プロローグ
午後9時、17階の高層ビルの屋上から仕事用黒スーツに身を包みスマホで依頼内容を確認する。
””午後9時10分、薬の闇取引にやってきた山口組組長の暗殺。なおターゲットは送信済みのポイントの東側の800メートル離れたビルの17階の左端の部屋に姿を現す””
10分後か。特に問題はなさそうだな。屋上の柵に左手を置き周囲を確認すると、暗いながらも周辺の高層ビル群は点々と明かりを灯している。季節は夏だが蒸し暑くなく、風はないがいい感じに涼しい夜だ。
「今日も問題なく仕事を終えられそうだよ、アキ」。スマホを右手でいじり、柵にもたれ掛かって自分の左手に話しかける。
「油断禁物だよ、兄さん。・・・ってなんでゲームしてるの??」。僕の弟アキ、アキは左手の甲に目があって、裏側に口しかないけど僕の立派な弟だ。
「兄さんはいつもそうだよねー。本当に緊張感が足りない、今から仕事なんだよ?」
「アキ、これは所謂特定行動ってやつなんだよ。集中力を高m・・・ってアキのせいで死んだんだけど!!!!」
「お、俺!?絶対俺のせいじゃないでしょ!人のせいにする人には晩御飯抜きです」
「ええー」。僕は左手しかない弟に翻弄されながらもスマホの時間を気にする。午後9時5分、そろそろだな。
「アキ、そろそろ時間なんだからふざけてないで集中するよ」
「いや、ふざけてるの兄さんだろw」
「「・・・e??」」
僕は仕事道具のスナイパーライフルを担ぎながら狙撃ポイントに移動する。今日は風がない、絶好の狙撃日和だな。僕はスコープを覗き、対象を探す。いたいた。ぱっと見、黒スーツの護衛っぽいのが3人。取引相手も同数。お互いに向かい合い、テーブルを挟んでソファーに座って商談のようなことをしている。特に問題はなさそうだ。
「アキー、時間までさ」
「うん」
「ゲームしt」
「だめです」
「(´・ω・`)」
「兄さん時間だよ」
弟の合図とともに引き金を絞る。黒くて鋼鉄の物体から凄まじい速さで弾が飛んでいく。死は避けられないだろう。人を殺める瞬間はいつも時間が遅く感じる。罪の意識、人を殺すことは初めてじゃない。今まで何人も何人も殺してきた。たとえクズでも人1人の命と人生を奪ったんだ。いくら理由を付けても殺しは殺しだ。殺す前に気を紛らわせても罪の意識までは惑わしきれない。
スコープ越しに対象の頭が血しぶきを上げるの最後にアキが声をかける。
「800メートルの狙撃お疲れさま、対象はちゃんと始末できたよ」
「・・・そうか、じゃあ帰るか」。スナイパーライフルからスコープを外し、楽器ケースに一緒に収納し、帰りの支度をする。
「兄さん、俺も対象を始末したよ」。弟の言葉に手を止める。
「だから1人で抱え込まないで、兄さんと僕は一心同体u」
「運命共同体でしょ?、僕は大丈夫、ありがとう、アキ」。そう言ってアキに微笑む。世界でたった1人の弟、兄が人殺しでも一緒に罪をかぶってくれる、1人じゃないってのはこんなにも強い。
「帰りたいところだけど殺気だよ、兄さん」
「わかってるよ、アキ」。僕は人殺しの武器をその身に引き寄せた。
初めまして!さもんです。新しくアクションが多い作品を書いてみました。復讐者って書いてヴィンディカトーレって読みます。これが俗に言う言葉遊びって奴ですかねw。名前の由来は心痛がトラウマを扱う作品なので心の痛みを縮めて心痛で、問題の復讐者の方はただイタリア語に直しただけです。はい。え、でもなかなか洒落てません??ますよね?・・・ってことで、これからも不定期ですがのんびり投稿していこうと思っています。これからもよろしくお願いします。(>_<)