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第28話:旅立ちの決意

 国王歴1009年9月。


 勇者育成学校の卒業式が間近に迫っていた。長かった学園生活も、いよいよ終わりを告げようとしている。


 レオ、エリック、セレーネ、アルスの四人は、学園の広大な敷地内にある、普段は立ち入ることのできない「誓いの丘」に集まっていた。


 そこからは、彼らが過ごした学園の全てと、その先に広がるアースガルド大陸の壮大な景色が一望できた。


 「ついに卒業か……なんだか、あっという間だったな」


 レオが、晴れやかな顔で空を見上げた。彼の声には、ここでの生活を振り返る感慨と、未来への期待が混じり合っていた。


 「本当ね。まさか、私がレオとこうして肩を並べている日が来るなんて、数ヶ月前には想像もできなかったわ」


 セレーネが、少し照れたように呟いた。彼女の表情は、以前のような冷たいものではなく、穏やかで柔和な光を帯びていた。レオとの和解、そしてパーティーとしての連携を通じて、彼女の頑なだった心が確かに氷解したのだ。


 エリックは、静かに頷く。

 「様々なことがあったけど、ここでの経験が、俺たちを強くしてくれたのは間違いない。特に、この四人でパーティーを組めたことが、何よりも大きな収穫だ」


 彼の言葉には、偽りのない友情と、仲間への深い信頼が込められていた。


 アルスは、遠くの地平線を見つめながら、静かに語り始めた。

 「私たちは、この学園で、勇者としてあるべき姿を教えられてきた。魔王は悪であり、世界を救うのが勇者の使命であると」


 レオ、エリック、セレーネは、その言葉に力強く頷いた。彼らの心の中には、学園で植え付けられた「魔王=悪」という認識が確固たるものとして根付いていた。彼らは、疑うことなく、その信念を胸に抱いていた。


 「我々は、世界を脅かす魔王を討伐し、人々を救う『英雄』となる。その誓いを、今、この場所で、改めて心に刻もう」

 アルスの言葉は、彼らの心に深く響いた。


 レオは拳を握りしめ、力強く誓う。

 「俺は、必ず英雄になる! 誰もが認める、最強の勇者に!」

 彼の瞳には、真っ直ぐな野心が宿っていた。


 セレーネもまた、魔力に満ちた掌を見つめ、決意を新たにする。

 「私は、私の魔法で、苦しむ人々を救い、新しい時代を築く手助けをするわ」


 エリックは、剣の柄をぎゅっと握りしめた。

 「俺は、大切な仲間たちを守る。そして、この大陸の平和のために、全力を尽くす」


 それぞれの胸に、未来への希望と、明確な目標が宿る。彼らは、これまで歩んできた過酷な学園生活、そして互いの人間関係における葛藤を乗り越え、揺るぎない友情と信頼で結ばれた、真のパーティーとなっていた。


 アルスは、三人の誓いの言葉を聞きながら、心の中で、もう一つの誓いを立てていた。それは、彼自身の真の目的。


 (魔王討伐は、あくまで表向きの目的。私の旅は、その裏で『空白の10年間』の真実を探求し続けることだ。この世界の歴史に隠された、あまりにも不自然な空白……必ず、その謎を解き明かしてみせる)


 彼の瞳の奥には、冷静な知性だけでなく、深遠な探求心が燃え盛っていた。その探求こそが、彼の旅の真の原動力となる。


 翌日。


 勇者育成学校の門の前には、旅立ちの準備を整えたレオたちの姿があった。彼らの背には、冒険に必要な荷物がしっかりと固定され、顔には、希望と少しの緊張が入り混じった表情が浮かんでいる。


 多くの教師や在校生たちが、彼らを見送りに集まっていた。特に、レオたちの突出した実力と、最終試験で見せつけた圧倒的なチームワークは、学園中に衝撃を与えたため、その期待の眼差しは熱烈なものだった。


 レオは、学園の門を振り返り、これまでの全てに感謝するように深く頭を下げた。エリックも、セレーネも、同様に。アルスは、静かに、しかし確かな歩みで、門の外へと一歩を踏み出した。


 レオのポケットの奥深くでは、小さな妖精リルが、静かにその旅立ちを見守っていた。彼女の小さな瞳には、未来への光が宿っている。


 彼らの壮大な物語が、今、まさに幕を開けようとしていた。アースガルド大陸の広大な未知が、彼らを待ち受けている。

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