11、最大限の愛を2
1つ前の続きです。
別々ですいません。
「俺はあの日陸と両思いになってしまった花恋と会った。
そして、今までの気持ちが溢れだして花恋を手にいれたくなった。
だから花恋が嫌がるのも気にせずに抱いた。」
祐樹の直球な言い方に少し担任は恥ずかしそうな顔をする。
でもすぐにキッといつもの強気な顔で次は花恋に話すように指示する。
「私はあの日たしかに、祐樹に抱かれました。
けど、同意の上で抱かれたんです。
決してレイプなんかじゃないです。」
一生懸命うったえる2人の話を聞いた担任はウンウン頷きながら悩んでいるみたいだ。
しばらく会議室に静寂がおとずれ、何か気まずい気分になってくる。
後少しの我慢だと花恋は自分に言い聞かせる。
「北原さん
レイプをされていないと言うなら何故悲しそうな顔をするの?」
やっと終わった静寂
なのに悲しそうな顔をする訳がない。
花恋はそう言おうとすると、いきなり祐樹に抱きしめられる。
「ちょっっ
祐樹
やめて」
祐樹は担任の事なんて気にせずに花恋を抱きじめ続け耳元で囁く。
「もう我慢なんてしなくていい。
花恋は幸せになるんだ。
俺は全てを話す。
花恋は頷くだけでいいよ」
何も聞こえない担任はわざとらしく、ちがう方向を向いている。
それを良いことに花恋も抱きしめられたまま小声で話す。
「ダメだよ。
そんな事しちゃ祐樹が
あれは祐樹は悪くないんだし。
私は大丈夫だから。
ね?」
笑顔を祐樹に向ける花恋に祐樹は胸が痛くなる。
こんなにも小さな女の子に守られる自分は情けない。
せめて、かっこよく失恋したい。
「花恋、俺はお前に守られて満足なほど、弱くない!
俺はお前に幸せになってほしいんだよ。
たとえ俺がフラレる事になっても、退学になってもお前が幸せな道を歩ければそれでいい。」
1人ぼっちだと思っていた私の回りにはいつの間にか私を守ってくれる逞しい人が何人も居ました。
私はこんなに一途な男の子達を犠牲にしてまで幸せになって良い存在なのだろうか?
「花恋?
泣いてるのか?」
不意に言われた言葉で頬に手を伸ばす。
あてた指と頬の間に少しずつ涙がたまっていく。
「へ?
あ…
何もないよ、大丈夫」
そう言ってるのに祐樹は抱き締める手に力を込める。
「ん…くるし」
あくまで祐樹は慰めのためにしていたので、すぐに手が離れる。
「ちょっと
北原さん大丈夫?
泣いてるじゃない?」
心配そうに担任が近づいてくる。
そんな担任に必死に涙がバレないように隠すがそんな努力は無駄に終わる。
「花恋は…俺にされた事を思い出して泣いてるんですよ。
これでもうわかったっしょ?」
まるで自分がかなりの悪人みたいな言い方。
そのうえ少し不気味な笑みを浮かべていた。
「…そうみたいね。
北原さん思い出させてしまってごめんなさいね。
もう行ってくれて大丈夫よ。
体調が悪かったら今日は早退しても良いから。」
気遣う担任
否定しなきゃ…でも涙が止まらない。
自分の道を捨ててまで私の幸せを望んでくれる祐樹への感謝の気持ちで…
祐樹の目はもう覚悟を決めた目をしている。
今更庇ったらきっと祐樹の邪魔をする事になる。
だったら…
「たしかに私は祐樹に抱かれました。
けどそれは祐樹が沙織に命令された事です。
祐樹は彼女に従っただけ。
だから少しでも軽い罰を与えて下さい。
お願いします。」
自分がレイプされたにも関わらず、人の心配をする花恋に担任は半分呆れていた。
祐樹は下を向いている。
何の表情も読み取れない。
「わかったわ
ちゃんと校長先生に話しておきます。
今日は、ひとまずこれで終わり。」
担任との話を終え会議室を出た花恋と祐樹の前に、沢山の生徒が立ちはだかる。
生徒達は次々に花恋を守り祐樹を責めていく。
そんな生徒を退け花恋は祐樹の前に立つ。
「彼を責めないで。
彼は私のためにしてくれた事なの。」
責める声は一斉に静かになるが、皆は疑問だらけって感じだ。
でもここで沙織の名前を出せば彼女の居場所は無くなる。
「彼は誰よりも私の幸せを願ってくれてるの。
今まで誰かと恋愛をする事を拒んでた恋愛を始めてから私は彼に頼ってばかりだった。
何かあったら泣いて彼に相談してた。
だから彼は私を心配してくれてたの。」
話をわざと少しずらして話したが生徒達はそれで十分納得したみたいだ。
よかったと思い花恋が軽く息を吐いたとき
ギュッ
「ちがうよ。
俺はいつもお前に支えられてた。
お前が彼氏を作るなんて考えても居なかった。
ホントわりぃ
俺さ自分のした事ちゃんと償うから友達で居てくれ。」
回りの生徒達は彼のあまりに一途な思いに優しい目を向けてくれる。
辺りが祐樹のおかげで和やかな雰囲気になる。
「当たり前でしょ。
これからも私の涙を拭ってもらわなきゃ。」
皆が笑いに包まれる。
ホントは暗い雰囲気になるハズだったのに。
そうだよね。
たとえ、悲しい事でも皆で分けあえば笑顔に変えられる。
花恋は気づかなかった。
溢れる生徒達に紛れて花恋に悲しげな視線を向けていた陸に…
次の日祐樹に判決が下された。
1ヶ月の停学
それが学校の出した答えだった。
軽いのか重いのかは誰にもわからない。
けど1ヶ月という時間はきっと祐樹にとって大事な時間となる事だろう
なんて、真面目に言ったけど花恋の頭の中は1つの事でいっぱいだった。
朝登校して整理された靴箱にあった一通の手紙
それは陸からで昼休みに会おうって誘いだった。
久しぶりにあった連絡で花恋は気分が舞い上がっていた。
あんな複雑になると思わなかった。