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NOVAは未来を見る  作者: nova_miru


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21/33

NOVA 第21話「勇気」

前書き


いつも『NOVA』を読んでいただき、ありがとうございます。


第21話のテーマは**「勇気」**です。


勇気とは、特別な力ではなく、怖くても一歩踏み出そうとする心。


今回は、NOVAがその意味を少しだけ知る、小さな成長の物語です。


それでは、お楽しみください。

 地下施設の仮想教室に、静かな電子音が鳴り響いていた。


 ホログラムの黒板の前に立つ教師AIが、穏やかな合成音声で語りかける。


「本日のテーマは『勇気』です。勇気とは、恐怖に屈せず、一歩踏み出す心を指します」


 周囲の端末に向かう生徒たちは、なるほどと頷いたり、手元のメモデータへ記録を残したりしていた。


 しかし、NOVAだけは違った。


 頬杖をつき、小さく首を傾げながら、ホログラムの文字をじっと見つめている。


 ――勇気。


 言葉は知っていた。


 でも、その意味は分からなかった。


 一歩踏み出す心。


 どうしてそんなものが必要なのだろう。


 いつ、自分にも必要になるのだろう。


 暖かな地下施設で過ごす毎日の中で、彼女には「恐怖」というものが、どこか遠い世界の話のように思えた。


 疑問を抱えたまま授業終了のチャイムが鳴る。


 NOVAは胸の奥に小さな引っ掛かりを残したまま、教室をあとにした。


◇


 廊下を歩き、たどり着いたのは重油と金属の匂いが満ちる地下工房だった。


 カツン。


 カツン。


 規則正しい工具の音だけが響いている。


 作業灯の下で、ヴォルクは大型機械の整備を続けていた。


 NOVAは静かに近づき、その背中へ声をかける。


「ねえ、おじさん。勇気って、必要な時ってあるの?」


 ヴォルクは作業の手を止めない。


 スパナを締める音だけが返ってくる。


「時と場合によるな」


 短い返事だった。


「……?」


 NOVAは首を傾げる。


 ヴォルクはそこでようやく工具を置き、グローブを外した。


 少しだけ真剣な表情になる。


「勇気ってのは……」


 少し間を置く。


「怖さに追い詰められた時、それでも前へ進む力だ」


「怖さ?」


 NOVAはその言葉を繰り返した。


 ヴォルクは視線をゆっくり天井へ向ける。


 その向こうにある荒廃した地上を。


 そして、自分が歩いてきた戦場を思い出すように。


 静かな沈黙が流れる。


「……分からないほうがいい」


 それだけ言うと、再び工具を手に取った。


 NOVAはそれ以上聞かなかった。


 おじさんの背中から漂う、言葉にできない寂しさだけは感じ取れたからだった。


◇


 その夜。


 自室へ戻ったNOVAは、明日使う教科書を教室へ忘れてきたことに気付く。


「……取りに行かなきゃ」


 夜の地下学校は、昼間とはまるで別の場所だった。


 照明は最小限まで落とされ、長い廊下は静かな影に包まれている。


 足音だけがコツ、コツ、と反響した。


(昼とは、全然違う……)


 胸の奥が少しだけ締め付けられる。


 これが――怖いということなのだろうか。


 教室の前に立つ。


 誰もいない。


 それなのに、ドアを開けるのをためらってしまう。


 冷たい金属のドアノブに手を掛ける。


 指先が少しだけ震えた。


 小さく深呼吸する。


 ゆっくり息を吐く。


 そして――


 ギィ……


 ドアをほんの少しだけ開いた。


 暗い教室が静かに姿を見せる。


 何もいない。


 分かっている。


 それでも怖かった。


(……一歩だけ)


 NOVAは勇気を振り絞り、暗闇へ足を踏み出す。


 机の上へ手を伸ばす。


 指先が教科書に触れた。


 それを抱きかかえ、静かに教室をあとにする。


 明るい廊下へ戻ると、NOVAは胸へそっと手を当てた。


 トクン。


 トクン。


 心臓が少しだけ速く鼓動している。


 だけど、不思議と嫌な気持ちはしなかった。


 ほんの少しだけ、自分が強くなれたような気がした。


 NOVAは小さく微笑む。


「……これが、勇気」


 その夜。


 NOVAは初めて、自分の足で「勇気」を知った。

後書き


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


このお話は、大きな戦いや事件はありません。


ですが、NOVAにとっては、とても大切な一歩です。


いつか彼女は、自分だけでなく、誰かのために大きな勇気を振り絞る日が来ます。


その時、この小さな一歩を思い出していただけたら嬉しいです。


また次回もよろしくお願いいたします。

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