとつしない花恋に亜弓は頷く。
教室を出てまっすぐに生徒会室に向かう。
生徒会室にはすでに篤哉だけがいた。
「わかってるとは思うが何ひとつ嘘なく話すように」
篤哉の言葉どうりに花恋は話しはじめた。
2人の関係も…
聖がした事も…
全て
「これで全てです。」
篤哉は何やら考え事をしているような顔をしている。
「これ、全てが学校にバレたらめんどくさくないか?」
当たり前の事をきいて…
「そりゃそうでしょ。
できるもんなら、ごまかしたいよ
でも、そんなの無理じゃん」
私の言葉を予想してたのか人の悪い笑みを浮かべている。
「俺にいい案がある。
まぁそれには条件があるけどな」
何やら嫌な予感がするが、楽な事なら条件をのんで、この問題を隠しとうしたい。
聖のためにも…
「条件って何?
今日、抱かせろとか?」
「それは、1つ目で2つ目の方が大事だ。
実は演劇部の主役の子が怪我をしてな。
学祭で代役をしてやってほしい。」
また、めんどくさい
でも、まだましなほうか…
「劇は何をするですか?」
「白雪姫だ」
ベタな劇
しかも、キスシーンあるじゃん
「相手は?」
「柊修斗だ」
柊修斗はこの学園1の有名な声フェチなセンパイだ。
背が高く、イケメンな人だがかなりの声フェチで女子からは少し距離を置かれている。
でも、私から言えば柊センパイほど良い声の持ち主なんていないと思う…
甘くささやくようなあの声で是非とも囁かれてみたいな
「わかった。
それで、手を打つ。
けど1つ目の条件は今日は聖の家に手紙を届けるつもりだから明日でもいいか?」
「俺もついて行く。
今日、抱きてぇから。」
珍しいな、こんなに欲しがってるなんて…
篤哉はかなりの女嫌いで、それを克服するために私のセフレとなった。
半年ぐらい前に出会ったが出会った当初は手が当たる事さえ、恐れていた。
それが、今は
「抱きたい」
だって
変わりすぎだろ!
この勢いで彼女つくればいいのに…
その方が篤哉のためになるのに
もちろん、口には出して言わけどね…
「じゃあ、後は俺に任せとけ。
放課後、用事が終わりしだい迎えに行く」
生徒会長と生徒に戻るために花恋はペコッとお辞儀をして生徒会室を後にした。
その後、陸のおかげで、この問題は演劇部のセット付近で遊んでいて怪我をした。
という事で表面上はおさまった。
心の問題のみを残して…
〜放課後〜
「花恋待ったか?」
「ううん、全然
行こ」
2人は聖の家を目指して歩きはじめた。
聖の家についても、あえて、呼ばずに手紙だけをおいて行く。
「いいのか?」
「いいの、聖は今1人で居たいと思うから」
花恋は気づかなかったがこの時、聖はドアの向こう側で手紙を読んでいた。
〜聖へ〜
私、最近思うんだ。
私がしてきた事は聖のためになってたのかなって
私はその答えが知りたい。
だから、はやく学校に来てね。
〜花恋〜
花恋…
「ねぇどこに向かってるの?」
「俺んち…」
篤哉の女嫌いは割りとひどくて、今まで家に行った事はなかった。
「でも、家族がいるんじゃ…」
「いないよ
両親は共働き、妹はクラブで夜まで帰って来ないから」
篤哉が言ったとうり、家には誰もいなかった。
家中に2人が階段を登る音だけが響いている。
なんでだろう…
おかしいぐらい、この家は静かに感じる。
「どうぞ」
通された部屋はいかにも篤哉っぽい部屋だった。
シンプルとしか言いようがない…
優しく通されたのにボーッとしてたら、いきなり
ドンッ
ベッドに倒される。
「キャッ」
いつの間にか膝の間に篤哉の足がはいりこみ、絡ませられている。
「…抱くよ」
耳元で囁かれたたった3文字で身体の力が抜ける。
一度おちるとどんどん堕ちてゆく…
「あっん……あつ…や
もう…ダメ」
どうしようもなく彼の熱に溺れてる
好きでもないのに…
この溺れようは止まるところを知らない…
でも、止める気もない。
もう快楽の知らない身体には戻れない…
「わりぃ、何か乱暴で…」
篤哉のセックスは聖とちがい飢えたセックス
聖の優しさ、篤哉の強引さ、私はどちらもほしい…
「私こそごめんね。
心配かけたよね…」
「あぁ、これからはやめろよ
あんな危ないまね」
いつもの優しい篤哉
私にそんな優しさをうける権利はあるのだろうか?
自分以外にも何人もセフレがいる、私を篤哉は汚らわしいと思わないんだろうか?
「うん、これからは気をつけるね」
気持ちをこめて、告げると篤哉は笑顔で頭をポンポンッとたたいてくれた。
不器用な愛情、そんな感じだろうか…
暗くなるまで話をして、篤哉は家まで送ってくれた。
誰かに見られたら困るから
って断ったけど
篤哉はきいてくれなかった。
次の日も昨日と同じように陸の家に向かった。
「おはよっ」
「うっす…」
どこか元気がなさそうに見える
「どうかした?」
「いや、何もねぇよ
あぁ、そうだった。
明日から来なくていいから!」
急に投げるかけるように言われた言葉に花恋は驚きを隠せなかった。
「な、な、何で?」
「怪我が治ったからだよ。
だから、お前が俺を迎えにくる必要がなくなったって訳だ。」
何だか冷たい
もう私には興味が無くなったのかなぁ…
学校までの道、2人の間に会話はなかった…
学校につき、靴箱をあける。
そこには、きちんと整頓された後がある。
溢れてくるラブレターはきちんとわけられていた。
相変わらず嫌がらせがかかれた紙
その他のラブレター
そして、靴の上に丁寧にのせられた手紙
〜花恋へ〜
山川くんの件は本当にごめんなさい。
でも、これだけは信じてほしい。
花恋への感謝も好きな気持ちも本当だと言うことを
今の僕に君の側にいる資格はない
だから、しばらく休学して祖父母の元に行きます。
心を入れ換えてくるから待っててね。
〜聖〜
読み終えた瞬間、まわりの目を気にせずに目から涙をながす。
この日から放課後は劇の練習に追われた。
「はじめまして、北原花恋です」
差し出された手を取りながら笑顔を向ける。
「はじめまして、柊修斗です。
仲良くしてね。
これ、メアドね」
かなりのタラしか…
声はいいけどタラシは嫌いだな。
でも、まぁセンパイだし受け取っとくか…
劇の練習は意外にハードで他の事を考える時間が短くなった。
でも、時々出来る時間にはやっぱり聖や陸の事を考えてしまう。
あの気まずい朝から1週間、陸とは会っていない…
私から会いに行くのは論外だし、かと行って待ってても彼は会いに来ない…
「花恋ちゃーん
何考えてるの?
練習はじまるよ」
気がつくとすぐ横に修斗がいた。
「あ、すいません
すぐ、行きます」
柊センパイと演じる白雪姫はどこか味気なくて暇で仕方なかった。
いくら声がよくても、中身は最悪だしね…
そんな感じでボーッとしてるといつの間にか練習は終わっていた。
失敗してないかなと不安に思ったがみんな笑顔を向けてくれているので、失敗はしてないみたいだ。
「お疲れさま、外もくらいしいっしょに帰らない?」
ちょっとした隙に柊センパイが声をかけてくる。
どうしよう…
迂闊に断ったら失礼になっちゃうし
悩んで困り果てた花恋の前に1人の影が立ちはだかる。
「柊、北原さんは俺が送るよ」
「あ、会長…」
高2の私とちがい篤哉は言いやすいもんね。
「そうか…だったら仕方ないな」
諦め悪そうに修斗は去っていく。
「篤哉、ありがとね」
「気にすんな。
それと、あいつには気をつけろよ。
あいつ、かなりのタラシだから。
気をつけなきゃ喰われるぞ」
半分笑いながら告げる篤哉
どこまでホントなんだか…
いよいよ、学祭2日前
クラスの出し物はクラスメイトの要望でメイド喫茶をやる事に
衣装は嫌だけど、準備が少ないからと言う理由でオッケーした。
「花恋、大丈夫?」
「へ、何が?」
亜弓が花恋におでこをくっつけてくる。
「顔色わるいよ…」
「大丈夫だよ
次、移動教室だよね?
行こ!」
荷物を持ち教室を出た瞬間
フラッ
ヤバイ
そう思った時にはもう意識がなかった。
「花恋、花恋!」
誰かが私の身体を揺すってる。
「どけ!」
誰かが私を持ち上げる。
私は、この時、夢をみていた。
誰かと幸せに微笑んでる私
でも、顔がわからない。
目が覚めた場所は保健室だった。
目を開けた瞬間亜弓の心配そうな顔がみえる。
「よかった
風邪らしいから、今日はもう帰って良いって」
軽く身体を起き上がらせる。
「でも、練習…」
すると、亜弓はムッとした顔をした。
「当日、風邪ひいたら大変でしょ!
今日は帰って休む!
いいね?」
妙に迫力のある顔で迫られる。
「はい…」
亜弓の優しさを断り1人トボトボ歩き出す。
校舎から出ようとしたら、前から陸がやってくる。
言わなきゃ…
「ひ、久しぶりだね。
きょ、今日は助けてくれてありがとう
亜弓にきいたんだ。」
少しぎこちないが一生懸命笑顔をつくってみる。
しかし、笑顔の先にあった陸の瞳はどこまでもつめたかった。
「俺に話しかけるな」
一言だけ言って去って行こうとした陸に怒りを露にする。
「ちょっと待ちなさいよ!
言いたい事があるならハッキリいいなさい……よ」
最後まで言い切り花恋は体力の全てを出しきり倒れた。
地面につく、ギリギリで陸は花恋をキャッチしておんぶをして歩き出す。
「もう少し…全て解決するまで待っててくれ」
そんな声がした気がした。
目が覚めて母親から陸が送ってくれた事を教えてもらった。
どうして?
興味がないならほってかえればいいじゃん…
これは、誰にでもある優しさ?
それとも、特別な優しさ?
花恋は答えのない問題をひたすら考え続けた…