理想の彼女ランキング五年連続第一位のカレ
御澄あまねは15歳で朝ドラのヒロインに抜擢され、その抜群のルックスと天才的な演技力で人気を博した。
その人気はデビューから五年経った今も衰えず、常に女性タレントランキングの上位をキープしている。
かく言う私、藤堂霧子も彼女の大ファンで、所属事務所にマネージャー志望で就職し、遂に今年から御澄あまねを担当する事になったのだ!
顔合わせのために事務所に来た私は、逸る気持ちを押さえながら会議室へ。
すると、
『いや! もう無理です!』
『まぁまぁ、あまね君』
漏れ聞こえる言い争うような声。一方は間違えようも無い、あまねちゃんの声。もう一方はなんかおっさんの声だ。
これはもしや、芸能界の闇的なアレなのかしら?
『もっとキミの可愛い所を見せてほしいんだ』
『もう許してください……っ!』
私は一切の躊躇無く会議室の扉を蹴破った。
「私のあまねちゃんから離れなさいっ!」
「だって僕は男なんですよっ!?」
静寂に包まれる会議室。
あまねちゃんに詰め寄るおっさん、もとい事務所社長はフリフリの衣装を持ちながら咳払いし、
「藤堂くん。キミはなにも聞かなかった。いいね?」
「いや、男っ!?」
「いや、私の話を聞きなさい!」
おっさんを押し退け、あまねちゃん、あまねくん? に詰め寄る。
「あ、あの……?」
さらさらの髪。長いまつ毛に溢れそうな瞳。華奢な肩に細い腰。透き通るような肌と桜色のほっぺ。
「むしろ推せる!」
「むしろ推せる!?」
私はきょろきょろと外を見やり、蹴破ったドアを閉め直して、
「社長。後の事は全て私にお任せ下さい」
「いや、キミねぇ」
「それとも、この事を公表されてもいいと?」
「くっ、私を脅す気かね!?」
ふっ、と笑い、フリフリの衣装を奪う。それをあまねちゃんにあてがいながら、
「あまねちゃんにはもっと明るい色を合わせましょう。スカートはあと2センチ短くていい。この辺なんかシースルーにしちゃいましょう」
「藤堂くん……」
私と社長は、がっしりと固い握手を交わした。
あまねちゃんは涙目になると、ぺたんとその場に座り込んで、
「だから僕は男なんですってばぁ~!」
「大丈夫よあまねちゃん。私が貴方を、最高の女の子にしてあげるっ!」
「いぃ~やぁ~~~~っ!」
男の娘ねぇ……まぁ、趣はありますよね。