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愛を捧げて  作者: 花恋
11/17

11、最大限の愛を

私達はすれ違いが多すぎる。

愛し合いたい

なのに…


私は陸に全てを話した。

けど、私は陸の事を何も知らない

知っている事は…他の女の子と同じぐらい

貴方に近づきたい

そう思うのはワガママですか?


地味な嫌がらせは段々おさまってくる。

けど、心の傷は深さが増すばかりだ。

自分がどれだけ彼を愛していたかを実感する。

モテるのに不器用な所も

以外に一途な所も

考えすぎる所も

全部が…大好き


沙織をフッてからしばらく経ったが、未だに何も仕掛けてこない。

それとも、花恋に何か?

いや、それはないか…

離れたフリをしても、毎日見守ってるし…

俺に何かあるのは構わない

けど、花恋だけは…

花恋会いたい話したい抱きしめたい


屋上で1人昼食を食べていると自分の孤独さを実感する。

晴れた空がなぜか曇りに感じる。

そんな花恋の心を乱すように誰かがヅカヅカ階段を上がってくる。


ガチャ


「何で先に行くの?」

上がってきた勢いは良いのに声は弱気だ。

「1人で食べたい気分だったから」

冷たく返したけど、心がとても痛む。

「何で1人で全部溜め込むのよ!」

珍しく亜弓が怒鳴る。

あと一息だ…

あと一言告げれば亜弓はきっと去る…

「何で話さなきゃいけないの?」


パンッ


一瞬状況を理解出来なかった。

涙を堪えながら手を押さえてる亜弓

そして痛む己の頬

「何でそんな事言うの?

私達友達でしょ?

話してよ

全部

巻き込んでよ

それが友達でしょ?」

涙を流しながら亜弓は一生懸命うったえる。

そんな亜弓を花恋は強く抱き締める。

「ごめんね…

私、わかってなかった。

大切だから巻き込んじゃダメだと思ってた。」

すると亜弓はキッと怖い顔する。

しかし、その顔はすぐに優しくなる。

「バカ…

水くさいよ。」

曇った心が一気に晴れた気がした。

「あのね、騙されたの…」

祐樹の名前だけをふせて、沙織の事を全て話す。

すると心が軽くなる。

「そっか…

花恋、陸くんの事はどうするの?」

陸…

名前を聞いただけで会いたくなる愛しきひと

「好きだよ

でも彼は篤哉と幸せになれって言ったの。」

正直に話すのは少しためらったが亜弓のためにも全てを隠さず話す。

篤哉という単語に亜弓は少し反応する。

それでも必死に冷静を保ち私の話に耳を傾けてくれる。

もう少しで篤哉と結ばれていたのに私が邪魔しちゃってる。

「花恋間違ってるよ。

そこに陸くんの幸せはないよ。」

陸の幸せ…?


「陸は私の幸せを望んでくれてる」

「それがわかるなら、どうして陸くんの気持ちがわからないの?

好きだから幸せになってほしいんだよ」

好き…?

今でも陸は私を好いてくれてる?


だったら私は貴方の全てを知りたい

私とつりあわないなんて言う理由が知りたい


「亜弓、ありがと。

私もう一度話してみる。」


「花恋…

私の分も幸せになってね」

亜弓は花恋に聞こえない程度の小さな声でつぶやいた。


花恋は陸が学校内にいる事を確認するために、靴箱に行く。

パカッと開けた靴箱に入っていたのは…


陸の靴と一通のラブレター?だった。


勝手に開けちゃまずいよね

そう思い閉じようとした時ふと相手の名前が目にはいる。

嫌な風が吹き付ける。

沙織

独特の丸字で書かれた女の子らしいとしか言いようがない手紙


〜陸へ〜

2人で話したい事があります。

体育倉庫で待ってます。

〜沙織〜


体育倉庫に呼び出すっておかしいでしょ?

でも陸宛だし危なくはないよね?


辺りに警戒しながら体育倉庫への道のりを歩いておく。


手紙は念のため陸の靴箱に戻しておいた。


体育倉庫の中には誰もいない。

ただ不気味な雰囲気だけを漂わせている。

その時、


「花恋ちゃん居るよね?」


沙織の声がする。

どういう事?

今、陸じゃなくて花恋って言ったよね?

まさか…罠?


「そろそろ動き出すと思ってたから先に仕掛けといたんだ。

やっぱり私って賢い」


少しずつ近づいてくる亜弓の様子がおかしい。

今にも倒れそうなフラフラした足取り。


花恋は身の危険を感じ、一歩ずつ後ろに下がっていく。

そして、もう一歩下がろうとした時


「キャッ」


ドスン


薄暗い体育倉庫の中にあるマットに躓き尻餅をつく。


「あんたさえ居なかったら

あんたさえ居なかったら」

僅かな光が沙織の手の中の物に集まり怪しげな光を放つ。

尻餅をついた時足を怪我した花恋に逃げ場はない。

沙織は段々花恋に近づいてくる。


「こ、来ないで!」


そんな無駄な願いは叶う事なく沙織との距離は狭まってくる。

やっ


終わりだとキュッと目に力をこめた。


「花恋!」


私を呼ぶ声に目を開けるとそこに沙織の姿はなく、1人の男の子が目にはいる。


「陸…」

ふいに愛しきひとの名前を呼び花恋は意識を失った。


目を閉じた花恋を大切そうに持ち上げる。

しかし、男の子の目に笑顔ではなく悲しみの顔だった…


夢を見ていた

陸にお姫さま抱っこをしてもらい幸せそうに笑う私

陸も笑ってる

アハハ

これが現実なら良いのに…


パチッ

「ん……ここは?」


「目、覚ました?」


私を覗き込む男の子

陸?

……ちがう


そうだ。

彼が助けてくれたんだ。

「聖?」

するとやっと男の子は笑顔になる。

「そうだよ。

久しぶりだね」


陸じゃなかった

陸以外は誰だって同じ

たとえ聖であっても…


「沙織は?」

ずっと気になってた。

目を開けた時にすでに居なかった

逃げたとか?

「会長が話を聞いてるよ」


2人とも私の為に来てくれたんだ

なんて幸せな出来事

ここに彼の姿を望むのは勝手なワガママ


それでも諦めきれない花恋は辺りをキョロキョロ見渡す。

「彼なら居ないよ。

あの場には来なかった。」

花恋の考えを素早く察知した聖が答える。

相変わらず陸の事を話す聖の声は冷たい。


「そっか…

聖、助けてくれてありがと。

それと、お帰りなさい。」

ずっと言おうと思ってた言葉を聖の顔をみて告げる。

今だけは聖の事を考える

そう心に言い聞かせた。

保健室ないに漂う2人だけの空気。

廊下側のドアと運動場側のドア、どちらにも空気に圧倒され入れない男子がいた。


2人はそれぞれ考えていた。

自分と花恋の事

そして、花恋と他の男2人の事

そして、写真に写っていた祐樹の事

全員が花恋の幸せを願う。

どうして男の子は不器用で女の子は残酷なのだろう?

全てを綺麗に終わらす方法は沢山ある。

でもきっと、そんな余裕がなくなる。


それこそが愛であり恋なんだろう…



タイミングを考えて廊下側のドアの前に居た男が入ってくる。


「篤哉、迷惑かけてごめんね

それとありがと」

素直にお礼を言う花恋に篤哉は恥ずかしそうな顔をする。

「あの女の事だが。

先生方がご両親と話をして休学届をだして精神科に通うらしい。」

沙織は篤哉にも先生にも、ただ

「あの女さえ居なかったら」と

ばかり言い続け会話を出来る様子はなかったらしい。

「私が彼女を狂わせてしまったんだよね?」

自分を責め下を向き続ける花恋に篤哉は冷静に向き合う。

「それはちがう。

誰もが幸せになる事なんて出来ないんだ。

だから自分を責めるな。

俺はお前の行動は正しいと思う。

自信を持て」

1つしか変わらないのに篤哉やいくつも大人にみえる。

篤哉は私をいつも正しき道へ導いてくれる。

けど簡単には開きなおれない。

自分の行動が沙織の人生を壊してしまったのだから

「自信なんて持てないよ。

私のせいで

私なんて…」

篤哉は優しくもあり、厳しくもある。

きっと抱きしめないのは篤哉なりの優しさだろう。

心を見失わない為の優しさ


「だったら自分を好きになる事から始めるといいさ。

今は無理でもいずれ好きになれるさ。」

篤哉の暖かさが心に染みてくる。

ありがとう

何度唱えても足りない言葉を花恋はひたすら心の内で唱え続けた。


3人が保健室内に居る時運動場側のドアに居た男は会話を聞いていた。

俺は最愛の女を傷つけた。

1番守りたかった女を結果的には傷つけた。

バカみたいだ…

こんな事ならまっすぐにぶつかればよかった。

まっすぐに守れば今ごろ傷ついていなかったかもしれない。

俺はいつも、かもの話をしてる。

情けないな…



沙織が休学届を出した事が瞬く間に広がり学校中がその噂で持ちきりだ。

そんな中で花恋の話題が出てくる。

花恋と沙織が取り合ったとか…

相変わらず祐樹との噂もまだ消えていない。

当の本人は全く気にしていなかったが1人花恋以上に気にしている男がいた。


まだ写真の相手が祐樹だと気付いた者はいない。

だから自分が気まずくなる事はない。

でも祐樹にだって良心はある。

女の背中に庇われてこのままで良いわけがない。


「花恋…

良いの?

このままで…」

亜弓が言いたい事は花恋だって十分にわかっていた。

けど花恋には守りたい男が沢山いる。

それが今となっては花恋の邪魔をする。

「仕方ないよ。

今はどうする事も出来ないんだから」

花恋の悲しみを受け取り亜弓も悲しそうな顔をする。

互いの気持ちを理解している2人はしばらくあえて何も話さなかった。


教室に戻った花恋に皆が近づいてくる。

花恋はまた何かあったのか戸惑いを隠せないでいる。

すると、1人の女の子がいきなり花恋に頭を下げる。

「疑ったりしてごめんなさい。」

いきなりの出来事で意味がさっぱり理解出来ない。

1人の女の子が始めると次々とみんなが謝っていく。

そんな様子に亜弓と花恋はしばらく思考が停止していた。


「えっと…

何の事?」

皆が話してくれる事は嬉しいが、この状況は理解不明だ。

解釈を求める花恋に皆が答えてくれる。


「花恋ちゃんは陸を裏切ってなかったんだね。

ホントの事がわかってよかった。」

祐樹との事?

でも、どうして誤解が解けてるの?


「何でいきなり?」

誤解をとけたことはわかるが、それまでの課程がさっぱりわからない。


「あの男、最低だよね!

花恋ちゃんにあんな事するなんて信じられない。」

意味の説明がいつの間にか誰かの悪口に変わる。

みんなが口を揃えて言う男とは誰の事なんだろう?

うん?

…私?

「えっ!

何の事言ってるの?」

フリとかではなく、全くわかっていない花恋にみんなは少しざわめく。

「花恋ちゃん

レイプされかけたんでしょ?

たしか…何とか祐樹って人に」

1人の女の子が花恋に気遣い小さな声で尋ねてくる。

まさか写真の相手がバレたって事?

「祐樹はどこに居るの?」

急いで祐樹を守らなきゃ。

レイプなんてバレたら祐樹は…

「たしか…職員室に居ると思うよ」

慌てる花恋に疑問を抱きながらも質問に答えてくれる。

皆聞きたそうな視線を向けながらも道を通してくれる。

その時


ピンポンパンポン


「2年の北原花恋

今すぐ職員室に来なさい。」


「花恋…」

何か言いたそうな亜弓に花恋は笑顔を向ける。

「信じてて。

出来るだけ多くの人が幸せになれる方法を導くから」

自分の事を犠牲にしてでも祐樹を守る

その事で頭がいっぱいだった。

「花恋、自分の事大切にしてあげて」

走りながら花恋は亜弓がかけてくれた言葉の意味を考えてた。

篤哉も亜弓も私を心配してくれてる。

でも私は自分の為じゃなくて人の為に生きていたい。


職員室にたどり着くと急に隣の会議室に連れ込まれる。


会議室に居るのは担任の女の先生と祐樹

「まず北原さん、身体は大丈夫?」

同情の視線を向けてくる担任に初めてイラつきを感じた。

「大丈夫ですよ。

レイプなんてされてませんから。」

悪魔で冷静に返事をすると、担任は驚いた表情をした。

祐樹の言った事を疑ってる様子はなかったみたいだ。

「ちがう!

俺は花恋をレイプしたんだ。

あの写真に写ってる男は俺でラブホには無理矢理連れ込んだ。」

これで終わるかと思ったのに祐樹は譲らない。

どうして…?

「先生、私はされてません。」

言いあいをする2人の目はどちらも真実を語ってるようで、担任は困りはじめる。

「まぁまぁとりあえず落ち着いて。

まず貴方が話して。」

担任は祐樹を指さす。




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