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愛を捧げて  作者: 花恋
10/17

10、すれ違った気持ちを

花恋…

お前は俺の事を弄んでいたのか?

俺に向けたお前の笑顔や愛の言葉は嘘だったのか?

そんな風には見えなかったのに…


俺もお前と同じでさ、そこまで人を深くは愛せた事がないんだ。

付き合った人の事を信じる事が出来ないから。

俺と付き合った女はだいたい言うんだ。

付き合った理由は

「顔がかっこいいから、自慢できる」

って

そんな女を愛せる訳がない…

いくら一途でも気持ちは冷めて、長続きしない。


でも初めてだったんだ。


リアルに付き合いたい

冷めない愛を捧げたい

って思ったの


陸は1人花恋との思い出を屋上で思い浮かべていた。


出会った時はたいして何も思わなかった。

美人な女なんて今までに沢山居た

でも彼女を知るにつれて自分のものにしたくなった。

彼女の傷を知っても全てが愛しくて愛しくて仕方がなかった。


ホントの事を言うとさ…

全然許せるんだ

花恋が男とラブホに入った写真なんて

俺は花恋がラブホに入った事がショックなんじゃなくて、どうしようもなく嫉妬している自分が嫌であの場を去った。


だって一回ぐらいはあると思ってたから…

最悪だよな

結局俺は花恋を信じれてないんだ。


ガチャ


「陸!

ここに居たんだ。

探してたんだよ」


愛しの彼女とはちがう声、顔、仕草


「何のようだ?」

冷たく向けても何度も何度もやって来る女

でも、俺はこの女を絶対に愛す事は出来ない。

この女の本当の怖さを知っているから。


「花恋ちゃんなんてやめてさ、私ともう一度付き合お?」

別れを告げてから何度聞いたんだろうか…

けど1度も心には届かない。


「必要ねぇよ

お前とはとっくの昔に終わってるし」

冷たく告げるとお決まりの涙…

なんて、つまんない女

「なんで…ひっく

陸…

花恋ちゃんは浮気してるんだよ?

私と付き合えば陸は幸せになれるの」

幸せか…

俺が花恋に告げた言葉と同じ

あの頃は深い言葉だと思ってた

何よりも意味がある言葉だと思ってた。

でも現実は脆い…

「俺はお前と居ても幸せになんてなれねぇよ!」

きっぱり告げると沙織は楽しくなさそうに、涙を拭う。

「ハァ…

めんどくさいなぁ…

他の男はすぐに、おちるのに

これな〜んだ?」

沙織が取り出したのはまた写真

花恋の写真かと思い覗き込むとそこにいたのは…


ガシッ


「こんな写真どこで手にいれたんだよ!」

沙織の腕を掴み無理矢理写真をもぎ取る。

何で今更こんな写真が…

「キャハ

この写真はさすがに冷静でいられないんだ?

ねぇ私ともう一度付き合ってくれる?」

まさかあんな写真を出してくるとは…

断る選択肢はないじゃん

「揺する気か?

こんな事してまで付き合って何の意味があんだよ!」

すると今までで1番不気味な笑みを浮かべる。

「女の子はね横にかっこいい男の子がいると尚更輝けるんだよ。

陸と付き合えばきっと私は花恋ちゃんより綺麗になるの。

この学校の女王と呼ばれるのにふさわしいのは私なの。

アハ、アハハハハ」


その頃、花恋はクラスメイトに質問責めに合っていた。

「この男の子とラブホに行ったの?」

祐樹の顔にモザイクがかかっているのが、せめてもの救いだ。

「えっと…

その」

何て答えたら1番良いんだろう

出来るだけ穏便に済ましたいなぁ

囲まれた状態でそんな事考えれるほど大人じゃないけど

「はっきりしてよ!

陸くんを傷つけるなんて信じられない」

1人の女の子を中心に女子の大半が花恋を責めてくる。

教室の隅っこで亜弓は動けずにいた。


男子は女子の戦いを無言で見つめていた。

「この男の子とつきあってるの?」

他の問いの答えは悩むがこれだけは答えれる。

「つきあってないよ。

私が愛してるのは陸だけだもん」

しかし、その態度が返って反感をかう。

「じゃあ何でこんな写真あるのよ」

「そうよ、そうよ」

いつの間にか花恋に逃げ道はなくなり、1人の女の子に突き飛ばされる。


ドンッ


「イタッ…」

尻餅をついた花恋を助ける者はいない。

辺りはいい気味だと笑う人ばかりだ。


自分に原因がないと言い切れたらいいのに…

どうしよ…

反抗したって無駄だよね?

ヤっちゃったしなぁ…

でも反抗しなきゃ陸への気持ちまで疑われちゃう

力強く立ち上がる。

「な、何よ?」

「私は陸を愛してる!

その気持ちには嘘はないから。」

止める声が聞こえるがそれだけ言って鞄を持ち教室を出る。

逃げるようで嫌だけど仕方ないよね

今日授業を受けていられるほど強くはないし。

「花恋、待ってよ」

教室から出ようとした花恋を亜弓が引き留める。

でも、あえて花恋は亜弓に何も言わずにその場を後にした。

亜弓を巻き込むわけにはいかないしね

花恋が向かった場所


それは、屋上だった。

今なら誰もいないでしょ…


ガチャ


屋上に出て深く深呼吸して、やっと陸と沙織の存在に気がついた。

「花恋ちゃん、丁度よかった。

私達ね、付き合う事になったの」

満面の笑みで告げる沙織。

それとは真逆に陸は組まれた腕に嫌そうな視線を向けている。

バレバレな態度…

でも、沙織には気を付けなきゃいけないから

あえて騙されてあげる。


「そっか…

正直ショックだけど幸せになってね」

得意の笑顔を作ると沙織はつまらなさそうな顔をした。

「陸行こ!」

「あぁ…」

二人が出ていった事を確認すると花恋は崩れるように、その場へ座り込む。

「何か理由がある事ぐらいわかってるけど、嫌だよ…

誰かと腕を組んでる姿なんて見たくないよ…

私以外の人に微笑む彼なんてみたくないよ…」

陸もこんな気持ちだったのかな?

ごめんね…

傷つけて


泣き崩れる花恋の元に1人の足跡が近づいてくる。

振り向かない小さな花恋の背中を、暖かい身体で包みこんでくれる。

「だれ?」

陸であってほしい…

「俺だよ」

陸よりもクールな声

「何でこんなとこに居るのよ?」

強がりな花恋を彼は一層強く抱き締める。

「泣いてるお前をほっとけなかったから」

フラれてもどこまでも優しい

素っ気ない一言からも優しさが溢れてる。

私はズルい女だ…

浮気なんてしないって言ってたのに、寂しさに染み込む彼の優しさが何よりもほしい。

「あつや…」

花恋は、いけないとわかっていても、寂しさや悲しさを忘れるために篤哉に身体をあずけた。


去っていった、そう思っていた陸は、屋上から出てすぐに沙織を突き放し花恋の元へと向かった。

一瞬のうちに入り込んだ会長に花恋が抱きしめられている。

言葉は何も聞こえない。

何で?

けど、今たしかに花恋は会長を抱きしめ返した。

結局愛していたのは俺だけかよ…

身体の関係は許せる。

けど心は…

俺だけを愛してくれよ

陸はそう思いながら屋上を後にした。


そんな事には一切気づかない花恋と篤哉

いや、篤哉は気づいていたかもしれない

でも篤哉からすれば陸は邪魔な存在でしかなかったから。

「篤哉もう大丈夫だから離して」

涙はすっかり止まりいつもの花恋が戻りつつあった。

「ヤダ」

今離したらきっと花恋は奴の元へ行く。

馬鹿げた方法だけど、何が何でも行かせたくない。

「ヤダって子供じゃないんだから」

フフッて笑っていても身体を動かし離そうとしている。


「どうせ授業を受ける気はないんだったら、もう少し元の顔に戻るまで居ろよ

その顔じゃ目立つ」

花恋はポケットからハンカチとファンデーションを取り出し、元の顔を作る。

「オッケー出来上がりっと

これで大丈夫だよ

じゃあ行くね」

今すぐにでも去ろうとする花恋の手を掴む。

「行くなよ!」

「離して…陸に会いたいの」

最悪だな私

さっきまで抱きしめてくれた人にこんな態度取るなんて。

「陸の元なら行かせない。

お前はまた泣く事になる。

そんなの今度こそ許せねぇよ。」

俺の最後の告白受け取ってくれよ。

篤哉は誰よりも優しい

でも私は陸じゃなきゃダメなの。

「泣かない

もう泣かないよ

篤哉のおかげで私は強くなれるよ」

篤哉は手を離してくれたが、複雑な表情をしている。

いつも私の心配をしてくれてる。

ありがとう…


屋上を出て陸に電話をする。


プルルルルプルルルル


ガチャ


「もしもし」

陸の声…冷たい

「も、もしもし。

あのね、今どこに居るの?

話したいんだけど。」


「俺は話す事ねぇよ。」


「えっ

沙織ちゃんと…付き合うの?」


「ちがう。

それは関係ないし、沙織とは付き合わない。」

よかった…


「じゃあ何で?

私はきちんと話してほしいから…」

陸はちがうの?

話して誤解を説きたいのは私だけ?

もう一度愛し合いたいのは私だけ?


「お前に俺はつりあわねぇよ。

だから会長に幸せにしてもらえ」


「ちょっと待ってよ。

あんたが私を幸せにしてくれるんでしょ?

ねぇ聞いてる?」


プツッ


プーップーップーッ


等しい間隔でなる音


何で?


何で切るのよ…


もう1度かけなおしても陸は出ない。


ただいつまでも呼び出し音が続くだけだった…


ヤダよ


このまま終わるなんてありえない


諦めきれないよ


もう1度だけ話を…させて


翌日から地味なイジメが始まる。

そんなの全く気にならない。

気になるのは陸の事だけ


毎日電話してもメールしても、手紙を靴箱にいれてもどれも返事はない。


けど偶然みつけた陸は沙織と歩いてる様子もない。


だったら何で?


知りたいよ、あなたの全てを…

何があるの?


陸もこの時花恋の事を考えていた。

俺、傷つけたかな…

何も理由言ってないしな

でも、あの写真だけは

結局俺はその程度しか花恋を愛していないのか?

花恋は俺に全てを教えてくれた

そして、俺は全てを受け入れた。

花恋はそんな風に俺を受け入れてくれるか?


二人はそれぞれの気持ちを疑い、すれちがっていった。




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