(挿話2)静がやらかしますⅢ
静は、今迄は夜間帰宅する時も女性としての一般的な注意を払ってはいたが、本当に身に危険が迫る事態ということなど考えもしていなかった。しかし、魔力を活用して様々な能力を獲得した今は、その驚くような力を知ったことで、父が懸念していた危険が迫るという事態が本当に発生し得ると感じていた。父はその対応策の一つとして、武術太極拳を獲得したが、静は合気道を習ってみようと思った。
幸い様々な能力を獲得したことで事務処理能力が向上し、今迄は自宅で勉強に費やしていた時間があまり必要でなくなったので、その時間を当てる心算だ。また、仕事内容も、静の実力を認めかつ経験を増やしてあげようとする、弁護士達の応援心(笑)もあって、広範囲になりそれに伴い給料がかなり上がって懐具合もよろしい。
静は、事務所から帰る途中に合気道を教える道場があるのを知っていたので、事前にネットで口コミなどを調べ、女性の指導者もいると知った。魔力量が増え身体能力が上がったことが要因なのか、今の静はきびきびとした動きと引き締まった顔にプリプリ感のある肌から、とても40歳とは思えない女性になっていた。道場で入会の手続きをして年齢欄に40歳と書いていると、受付の女性が(えっ嘘)目を見張った。
道着はこれから買うので、今日はジャージを着ている。これも事前に調べて用意したのだ。道場の板壁近くには見学者も多くいた。静もその一角に座り見学している。生徒が指導者の指示で乱取りを始める。見学者に対する一種のパホーマンスなのだろう。10分ほどの乱取りが終わり、女性指導者が出てきて「見学者の皆さんも、よろしければ基本の動きを体験してください」といって、倒された時の力の逃がし方を演武して見せる。要は転び方だ。上手く転んで怪我をしない様にする。静は運動し易いジャージでもあり、入会希望者でもあったので、積極的に参加した。
静は、女性指導者のお手本通りにやってみる。(うわぁ~思った様に体が動くわ)その動きに感動しテンションが上がる。女性指導者は参加した見学者全員の動きを見ていた。(え?あのジャージの女性って入会手続きした人だよね。40歳って聞いたけど姿も動きもそんなんじゃあない。体幹がぶれない。経験者?)
次は組手で、一方が相手を押し、受け手がその力を受け流す技である。生徒が実演した後、見学者同士を組ませて始める。静も見学者と組もうとしていると、女性指導者が「先程、入会手続きされた方ですよね」と聞いて来る「はいそうです」、「じゃあ生徒さんと同じですから私とやりましょう」、「えっ、いいんですか」、「はい。次は生徒として参加するんでしょう。今やってみましょう」、「じゃあよろしくお願いします」
初めは静が女性指導者を押す、女性指導者はスーと力を逃がすので静は前に倒れそうになる(成程こうなるのか)演武を見学するのと実際に体験するのでは此処迄違うかと感心する。静は知らなかったが、彼女はこの道場でもかなりの実力者であったので、技の切れが凄く、静が感心するのも無理からぬことなのだ。攻守を交代する。静は先ほどの彼女の動きを確り記憶していた。そして、ぶれない体幹と身体強化、脳強化などにより底上げされた身体能力で彼女が押す力を完璧に流した。それは女性指導者でも体が前に出てしまう程の受け流しの技となっていた。
彼女は、自分がいなされたことに驚愕した。押した瞬間力が流れ、一瞬も留まれない完璧な受け流しであった。(何者?)と思ったが入会手続きをしているのだ「いい動きね。これからが楽しみね。お名前聞いても?」、「有難うございます。御影静です」その夜、静は自宅に帰り合気道場の体験を脳内で再現していた(フフッ本当に思った様に動くわ。最初に見た乱取りで使われた技も今なら理解できるわ)静は知らなかったが、ラノベに書かれている『見取り』を獲得した。