彼女の作ってくれたカレンダー
想像してみてください。
大好きな彼女から、彼女の写真がいっぱいのカレンダーをもらいました。
開くまで、ワクワクしますよね? ドキドキしちゃいますよね?
……そういったカンジで読んでいただけると幸いです。
「私の作ったカレンダー、高垣くんの部屋に飾って欲しい」
そう言われ、俺は彼女の袖井裕美から、ラッピングされたそれを渡された。どんなカレンダーなのか聞いてみると、一月から十二月まで裕美自身の写真を使って作ったのだと言う。
うれしかった。俺は裕美のことが好きだ。その裕美が俺の部屋に自分の写真を飾って欲しいって……俺は、跳ね上がりそうになるのを抑えて、裕美の自作カレンダーを笑顔で受け取った。
……と、浮かれたのは去年の年末の話。もう年が明けた。俺はそのカレンダーをラッピングから出せず、一度も中を見ていない。渡されたときは本当にうれしかったし、心から喜んで受け取ったのだけど……そのあと、落ち着いて考えて、そのカレンダーに使われている写真がどういうものなのか気がついたんだ。
去年のうちに、裕美から、
「カレンダーのご感想は?」
と、ワクワクした顔で聞かれ、
「まだ開けていないよ。来年まで、楽しみにとっておくつもりなんだ」
そう笑って答えると、裕美はちょっと残念そうな顔をした。嘘は言っていない。楽しみな気持ちもあるにはあるんだ……
俺はラッピングに包まれたカレンダーの見つめ、覚悟を決めた。新しい年が来たんだ。新しいカレンダーを開かないと。
取り出したカレンダーには表紙までつけられていて、照れくさそうに笑う裕美の顔の横に『今年もよろしくね』と文字が添えられている。ああ、可愛いなあ。この写真は大丈夫だな……もうこれでいいんじゃないか? カレンダーをめくらないで、このまま壁に飾っておけば、それで十分じゃないか?
いやいや、ダメダメ。裕美が作ってくれたカレンダーなんだ。ちゃんと使わないと。俺は気合を入れ直して表紙をめくった。
並べられた一月の日付の上に、夜中の写真がある。中央に立っているのは緊張した顔の裕美。その背景にはボロボロの木造建築。民家の廃屋だろうか、いや廃校舎かな。どちらにしろそれは『心霊スポット』と呼ばれているものだ。つきあい始めたあとに知ったのだけど、裕美の趣味は心霊スポット巡りなんだ。写真の裕美のまわりを見ると、ぼんやりとした光が囲んでいる。中には、人の顔のように見えるものも……「私、引き寄せちゃうのよね」と裕美は自慢げに言っていた。
……つまり、俺はこの一年、心霊写真を部屋に飾ってすごさなきゃならない。霊とか苦手なんだけど……と、写真の隅に、
「今年は、一緒に行こ~ね」
と、文字があるのをみつけた。
この話を最後まで読んで、
「彼女に嘘ついて、カレンダーを部屋に飾らなきゃいいんじゃないか?」
って、言ってる人いますか?
そういうこと言ってるから、女の子にモテないんですよ。