09話.[できると信じて]
「朱美ちゃん、この前のお礼がしたいんだけど」
新しく買ったばかりの本を読んでいる彼女に言ってみた。
私は読んでいる最中は邪魔されたくないけどしょうがないことだと片付けて。
「別にいいわよ、佳子が一緒にいてくれればそれで」
「え、だって朱美ちゃんがいたからテストで高順位を取れたわけだし」
あれによってお母様も認めてくれたのだから。
彼女は私にとってかなり嬉しいことをしてくれたんだ、だったらお礼をしたいというかお礼をしなければならないというものだろう。
一緒にいることがお礼とはならない、だってそれは私が望んでいることだから。
だからその点でもお礼をしなければならないのはこちら側だということになる。
「じゃあ、愛梨と仲良くしなさい、そうしてくれれば十分よ」
「それはするよ。でも、朱美ちゃんへのお礼とはならないよ」
「ならなにができるの?」
彼女は寝転ぶのをやめて座ってからこちらを見てきた。
なにができる、か、確かにそう聞かれると絵を描くぐらいしかしてあげられない。
さすがにそう何枚も描いてほしいわけじゃないだろうし……。
「ふふ、大丈夫よ、本当にあんたがいてくれればいいから」
「あ……うん」
「そんな顔をしない、またテストがくるんだから」
「多分、次は絶対にあんなのは無理だと思う」
「教えてあげるから大丈夫よ、また愛梨を驚かせられれば十分だから」
そう言った彼女はとても楽しそうだった。
確かにああいう驚き方はなかなか見られないから少し分かる。
よしそれならと、頑張ってみようと決めたのだった。
彼女もいてくれるからできると信じて。