憧れる対象じゃいけませんか?
「酒飲んで号泣するのが何よりもの夢に
決まっとろうがよ!!」
と、それが自分の産まれた理由だと
言わんばかりの熱量で田路は
僕の鼓膜を攻撃してきた。
とてもやかましい。
午後5時の深夜テンションにもならない
穏やかな時間にマダガスカルに生息する怪鳥
みたいな声を出さないで頂きたい。
それもFPSゲームのボイスチャットで。
「いや、知らんけど夢に見る程遠い物でも無いだろ。」
現在2021年の未成年飲酒禁止法の範囲である
満20歳以上という範囲へ到達するまであと3年の
高校三年生である僕、柳野 澄汏と怪鳥、田路 沙羅は
飲酒の話をしながら弾丸飛び交う戦場を
さっさか歩き回っていた。
「夢では無くても興味はあるでしょうに。
偉い人がその美味しさのあまり未成年には
勿体ないと思い法律で禁じた程の物に。」
未成年飲酒禁止法は別に勿体なさで作られた法律ではなく
記憶を司る海馬が未成年は侵されやすいため
それをなるべく防ぐ法律だが、
そりゃあ興味が無い訳では無い。
どこでも聞く『苦味の後に包み込まれる感じ』という
ビールの感想をこの身をもって体験したいとは
何度か思ったことがある。
「飲んで号泣したいって何に対してだよ。
社会のストレスもその時には体験してるであろう
事も含めてって事か?」
「いやいやいや。そ〜んなネガティヴな思考
しながら飲むお酒なんて美味しくないんじゃないー?
やっぱり仲のいい同僚とか上司さんと焼き鳥でも食べながら
笑い泣きして飲みたいよねぇ。」
年下からも年上からも羨まれることの多い
華のJKでもこんな事言う奴はいるもんだなと
思いながら机の左側に置いてある烏龍茶を1口含んだ。
「最近はお馬鹿ちゃんも多くて未成年飲酒って
結構周りに無くはないよねぇ。
そんな事して飲んでもチート使ってレベル上げ
してる様なもんだとわしゃあ思うけど。」
ちなみにコイツは毎回一人称をごちゃごちゃと
変えながら話をしてくる。
本人曰く、『私』という言葉を友人に使うのはどこか距離が遠い。だからと言って名前呼びも子供っぽいので何とかしたい。と考えている途中らしい。
女の子がワシを使うのは異世界物の
長寿ロリぐらいだと思っていたが
現代にもその存在が確認された瞬間であった。
「まあ仲良い友達が沢山いる時に楽しみたい
っていう気持ちの表れなのかもな。
今飲もうとは僕も一切思わないけど。」
あそこ敵1人ね。とピンを刺しながらそう言った。
「まあ3年後ナギーと飲むのも1つの楽しみ
だからそんな事したらカッチーンだけどね〜。
お互い大学行ってええ酒飲もうや〜。」
そんな話をしながら、今日も戦友田路との
FPSを楽しんだ。田路のキル数28。
よくもまあ会話しながら弾を当てられるものだ。