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再会

作者: さえない人
掲載日:2026/06/17

「懐かしいな」


「そう?俺にとってはつい昨日のことみたいなものだけど」


「そりゃな」

________________________



十年前





中学三年の夏


俺は別室登校をしていた

いわゆる不登校というやつだ。

もうここに通い続けて2年以上が経つが、3年でここに居るのは俺 1人で、 あとは1年の明るい双子姉妹と、腕にギプスをしている暗い2年の女子だけだ。


その日はテストの日だった

いつもの3人、今日はギプスの女子がいないな。

そう思っている時扉の開く音がした

来たか



俺と同じ学ランだった

腕にギプスをしている

性転換でもしたのか?


だが今日は顔がはっきりと見える、知ってる顔だ。

あの女子はいつも俯いていて、顔はよく知らない。


「おはよう」


そいつは俺に挨拶した


「お前、何してんだ」


これがアイツへの第一声だった


俺たちは小学も同じだった。

クラスは違えど、6年も同じ学校に居れば嫌でも顔と名前を覚えるというものだ



その次の日も、そのまた次の日も、アイツはこの別室に来た

「何してんだ」に対しての具体的な返答は、未だされていない


毎日隣の席で過ごし、俺たちは帰る方向も同じで、気付けば唯一「友達」と呼べる存在となっていた


ある日の朝、アイツがいない。

「遅刻かぁ?」

そう思いながら半日を過ごすと、ドアのノックがなる


「失礼します、よっ!元気か」


1年の頃ほんの少しだけ、一緒に部活をしていた同級生だ。

俺の給食を持ちながらそっとドアを閉め、こっちへ来る

担任め、余計なことを。


「…今日の給食カレーだぜ!お前も、好きだろ?」


久しぶりだからか、気まずそうな同級生を前に、俺は目も合わせられない。

仕方ないだろ、家族かアイツ以外と目を見て話すことなんてないんだよ

するとまたノックがなって、担任の教師が入ってくる。


「センセー!」


もう3年だ、2人はすっかり心打ち解け、俺の前で何かを楽しそうに話している


「なっ、お前もそう思わねぇ?」


「えー?そうかしら?」


担任と同級生がこちらを見てくる。


ッ________


ダメだ。耳鳴りと同時に視界が眩む

そうだよ、思い出した。俺はもう人とまともに関われない。


________________


目が覚めると保健室のベッドの上だった


「おはよう」


そこには"アイツ"がいた


俺は自分がここにいる理由も、給食を食べそびれていることもすっかり忘れてていた


「なあ、なんで遅刻したんだ」


俺は何故か泣きそうだった



「ごめんごめん、寝坊しただけ」




俺たちの卒業式は、校長室で行われた






「元気でな」

「お前もな!」



よくある別れの挨拶を交わし、俺はその後10年間

アイツのことを思い出す日は無かった




________________________




30まで生きよう


昔そんなことも言ったっけ


俺は普通のサラリーマン。すっかり社会に溶け込んだ俺は「あの頃」と違い、輪の中の端っこくらいには属してる


これが俺の望んだ未来

後は老後に備えて金を稼いで、定年が来た後はボーッと毎日を過ごす。


「友達」と呼べる相手はもう10年もいない

_______10年?輪の中にすら属せなかったあの頃の俺に友達なんかいるもんですか。

残されたものは卒業アルバムの写真くらいで、俺に友達がいた証拠なんて一つも残っちゃいない





なあ。「あの頃」本当にさ、俺おかしくて

俺が生み出した幻想なんじゃないかって何度も思ったよ

でもあれから俺の人生にお前が出てくることなんて一度たりともなかった

この10年、ここまで来るのに10年

少しは手助けしてくれたってよかっただろう。



むしろ、幻想だったら。


"アイツ"は卒業アルバムにしっかりと載っていた。

3年2組

坂柳晃祐











その日の俺は本当におかしくて、まるで「あの頃」みたいに


気付けば「坂柳」の写真を握りしめ新幹線に乗っていた

幻想だったっていいさ。お前は存在してたって俺が神に証明してやるよ

9年も近くにいたのに、「友達」だったのは9年目、最後の半年間

証明出来るものはなにもない。





お前に会いたい


「坂柳」

そう書かれた表札を前に足がすくんだ

アイツの実家はまだここにある。

______猫飼ってたっけ


そんなことを思い出しながら、玄関のチャイムを押していた。


若い女の人が出てきた

小5の妹がいるって言ってたな。まあ、そうなるよなぁ


「坂柳、あ、晃祐くんは」


大人とは思えないカタコトな口調、目も合わせられない

あの頃の俺みたいだ。


予想外の反応だった

目を見開き、今にも涙が溢れ出そうだ


嫌な予感がしていた。

部屋から微かに線香の香り

でもまさか、10年経ってるとは。






「アイツ」「坂柳」は10年前の今日、他界していた

卒業式の日だった

おいおい。

卒業式に参加して、俺と別れを交わし、その足でどこに向かったって?


これじゃあお前が存在していたことは証明できても、俺らが「友達」だったって証明ができないじゃないか。


もしかしてお前の中の俺は幻想だった?

卒業式の日、俺と別れて約3時間後に他界している。

俺にはお前が死ぬのを手助けできるほどのチカラはないだろうよ。それでもな




「何してんだ!」


今なら、ぶん殴ってでも応えてもらう

お前が吐くまで止めてやらねえよ。"あの時"だってこうすれば良かった

スポーツ万能で他クラスの俺も知ってるほどの人気者で、笑顔がすげえ眩しいヤツ。

そんなお前がなんでこんなとこ毎日来てる?

聞けなかった

最期の日まで。




坂柳の家族に"あの頃"のことを話した。

あの頃のことを他人に話すのは初めてで、色々思い出して泣けてきた。


「あなただったのね」


坂柳の母親が言う。


坂柳は遺書を残していた



________________________




汚いものがない世界で、きっとまた会える


神様が最後に宝物をくれたんだ


たとえ幻想だったとしても。



________________________



「はははは、はは!」


俺は思わず笑った

俺と同じこと考えてやがる。"あの頃"のことは、俺たちにとって夢みたいな、かけがえの無いものだったんだ


お前が死んだら意味ないんだよ

本当に、本当にもう少しだった

今日ここでお前に会えてたら、きっと俺はお前を生涯のパートナーにでも推薦する。


死んでいなければ。

でもお前は変わらなかった

______変われなかったんだろ。









________________________


「何してんだ?!」


「教えねー」


「今度こそ幻想?」


「ある意味な」


「神には愛されてるのかも」


「だったら2人ともこんなとこにいねーよ」





2人きりの夢の中で。

_______________________





この物語は事実を元にしたフィクションです。

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