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第一話 女子高生、落ちる

初投稿作品です。温かい目で見守っていただけますと幸いです。

「やばい!門限間に合わないかも…」


私は最寄り駅から家までの道を急いでいた。放課後友達と話しこんでいたせいで、いつも乗る電車よりも遅い電車になってしまったのだ。


私、神野玲はどこにでもいる女子高生である。友達とはファッションの話や恋バナで盛り上がり、部活にはそれなりに熱心に取り組む。勉強はほどほどに取り組み、テスト前に焦りだすタイプである。友達からは、勉強してない詐欺だって言われることもあるけど…。


期末テスト直前の今日も、教室で勉強会が開催されていた。途中からはいつもの女子会だったけど…。女子高生ってそういう生き物だ。


正直、恋バナはよくわからない。誰々とメッセージのやり取りが急に止まっちゃったんだけど、どうしよう!とか言われても困る。彼氏なんていたこともなければ、最後に好きな人がいたのなんて、幼稚園の年長さんが最後なんだから。このままだと初恋が最後の恋になりそうな勢いである。


まあ、女の子の相談は、解決策が欲しいんじゃなくて、共感してほしいだけなことが大半だから、そういう話の時には、適当なタイミングで相槌を打つだけだ。そうしていれば、話は勝手にまとまって、ありがとう!なんて言われておわり。


男の人なんて興味ありませんよって顔してる私も、イケメンを見ることは大好きなんだけど…。でも、そのイケメンとどうにかなりたいとは、全く思わない。きれいなものは鑑賞するに限るよね!


今日も、恋愛の話は受け流しながらも、友達と過ごす時間はダラダラと過ぎていった。そのせいで、今こんなに急ぐ羽目になってるんだけど…。


門限を破ると、過保護すぎるお父さんには鬱陶しいほど心配され、厳しいお母さんにはこってりと絞られてしまう。最悪、お小遣いも減らされるかもしれない。バイトをしてない高校生にとっては、お小遣いの減額は死活問題なのだ。


それに、可愛いかわいい小学生の妹、愛ちゃんもきっと私の帰りを待ちわびている。朝出てくる時に、今日は一緒にお風呂に入る約束もしちゃったしね。とにかく急いで帰らなきゃ!


そんな気持ちから、一人の時には使わない道を選んだのがいけなかった。その道は近道だけど暗くて人通りが少ない道で、正直怖い。


焦る気持ちと恐怖心が早足を駆け足に変えた時、それは突然起こった。


「きゃあああああああ!!!」


私の足を中心に、地面が急に光りだしたのだ。足はぬかるみに踏み入れた時みたいに、その光の中に沈んでいく。信じられない光景を目の当たりにして、頭が真っ白になる。何にも考えられない。


「なにこれ!いやだ!!!!」


助けを求めてあたりを見渡してみても、もちろん誰もいない。ただ、暗い道が続いているだけだ。必死にもがいてみるけど、身体は無情にもその光の中に沈んでいく。


「誰か!!助けて!!!!」


必死の抵抗むなしく、叫び声だけが暗い道に残される。私の身体は完全に光の穴に飲み込まれた。目の前に広がっているのは宇宙のような空間。なんなの、これ…。


飲み込まれた瞬間から、私の身体は自由落下をはじめた。宇宙みたいに星のようなものが輝いてるけど、重力は働いているみたい…。


小さいころお気に入りだった、不思議の国のアリスの挿絵が頭に思い浮かぶ。私はうさぎを追いかけて、穴に落っこちたんじゃないけどね!否応なく吸い込まれたんだけどねっ!


そんなことを考えながら落ち続けていたけど、果たして本当にこんなおとぎ話みたいなことが起こり得るんだろうか。突然光の中に吸い込まれるなんてこと、現実世界では起こりっこない。


私、もしかして急な発作とかで死んで死後の世界見ちゃってる系!?それなら、こんな浮世離れした状況も納得できる。苦しさとか痛みとか、全く感じなかったけど…。死後の世界ってこんな宇宙みたいな感じじゃなくて、雲の上!キラキラ!ふわふわ!な世界を想像してたなあ。


それとも、言葉の通り地獄に落ちてる最中とか?たしか、親より先に死んだら地獄に落ちて、河原で石を積ませられちゃうんだっけ?こんなに早く死ぬなんて、確かに私は親不孝者かもしれない。


死んじゃう前に、もっと親孝行しておくんだったなあ…。

お父さん、お母さん、そして愛ちゃん。三人の顔が思い浮かんで、胸の奥がツキンと痛む。きっと今頃、門限をかなり過ぎても帰ってこない私を心配しているころだろう。死んだってわかったら、きっとめちゃくちゃ悲しませるんだろうなあ。友達は…。


あーあ、なんで死んじゃったんだろう…。


「せめて、今日のドラマの最終回観てから死にたかったなあ」


悲しさと、突然の出来事への実感のなさとが心の中で同居した結果、こぼれたのはそんな言葉。最後の言葉がドラマのことなんて、ずいぶんと現実的だなあ、と自分自身に苦笑いを浮かべた瞬間、私は意識を手放した―――――。



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