2020年12月アンチエイジング
俺が必要と考えた能力を獲得し、多少のトラブル
に対応できる自信が持てた。ここまで5カ月が過
ぎ、魔力を常に体中を循環させたことで魔力操作の
習熟度がかなり上がった。また、魔力量も相当増え
た(愈々アンチエイジングに挑戦するぞ)俺の考え
るアンチエイジングは、単に若返るものではない。
前に寄生体が説明してくれた⦅魔素とは、全てに変
化させることができる根源の物⦆であるのなら、ど
のように若返るかも選択できるではないか考えた。
つまり、コンプレックスを改変した若返りも可能で
あると。しかし極端な改変、例えば欧米人の風貌に
改変するなどは拙いだろう。この改変が成功すれ
ば、デザインチルドレンも夢でなくなる。実際の処
はやってみなくては分からないが。
女房とどの様に若返るか話し合う「若返り先の姿
は、肉体のピークが20歳前後と言われているので、
それで良いよな」、「ええ、どうせなら最高の時が
いいわ」女房も今までの実績から若返りを疑っては
いない「容姿は最低でもコンプレックス感のある部
分を治すけど、全く別人にも出来ると思うよ」、
「自分で自分を見て分からないって怖くない?」、
「どうだろ?俺はコンプレックスを治すよ。すっき
り二重、真っ直ぐな鼻、杓った顎、高身長に足長」
「それだけでも多いじゃない」笑いながら俺をコン
プレックスの塊みたいに言う(どうせコンプレック
スの塊だよ)心で毒づく。女房の要望は、顔は鼻だ
け少し細く高めに、胸が程々ある八頭身、高身長足
長となった(母さんや、人のことは言えない程コン
プレックス多いでっせ)心であざ笑う。間違っても
口にしてはいけない。話し合いの結果、若返り先は
肉体ピーク時である20歳で、女房は、身長167㎝の
足長、胸が程々ある八頭身、顔は元々ハッキリした
顔立ちなので鼻だけ少し細く高めにする。俺は身長
178㎝の足長顔は切れ長の奥二重をクッキリ二重、
少し曲がっている鼻を真っ直ぐにする。顎も横から
見ると少し杓っているのを程々修正する。もう一つ
男にとって非常に大事な見栄を張りたい部分があ
る。これは女房に内緒だ。巨〇とまでは言わないが
せめて「まぁ~立派ね」くらい言われたい「思った
より小さいのね」は悲しいよ。ということで、そこ
もこっそり改変します(グフㇷ。女房だって胸高に
したからいいよね)このデザインアンチエイジング
も、やり直しが可能であると思っているが、できる
限り慎重にしたい。今の魔力量でデザインアンチエ
イジングを行うことに問題がないか、寄生体に確認
したところ問題ないとの回答も得た。最初に自分に
アンチエイジング施す。ベットに横たわり、デザイ
ンした姿を明確にイメージしつつ、持てる魔力の全
てを全身に循環させる。
自分の姿を以前も使ったCG画像の立体イメージを
するとより鮮明になる。目を瞑りイメージを保持し
つつ魔力を循環しているのだが、体を構成する全て
がボコボコ動く(うわぁ集中が途切れそう)必死に
イメージする。時間の経過が曖昧だったが、やがて
動きが止まった。枕元には女房がいる筈だが、見る
と驚愕した表情のまま固まっている。俺としては、
女房が補助者として対応してくれると助かるのだ
が。「おい、終わったようだな」と声を掛けると、
女房はビクッとしてから「ええその様ね」と声を出
す「改変中の様子はどうだった」と聞くと「貴方か
ら淡い光が出て姿が薄くなり、ぼんやりとしか見え
なくなった」、「そうか自分じゃ体がボコボコ動い
て、集中を切らさない様にするのが大変だったよ」
「今は光も消えハッキリ見えるけど、別な意味で大
変よ」と女房が焦ったように言う。ある程度覚悟は
あったが姿見に映して驚く(うわぁこれは凄いな。
自分であることは分かるけど)真っ直ぐ通った鼻筋
とクッキリした二重の目が元々切れ長の目と合わさ
って、此方を見つめる目から光線が出ている様な強
烈な印象を与える。老化で瞼が下がり気味だったの
で印象の変化が大きいのだろう。薄く張った皮膚な
のに瑞々しさに溢れ引締まった顔、更に178㎝の身
長に足長。自分ながらどこの売れっ子モデルだよと
思ってしまう。横顔をみると杓っていた顎もほとん
ど分からなくなっている。(これはちょっと不味っ
たな。後、あれはトイレで確認しよ!)
「母さん想像以上に変わっちゃった。ヤバい」こ
こまで印象が変わるとは思っていなかった。更に魔
力の影響なのか、皮膚や髪も淡く輝いているように
見える「本当どうしましょう」女房も戸惑うばかり
「私の若返り迷うわ」と弱気な声「いや、二人合わ
せないとそれも問題だ」、「そうよね。不釣り合い
が出るよね。でもデザインするのはどうかな」と心
配するので「欺瞞を使えば如何様にも変装できるか
ら」と説得する。女房の措置は、自身がイメージ維
持と魔力循環を同時にするのが、大変だったことを
踏まえ「俺が魔力循環を補助するから、身体がボコ
ボコいってもお前はイメージをしっかり保つこと、
決して途切らすな」、「途切れたらどうしよう」、
「気をしっかり持てば大丈夫」心配する女房を励ま
す。措置は午後からすることにして昼食にする。昼
食は、水餃子入り野菜スープ、オリーブオイル添え
トマトジュースにパン等の炭水化物がデフォ。食
後、俺は着ている服を見て(改変に合わせ大きめの
服を準備していたけど、これは合っていないなあ)
と思った。引篭もりの俺は、買替えが面倒くさいと
思い少し鬱陶しくなる。
トイレで肝心な処も確認し(おぉ見事じゃ悔いは
ない)とゲスイ心でほくそ笑む。十分休憩を取り気
力も充実したので「始めるよ」声を掛け予定通り実
施する。
「ベッドに寝て」俺は女房の頭に手を当て、女房
の魔力を全身に循環するよう動かす。寄生体によれ
ば、他人の魔力は扱いにくいそうだがそんな感じは
しない。俺が特別なのか。女房のイメージがしっか
り固まったようだ(おぉ、体が淡く発光し始めた)
体が徐々に薄くなりぼんやりとしか見えない。魔力
とは本当に不思議ちゃんだ。
大凡3時間が経過した頃、発光が治まり女房の姿
がはっきり見えた。俺を見て女房が固まっていた理
由が分かった(これは吃驚、女房もどこのモデルか
よって感じだ)元々はっきりした顔立ちが、細く高
くなった鼻梁でよりはっきりした顔立ちになって
る。身長は152㎝から167㎝に、胸も高く足長八頭
身は街ゆく人が皆振り返るのは間違いない。肌色や
髪も俺同様に輝いている(はぁ~これも仕方ない
な)その後、俺は寄生体に声を掛けた(ありがと
う。お陰で望む姿に若返ることができた。皆君たち
のお陰だ)、⦅いや、我々も益を受けてる。感謝の
必要はない⦆、(それでもだ)、⦅分かった感謝を
受取ろう⦆
姿見に映る自分を茫然と見ている女房に声を掛け
る「母さん、子供達はどうする」頭に?マークを浮
かべた顔をしている女房に「子供達に同じことをし
て上げたいんだが、母さんはどう思う」と聞く「子
供達はまだ若いけれど能力が上がるんだから同じよ
うにしてあげたいわ」、「そうだね。能力を上げ人
生再挑戦も可能にしてあげたいよ」、「そうね、本
当にそうなればいいわ」女房も同じ考えであるな
ら、今夜でも我々のことを知らせよう。
我々の子供は全員別居しており、遠隔地に住む2
人の息子は結婚して各々2人の孫がいる。娘は未婚
で一人暮らし。年齢も40歳になっているので若返り
は朗報だろう。我々の場合、リタイアメント生活で
あるため若返りも然程問題ではないが、子供達が行
う場合はかなり注意が必要だ。常に欺瞞を掛けなけ
ればならない。また、孫が知り合いに話さない様に
注意が必要だろう。いや闇魔法で対応できるか?孫
については、能力アップとできるなら身体デザイン
をやってあげたい。俺の我儘かも知れないが、能力
+見栄えは人生における強力アイテムだ。嫁さんの
親については要相談だな。俺としては将来を見え据
えて仲間にしたい。親族一同に対しては出し惜しみ
する積りはないが、親族でも悪意を持つ者がいない
とも限らないので注意は必要だ。
その夜、携帯を利用した4世帯参加での暴露を行
う。ただ暴露するのではなく皆が驚く演出をする。
俺達は遠くから携帯に向かってファッションショー
のモデルが歩く様に歩き始め、アップ画面になるま
で近寄った。携帯からは「ギャー」とか「なに~」
「変な人がいる」とかの悲鳴と笑い。息子の嫁さん
なんか口を開けたまま固まっている。誰かモデルで
も写っていると思ったのか。俺達はその様子に大笑
い。「今晩は。皆さん驚いて頂けましたか?」と俺
が気取った仕草で話し掛ける。声は変わってないの
だが「どちら様?」と娘の静。「おや、我が娘は父
親を忘れたのかな」と揶揄する。全員「ええ~」の
大合唱。女房が代わりに「皆吃驚した?」と聞くと
「母さん?」娘がおずおずと聞いてくる。「そう
よ」の声にまたまた「ええ~」の大合唱。もうその
後は、何を言っているのか聞き取れない程の混乱ぶ
りだ。
たっぷり20分経過後、改めて話をする「携帯で詳
しい話はできない。会って話す。今コロナ禍の最中
だが感染しても解決策がある。今年の正月は無理だ
が来年5月の連休に来てほしい」娘は「私は明後日
の土曜日に行くよ」、「そうだな。静はそれでい
い。今日のことは当面この4世帯だけにしておいて
くれ」皆は何故といった様子だったが了解してくれ
た。
2日後の土曜日、吃驚の朝7時に娘参上。玄関に
欺瞞を掛けた状態で出てみる。娘は「あれ、何時も
どおりだ」とのつぶやき。俺が「どうした」と声を
掛けると「この前の姿はどうしたの?」というので
「これか?」といって欺瞞を解く「うわ~」と思っ
たとおりの反応に大笑い。娘は涙を流しつつ「どう
したのよこれ、吃驚どころじゃないわ」と大怒りの
声「ごめんごめん。まず入りなさい」笑いながらリ
ビングに移動する。
ちょっと驚かし過ぎたので謝る。娘は俺たちの姿
を吃驚眼で見て「今が本当の姿なの?」と聞いてく
る「そうだ。さっきは欺瞞を掛け、前の姿に見える
様にしていたんだよ」、「それって魔法じゃない
の?」、「そうだよ」俺の軽い答えに娘はヒートア
ップする「なにそれ、なにそれ。大変な事じゃな
い」もう声がでかい。「俺達は見た目だけでなく本
当に若返っている。しかも単なる若返りじゃなく若
返った時の姿をデザインしているんだ」俺は少し緊
張して話し出す。娘は「ただ吃驚。どうやってそん
な力を手に入れたか分からないけど羨ましい」、
「そうか。静もこの力を使いたいか?」、「当り前
よ、その力は神にも匹敵するよ」娘が噛みつくよう
に話す「そう、だからこの力は危険だ。なので家族
以外絶対に漏らしてはいけないよ」
娘が落ち着いたので、地球外生命体に寄生され魔
素吸収ができたこと、今迄獲得した能力とその獲得
方法、今後想定されるトラブルと対応方針を説明し
た。更に、この力の今後の使い道についても少し話
し、その後、娘に魔素吸収能力の発現措置を行っ
た。娘への措置は問題なく終わり、今後トラブルを
避けるための能力獲得手順や問題、不安要素がない
か確認する。娘は「他に必要な能力がないか考えて
みるね」という。俺は「実は必要と考えた能力の中
で悪意感知が、どうやっても獲得できていないん
だ。俺が考えるに一番使い勝手がいいと思うんだ
が」というと、娘が「自分の職場が最適だと思う」
というので任せる事にした。娘は「協力者がないと
獲得が難しい能力は、ここに来て獲得するから」と
いうので、娘との距離も縮まりそうで嬉しい限りだ。
娘と会った日の週明けに「母さん、折角若返った
んだ、この姿で街に出てみないか。きっと面白い
よ」俺は、悪戯を思いついた子供の様に言った。
「う~ん。ちょっと興味あるけど怖いような気もす
る」、「大丈夫、様々な能力があるんだ。トラブル
になっても問題ないよ」、「そうね。行ってみまし
ょうか」女房も同意したので世代的に違和感が起き
ない服装で出かける。家を出る時は欺瞞で元の姿を
取るので服装も欺瞞で合わせる。
流石に住んでいる場所では問題があるので、地下
鉄で20分ほどにある東北一の人口を誇る100万都市
東仙市の中心街にやって来た。中心街に来るまでは
欺瞞を掛け駅のトイレで解く。平日の昼中なので人
が少なく、トイレへの出入りを見ている人はいな
い。二人トイレの前でお互いを確認するが服装にも
違和感はなく「君の姿は、本当に映画ロケの1コマ
のようだね」と女房に話すと「本当?貴方も似合っ
ているわよ」
少しビクつきながら二人地上に出る。繁華街はア
ーケードになっていて流石に人が多い。俺は、若い
頃歩く時にしていたように、左肘を開け女房が腕を
組易い様にする。女房がスーと腕を差し入れて来る
「久しぶりね。こんなことするの」女房が嬉しそう
な恥ずかしそうな声で話し掛ける。40年振りだろう
か二人腕を組んで歩く。もう、怖いくらいの凄い反
応だ。前から来る人は目を見開き我々を凝視してく
る。果ては周囲をキョロキョロ見回す「あれって、
多分撮影と思ってカメラ探してるんだろうな」、
「フフッほんとね」二人声を潜め話す。我々の前が
モーゼの海割りの如く開ける。擦れ違った人の中に
は後ろからついて来るのもいる。20分ほど歩き茶店
を見つけた「入ってみるか」、「ええ、二人で茶店
なんて何十年ぶりかな」女房の声が本当に若い頃の
声に戻っている。気持ちが乗っているのだろう。店
内はコロナ禍なので人は疎ら。若いウエイトレスが
注文を聞きに来るが、こちらを凝視しているのが分
かる「いらっしゃいませ。ご注文が決まりましたら
お知らせください」、俺を見てにっこり微笑む。女
房が微妙な顔をする(馬鹿、商売用のお愛想だよ)
少しすると人がドヤドヤと入ってくる。先ほどの
追っ駆けだろう。我々の席を遠巻きに座る。此方を
見ない振りをして見ているのが丸分かりだ。自分の
知っている有名人と脳内突合でもしているのだろ
う。久しぶりの茶店なのでケーキも奮発する。この
姿に合う様、多少演技しながら優雅にコーヒーを飲
む。これも良い経験、実際に行動するとこの姿のイ
ンパクトが実感できる(最近までジジイだったんだ
よ)心で嘲る。茶店を出てまた少し歩く。次の地下
鉄の駅があった。長くなると要らぬトラブルが発生
しかねない。2時間ほどだが楽しめたので帰ること
にした。地下鉄に乗る前に欺瞞を掛けるのが大変。
追っ駆けを撒くのに手こずった。無事に家に着き街
行く人の反応を思い出しニヤニヤしてしまう。よく
見ると女房も同じ顔をしている。今夜、娘に報告し
ておくか。