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愛を捧げて  作者: 花恋
13/17

12、過去の秘密を

昼休みになると花恋はすぐに屋上へ向かう。

亜弓には陸と会う事を告げて1人で階段を登る。

たどり着いた屋上にまだ陸は居なかった。

いつも見上げる空が青く澄んだように感じすごく気分が良くなる。

なのに陸はやって来ない。

何か用事でも出来たのかな?

と、思っていると誰かが階段を登ってくる。


ガチャ


登ってきたのは陸ではなく亜弓で息を切らしている。

「どうしたの?

そんなに急いで…」

亜弓はハーハーと息を吐きながらしんどそうに話し始める。

「大変なの。

会長と聖くんが…」

意外な組み合わせに驚く

でも2人が関係してるなら知る必要がありそうだ。

「篤哉と聖がどうかした?」

すると亜弓は説明するのがめんどくさいのか花恋の手を引っ張り屋上の隅っこに連れて行く。

「見て!」

亜弓に指示された方を見ると何故か運動場に人だかりが出来ている。

人だかりの真ん中に居るのは…篤哉と聖と


「陸!」


陸の姿を確認した花恋は光景の意味もわからずに走り出す。

後から追ってくる亜弓は必死に状況の説明をしてくれる。


「昼休みになった瞬間、会長と聖くんが陸くんを呼び出して運動場に連れていったの…

私が思うにたぶん知ってたんだと思う。

花恋が今日陸くんと会う事…」


もし亜弓の予想が正しければ朝の手紙を聖に読まれたって所だろう

じゃあこの騒ぎは私のせい?

聖はともかく、篤哉が私の為に何かをしてる光景を見るたびに亜弓に申し訳なくなる。

そんな花恋の気持ちを察したのか亜弓はキッパリ告げる。


「私はもう花恋に何か言ったりしないよ!

会長が花恋を好きなら私はそれを見守る。」

亜弓の目にある覚悟

篤哉きっと貴方が亜弓を強くしたんだよ


そんな事をしてる間に運動場にたどり着く。

人だかりは増えているみたいだ。

生徒達は花恋の顔を見ると道を開けてくれる。

みんな騒ぎの訳を知っているんだろうか?

あと少しでたどり着く所で両腕を捕まれる。

掴んできたのは女の子達で無理矢理ほどけない。

「2人は花恋ちゃんの為を思ってやってるんだよ。

見守ってあげてよ。」

女の子達の一言で3人を見つめると1つ気がついた事がある。

怪我してるのは陸だけ。

いくら2対1でも一発ぐらいは殴れるはずなのに、聖も篤哉も怪我してない…


女の子達に止められたぐらいで止まってたら陸がボロボロになっちゃう…


「2人共止めて!」


小さめに叫んだつもりだったけど、意外に大きな声で回りの人だかりまで静かになる。


「花恋…」


3人は一斉に花恋を見て聖と篤哉は殴るのを止める。

陸は…複雑な顔を向けてくる。

腕をつかんでる女の子達の顔を見ると目が合った瞬間手を離してくれた。


「何でこんな事してるの?」

一度同じ事をしている聖は気まずそうに顔を背ける。

そんな聖に気づいた篤哉が人だかりを気にせずに話し出す。


「俺らの気持ちは知ってるだろ?」


篤哉の問いに軽くうなずくと続きを話し始める。


「山川からの手紙を見付けた俺たちはこいつを許せなかった。

散々花恋を傷つけといて…

今更…」


嫉妬みたいに悔しそうな顔をする篤哉に花恋は何とも複雑な気持ちだった…

私の為にしてくれた事

そう考えると花恋は篤哉を責める事ができなかった。


「聖…篤哉…

ありがとう

でも良いの

私は陸の事だったら何度だって涙をながす。」


聖と篤哉は花恋の熱い告白をきき、入る場所の無さを実感した。

自分じゃダメだと

そう思うしかなかった

2人は倒れている陸を立たせて去っていく。


去っていく時、聖は気まずそうに

「ごめん」と

言っていた。


でも篤哉は花恋に近づき頭を撫でながら

「嫌な事があれば、いつでも俺の所へ来いよ。」って言った。


篤哉は優しすぎるよ

フッた女にここまで優しくしないでよ

篤哉の優しさが心にしみ思わず涙を流す。

すると、フラフラと近づいてきた陸が複雑な顔をして呟く。

「俺以外の男を思って泣くなよ。」

陸の小さな嫉妬で笑顔になった花恋は肩に手をそえさせて、陸を保健室まで連れていった。


目立っていた全員が去っていった運動場では

「やっぱり陸と花恋ちゃんってお似合いだよね」

なんて言う人が沢山いた。

そんな人々を見て亜弓は幸せそうに微笑んでいた。


「キズ痛む?」

連れていった保健室はもぬけの殻で誰も居なかった。

そのため花恋が陸の手当てをする。

「いてぇけどすぐ治るし。」

花恋は陸の身体にあるキズを見て心が傷んでいた。

「ごめんね

また私のせいで。」

花恋が悲しそうな顔で言ったので、陸はため息をつく。


「お前…にぶっ」


篤哉や聖の気持ちはわかってるし

花恋には何の事かさっぱりわからなかった。

そんな花恋を見て陸は全てを白状する。


「2人相手だったら俺だって弱くないし殴れるし。

でも花恋を傷つけた自覚があったから殴らなかった。」


照れくさそうに言う陸に花恋は手に力をいれる。

そして、拳を陸に向かって振りかざす。

顔に直撃する手前で拳を止める。


「バカ…

傷つけたってわかってるなら謝りに来てくれればよかったのに。」

プルプル震えながら告げる花恋に陸は真剣な顔をする。

「お前の為じゃなくて

自分の罪滅ぼしの為に殴られたんだよ。」

花恋は自分の為じゃないとハッキリ言われムスッと膨れる。

ホントに殴ってやろうか

とも、思った。

でも相手は怪我人と自分に言い聞かせて我慢する。


「でも2人が殴りに行ったのは私のせいだし

ごめんね。」

謝ってばかりの花恋に陸は一瞬つまんなそうな顔をする。

でもすぐに意地悪な顔になり花恋は嫌な予感がした。


「悪いと思ってるならキスしてよ」

陸の全てを忘れそうな甘い甘い囁き

花恋は落とされる前に跳ね返す


「は?」


けど陸は甘い囁きを止めない。


「してよ。

前にしてくれたバタフライキスで良いからさ」

そう言って目を閉じ睫毛付近を指で指す。

ここって言ってる様に

花恋は仕方なく陸との距離を縮めていく。

そして2人睫毛が合わさる


パチッ


合わさった瞬間陸は目を開け、視線を合わせたまま瞬きをする。

ただ睫毛が重なってるだけなのに妙に官能的で

珍しく花恋は耐えれなくなり、一歩下がる。


「ん?」


離れていく花恋に陸は不思議そうな顔をする。


「なんかエロいよ」


恥ずかしそうな顔をする花恋に陸は満足そうに笑う。


「涙は俺だけの物じゃないけど、照れた顔は俺だけの物だ。」


初めは何がいいたいか全くわからなかったが、後で思い出す。

私が篤哉の前で泣いた時の嫉妬のお返しか

そう思うと恥ずかしい気持ちより、陸の子供っぽい一面が可愛く思えて笑顔になる。


また、平和な日常が戻ってきた。

一緒に登校して一緒に昼休みを過ごして、一緒に帰る

でも陸は未だに沙織に何を言われたかを話してくれない。

きっと何か私が知らない秘密があるはずなんだけど。


「陸、今日こそ話してね。」


最近、放課後亜弓は生徒会で忙しくて毎日陸と2人で帰ってる。

亜弓と帰れないのは寂しいけど陸が居てくれるから幸せだ。

「別に何もないって。

ただお前を傷つけたくないから離れただけ。」

陸は平然と話しているけど花恋とは一切目を合わせない。

そんな陸に花恋は段々不安が増してくる。

花恋は陸の制服のネクタイを掴み顔を下げさせて無理矢理目を会わさせる。

しかし…

「やめろって」

手をはらわれ無理矢理目を外してくる。

さすがの花恋もここまで拒絶されると我慢の限界だった。


「もう知らない。

話してくれるまでエッチもキスもハグもしない!

というより会わない。」

よくわからない言い方をして花恋は去っていった。


「エッチとか付き合ってからしてないし…」

そこかよ!

ってツッコミたくなる陸の独り言は虚しく風の中に消えて行く。

なんで上手くいかないんだろう?

やっぱり話すべきか…

でも嫌われたくない


陸は、この日から毎日花恋の事を考えていた。

もう1週間になるか

一緒に過ごさなくなって

会いたいってメールすると

話しは?

って帰ってくる


その繰り返し

で、結局会えずに1週間経過って訳だ。


「陸最近花恋ちゃんと居るとこみないな」

友達やクラスメイトはお見通しみたいで

ひどいとこをズカズカついてくる。


「うるせー」

棒読みに言う陸の態度に笑いながら

「早く仲直りしろよ」

って応援していった。


そんな事誰よりも陸がわかってた

エッチはともかく、キスもハグも出来ないし会えないのもつらい。

花恋に会いたい

陸の心はそれで埋めつくされていく。


陸は腹をくくり、花恋にメールする。


〜今日一緒に帰らないか?〜


こまめに携帯をチェックしてるのか、すぐに返信が返ってくる。


〜話は?〜


相変わらず御決まりの返信


〜するよ

気になる事全部話すよ〜


そう送るとやっとオッケーのメールが返ってくる。

やっと会える

そう思うと放課後までの時間があっという間に過ぎていく。


久しぶりに花恋の教室に行くのは、なんか緊張する。


「花恋居る?」


陸を見るとすぐに花恋を呼んでくれる。


「陸、会いたかった。」


花恋はいきなり抱きついてきて、辺りの視線が一気に集まる。

陸はさすがに恥ずかしくなり花恋の手をひき、教室をでる。

「どこで話する?」

う〜んと言いながら花恋が悩み出す。

「俺んち来る?」

ありきたりだったかなと言い終わってから思い始める。

でも花恋は笑顔で頷いてくれる。


2人手を繋いで学園を出ようとした

その時

「陸、探したぞ。」


10人ぐらいの男たちのリーダー的な男が声をかけてくる。

「人違いだ。」

そう言って陸は彼らを、まこうとする。

花恋は意味がわからず何も話さなかった。

するといきなりリーダーに腕を捕まれる。

「待てよ。

女の事が大事なら顔貸せよ。

山川陸!」

人違いじゃなくて陸の事を探してるんだ…


チッ

陸は軽く舌打ちをして、花恋にごめんと告げる。

集団につれていかれたのは、古い倉庫みたいなとこだった。

この人達ヤンキーだよね?

じゃあ陸も…


「陸!

女、殴られたくなかったら殴られろよ。」

いつの間にか陸との手は外され、後ろ手に男に捕まれている。


「陸!

私の事は気にしなくていいから!」

叫んだ声を聞いた陸は笑顔を向ける。


「そんな事出来るわけねぇだろ。

花恋、巻き込んでわりぃ

でも絶対怪我させないから。」


男らしいって誰もが言うと思う。

けど、そんなのいらない。

守られるだけの存在でありたくない。


「誰もそんな事言ってないし。

さっさとボコって終わらせろって言ってんじゃん。」

さすがにヤンキーどもも長さにイライラしてくる。


「おいうるせぇんだよ。」


そう言って手を掴む手に力を入れられる。

すると花恋は我慢が出来なくなってくる。

足で後ろ向きに蹴り をいれ、手が緩んだ瞬間男を投げ飛ばす。

そして、陸と背中合わせになる。

「背中頼むね。」

「おぅ

まかせとけ。」


10人って案外あっという間で

次々と倒れていく。

まるで身体が一体になったみたいだった。

やっぱり相性いいよね。

私達


10人の男達を倒し終え、倉庫を出る。

「これで、もう来ないか…

にしても花恋強いな。」

男相手でも堂々と倒しにかかる勇ましさ

女でも惚れそうな女

それが花恋だ

「そう?

何か色々とやってたんだよね。

空手とか柔道とか

あと剣道」

さらっと告げる花恋に陸は少し脅えてみせる。

「俺より強いんじゃねぇの?」

すると花恋はクスクス笑いながら軽くパンチしてくる。

それを陸はあっさり受け止める。

「どうだろうね。

ねぇ陸が隠してたのって…」

さっきの男達の事を言おうとしたら陸に口元を押さえられ、続きを言うのを止められた。


「その続きはうちで話すよ。」


いつの間にか陸の家の前に着いていた。

陸に

「どうぞ」と言われて

入っていく。


陸の部屋には中学時代の写真が飾ってあった。

今よりももっと悪そうでピアスを付けた男の子が沢山写っている。


そんな男の子達の中で軽く踏みつけられてる男の子が目に入る。

「あれ、この人って?」

「そう…さっきの奴だよ。


そいつはさ、俺の中学時代のライバルなんだ。

他校の奴なんだけど、いつも勝負を挑んできてた。」


何となく男達が来た段階で予想がついてた花恋は余り驚かない。

普段どうりの顔で写真を眺めてる。


「これ陸?」


花恋が指差したのはリーダー的な感じで真ん中に居る男

それに、うんと頷く。

「そっか…

ケンカしてたの?」

当たり前の事を聞くしかなかった。

何て言えばいいのか花恋にもわからない。


「ヤンキーみたいな感じだ。

この写真を沙織が持ってて脅されてた。」

正直に全て白状すると幻滅すると思ってたが、花恋は笑っている。

しかも嬉しそうに


「バカ

私は陸のどんな過去を知っても愛し続けるよ。」

嘘なんかじゃなくて、心から誓える。

陸は陸だもん


「でも、俺色んな女抱きまくってたんだぜ?」

さすがのこれには花恋も笑顔を崩す。

でも幻滅って言うより怒ってる?

軽く膨れて、拳を握って


「私は抱かないくせに。」

ぷいっと向こうをむく。


「怒るとこ、そこ?」

花恋は未だに違う方向を見ながら頷く。


「だって…

他の男に抱かれた私が言う事じゃないもん。」

すねた様に言う花恋を後ろから抱き締める。

いきなりでビクッとなるが花恋は身体を陸に預けていた。


「花恋は花恋だよ。」

後ろに居る陸の顔は見えないけど、きっと優しい笑顔を向けてくれている気がする。

ベルトみたいに私の腰あたりに交差している陸の手に自分の手を重ねる。


「ねぇ…

抱いてよ。」

下を向きながら照れて言ってみる。

けど陸の答えは意外だった。


「や〜だ。」


拒絶された花恋は陸の腕をとき、隅っこに座り込む。

三角座りで膝に頭を埋めていて、

言ってる事は大人なのに子供みたいだ。

隅っこに移動してから一言も話さない花恋に近より、顎に手を添え、顔を上げさせる。

真っ赤で今にも泣きそうな顔

イケないとわかっていても、何だかいじめたくなる顔


「俺はさ花恋を大切にしたいんだよ。」

優しく告げてやると、少し顔が綻ぶ。

でも、それも一瞬ですぐに元の顔に戻る。


「でも私は抱いてほしいんだもん。

陸の特別だって肌で感じたい。」


今までは特に意味なんて考えなかった。

でも今ならわかるエッチはキスの延長線上にある。

最大限の愛情表現だって。


「ハァ…

花恋は反則だよね。

折角我慢してんのに。」

脈ありだと感じたのか花恋が勢いよく抱きついてくる。


「我慢してなんて言ってないけど?」


陸は花恋を抱き上げ、ベッドに押し倒す。

後は本能のまま貪られていく。

少しの無茶なら構わない。

だから、今だけは貴方の愛に溺れさせて…


陸と繋がった事が花恋は嬉しくて仕方なかった。

体力的には久しぶりだから辛かった。

でも繋がった瞬間涙が出そうなぐらい嬉しかった

愛されてるって実感した

まだ身体から熱が引かない

今触れあえてるのは、腕枕の部分と肩あたりだけ

でも、どうしようもなく身体が熱い


「花恋、大丈夫か?

理性なくて悪い…」


何度も何度も抱いた事にバツが悪そうな顔をしている。

そんな、陸の唇に軽くキスをする。


チュッ


「謝らないで。

今、私すっごく幸せだよ。」


「あぁ俺もだよ」


この日、夜までお話をして、また愛し合って朝までずっと一緒にいた。

きっと身体も心も距離が縮まったよね?

それが、私には何よりも幸せだった。




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