魔素吸収能力で様々獲得します
その夜、俺の改変が終わった様だ。更に、魔素の
活用法が脳にインストールされた如く理解できた。
女房に対する必要な措置も理解できた。寄生体は約
束を守った様で安心する。ただ、不思議なことに寄
生体の説明になかった、大気中にある魔素が見える
ようになった。、このことを寄生体に確認したら彼
らに魔素は見えないらしい。魔素は、淡く透ける微
細な光の粒として見える。意識を集中しないと見え
ないので通常視野は邪魔されない。昨日できなかっ
た操作だが、脳の熱さは魔素ではなく、魔素によっ
て脳が改変された何かであるらしい。魔素は脳の部
分に蓄積される様だ。ほんの少しだが蓄積された魔
素を動かすことができた。昨日と同じくらいの時間
を要したが。
魔力と魔素については、ラノベに則り体内等にあ
るのが魔力、大気中にあるものを魔素と呼ぶことに
する(さて、自分達はこれからどう生きればいい?
魔素を活用すれば望むことが実現できるのだ。な
ら、もう平々凡々と生きる気はないし、生きること
も叶わないだろう)そう思うと少し悲しいが逆に溢
れんばかりの希望が湧き起こる。俺は、今まで力な
く弱者に甘んじ、年老いて不平不満を口にするだけ
であった。だが、この能力を使えば日がな一日罵声
を発するだけであった事柄が、自分の思い通りにす
ることが出来る(強者が何時迄も強者でいられない
世界、過去の遺産が必ずしも強者でいられる条件に
ならない、そんな世界だって可能なのだ。堕ちた強
者が弱者の痛みに涙し、強者とは如何に傲慢で、許
し難い存在であったかを知らしめる事が出来る、そ
んな世界を創ってみたい)と心から思うのだった。
そのためにも、今後、世間一般の常識では考えら
れない事態が、当然の如く起こるものと考え、それ
に対処できる能力・財力、更には権力を得る必要が
あるのだ。能力については、当面危険を避けるため
(悪意察知・危険察知・気配察知・欺瞞・隠蔽か隠
密が最低必要か)更に攻撃を受けても逃げたり躱し
たりできる能力として(加速・知力強化・体力強化
・精神力強化などが妥当かな)と、ラノベ知識から
思うのだった。財力は説明の必要がない(何を置い
ても、最初にすべきことは健康チェックだ。年齢が
年齢なので注意が必要。折角の能力を使わずに終わ
ったら悔しくて泣いちゃうよ)
早速、ベットに寝て魔力を身体全体に循環し、流
れに滞りがないかチェックしていく。この使い方も
脳にインストールされたように自然と理解できた。
これによる魔力の消費はない。チェックしていると
(右腎臓に滞りがあるな前立腺もだ)ここは、不具
合のある部分の細胞を、若々しく健康な細胞に入替
えるイメージで魔力を強く浸透させる。1か所30分
もすると魔力の流れがスムーズになる。健康になっ
た証拠だ。最後に体全部の軟骨を、若い頃の様に厚
みのあるしっかりとした形にイメージする。これに
は1時間以上掛かったが成功したようだ。背筋がピ
ッと伸びアンチエイジングをしなくても若返った感
じだ(おぉ、自然にスッキリ立っている。感動する
な~)外見に変化が生じる措置は、不要なトラブル
を避けるため必要な能力を獲得するまで実施しない
心算だ。女房の呼び声で階下に降りる「あれ、父さ
んなんかした?」、(おっと、流石古神様俺の変化
に気づいたか)、「ちょっとね。食後に話すよ」、
「そう、じゃあ食べましょう」いつもどおりの食
事。家の朝は洋食で、パンは山切りを半分ずつ、
それにキャベツと卵の炒めたものにハム、カボチャ
スープ、牛乳にジャム付きヨーグルトが定番。
食事と後片づけが終わり、女房に一昨日からの出
来事を説明する。さすがの女房も非常に驚いたよう
だ「それで本当に問題ないの?」珍しく心配声で聞
いて来る「大丈夫、逆に健康になったよ。母さんも
変化に気付いたでしょ。それで母さんも同じにして
上げたいがどうかな」今は俺を惚け老人扱いして来
る女房だが、惚れた女房だ若く健康にして上げたい
「少し不安だけど健康で若くなれるならお願いする
かな」と前向きな返事「それじゃあ早速始めるよ。
たぶん、途中で脳が熱くなると思うけど問題ないか
らね」、「わかった」魔素吸収能力は、魔力を体内
に流し込むことで高い確率で発現する。俺は、自身
の経験から脳に直接流し込むのが一番確実で、寄生
体も持っていない能力の発現も有ると思っている。
「母さん、ベットに寝てくれ」俺は女房の頭に手
を置き、脳を意識して少しずつ魔力を流し込む。こ
れも寄生体がくれた知識だ。5分ほどしても女房に
変化は見られない(失敗なのか)少し心配になる。
10分ほど過ぎると、女房が「ウッ」といって弛緩し
た。気を失った様だ。暫くして目を覚ました「どう
だった」と聞くと「頭が突然熱くなった」という
「頭が沸騰するほどじゃあなかったか」、「それほ
どじゃあないわ」との返事。これは多分魔力の注入
量の違いだと思う。
時間を空け、女房が落ち着いたところで魔力循環
による健康チェックと対処方法、軟骨の適正化を説
明する。夕食後「母さん、そろそろ始めてみたらど
うだ?」、「出来るかな?」、「大丈夫、俺が出来
たんだ。まずは魔力を感じることだ。脳にあるから
集中してみて」暫くして「魔力分かった」嬉しそう
な声「それじゃあ次だ。その魔力をグルグル回して
みて。それが出来たら回す動きをどんどん大きくし
て体全体に回すイメージで」まだ魔力が少ないので
時間は掛かったが無事に健康チェックを終えた。女
房は歯や骨に問題があった。出産の影響だろ「お父
さん、顔の目尻とか口元少し弄っちゃダメかな?」
と言ってくる迫力が凄い「ん~ちょっとだぞ」、
「ありがとう」嬉しそうな声。結局、女房は、顔の
細胞の一部も若返りを行った(あんな圧力、断れね
って)俺の方針に沿わないので不本意だが仕方ない
(はぁ~)俺は、女房の異常に喜ぶ姿を見ると嬉し
いやら不安やらで落ち着かない「母さん喜ぶのはい
いけど、このことは当分秘密にしないといけない
よ」、「解ってます。そんな馬鹿じゃないわ」、
(いや、お前の様子が怪しいから言ってるんだがな
~)女房の賢さは知っているが、若返るということ
が女にとって如何に嬉しいことであるか分かるの
で、何時まで秘密にできるか心配になる。
女房の様子から、これは急ぎ能力を獲得する必要
があると思い直す。初めにすることは脳強化だ。何
事を成すにも優秀な頭脳が有れば、効率よくかつ最
大効果を発揮することは自明の理だ。俺は、脳全体
に魔力を強く回しながら、ニューロンを太く強靭
に、かつ情報伝達のスピードがより速く、光の速さ
で伝わるパソコンのCG画面をイメージする。記憶分
野には大容量の情報を、一瞬で記憶・整理できる様
にイメージする。感情を司る分野には、まず静寂な
湖をイメージする。次に、その湖面に石が落ちるが
湖面は一切揺るがないイメージ、火炎に包まれ熱い
頭が、一瞬にして氷に包まれ元に戻るイメージで強
化を図った。これらも、全て過去に見たCG画面をイ
メージとした。
脳は、その機能の複雑さ、いまだ解明されていな
い機能部分があるため強化には時間が係るし、無暗
に強化できない部分もある。寄生体によれば、強化
は何度でもできるので、多くの部分は具体的なイメ
ージでなく、効率的で速く強く機能を発揮するよう
イメージし、それでも十分に強化されたと感じた。
次は、権力者、反社会的勢力、その他害意ある者
からの防衛手段である。我々の持つ能力、これから
獲得する能力は、今迄人類が獲得したどんな能力よ
り優れた夢の様な能力だ。この能力を欲しない人は
いないであろう。特に、権力者や反社会的勢力にと
っては垂涎のものだ。彼らは、この能力を手に入れ
る為ならどんな事でも実行し、手段を択ばないであ
ろう。そのような輩から身を守るため、悪意を持っ
て接近して来る輩の判別、危害を加えようとする輩
の察知、何をしたか分からない防衛方法、実際の暴
力に対し危険なく対処できる戦闘力が必要だ。以前
にラノベ知識から考えた、悪意察知・危険察知・気
配察知・欺瞞・隠蔽か隠密、加速・知力強化・体力
強化・精神力強化が、これらの目的にあった能力だ
と思える。
能力は、魔力を身体に循環しながらその能力の具
体的なイメージや行動をすることで獲得できる。だ
が、悪意察知はかなり難しい能力なのか、イメージ
や方法が誤っているのか獲得に至っていない。しか
し、思わぬ副産物があった。能力獲得のため様々な
行動を一緒にすることで夫婦仲が少し改善した。
(これで当たりが弱くなるといいな)
危険察知は、突然頭上から水を落したり、不意に
ドアを開け(当たる)とハラハラさせたりとか、酷
い怪我を負わないよう注意しながら様々な工夫を行
い、1週間掛けて獲得した。この時の不意を衝く行
動は、悪意とは判定されない様だ。気配察知はかく
れんぼをして獲得する。鬼から逃げる方は懸命に気
配がない見えないと念じ、空気に溶け込む様子をイ
メージして隠れた。鬼は当然何処に隠れているか目
を瞑り人を感じるようイメージする。この結果、1
週間で気配察知と隠密を獲得した。このかくれんぼ
をすると言ったら、女房が「子供じゃないんだか
ら」と言って嫌がるのを説得するのに時間を喰っ
た。最後は「馬鹿みたい」と言われたけど。欺瞞
は、鏡に映る自分を(俺は翔子、俺は翔子)と心で
強く念じ、相手の姿になるようイメージして獲得し
た。これは心が疲れる。隠蔽は、紙に文字を掻き
(真っ白な紙、真っ白な紙)とイメージしたり、鏡
に映る自分の姿を(何も映ってない鏡)とイメージ
して獲得した。これらは2週間掛かった。加速と体
力強化は運動能力が向上しているとイメージしつつ
ダッシュや持久走、ダンベル体操をすることで獲得
した。精神力強化は先に獲得している。
反社会的勢力に対しては、時に武力が必要となる
場合がある。俺は庭で木刀の素振り、ネット動画の
武術太極拳を参考にした練習に取組んだ。ついでに
石投げによる投擲の獲得も狙った。武術太極拳は、
まず入門編として簡化24式太極拳の型を覚える。通
し3回で覚えた。ゆっくり動くのだが力を抜く時、
力を入れる時が自然と分かる。弓歩
の姿勢は、次に繰り出す動作に強い力を伝える溜め
を作る理想的な姿勢だが、日常ではこんな姿勢なん
て取ることはない。雲手の身体中
心に来る攻撃を外にはじく動きも、弓歩からの力を
使うことで驚くほどの効果が出る。取組みから3カ
月程するとその道の練達者と思える程上達した。体
の切れが段違いだ。脳強化、運動能力強化や体力強
化を終えているので上達が早いのだと思う。女房は
延々と石投げをする俺を、不思議そうな可哀そうな
人を見る目で見ていた(俺の努力が分からないか)
分かる訳ないな。
最後に準備するものは魔力の変換能力、所謂魔法
である。現代社会では、特に闇魔法が最も有効な手
段になると思っている。これもラノベ知識になる
が、スリープ、パラライズ、幻覚や混乱はその効果
から脳に直接作用する魔法と分かる。この魔法の利
点は第三者に悟られ難いことから使用制限が緩い。
そういった意味では魅了も同じだ。この獲得には特
に安全を期して行った。スリープは、女房に向け魔
力を放射しながら(俺は森の魔女か)と思いつつも
(眠れ、眠れ)と暗示を掛けてるイメージ。パララ
イズは同じく(動けない、動けない)と暗示を掛け
てるイメージ。幻覚は(テーブルに大金、大金)と
有りもしない大金が乗っかっている様なイメージを
掛けたり、女房を三面鏡の前に立たせ(自分が三
人、自分が三人)と自分が複数居るよう錯覚させる
イメージで獲得した。混乱は幻覚と同時に獲得し
た。幻覚と混乱は同じものなのか?実験してみる
と、強化された脳は暗示に掛かり難いため時間を要
した。これらの獲得方法は第三者に言えない恥ずか
しさがある(他の獲得方法があれば教えて欲しいく
らいハズイ)女房に武力と闇魔法は、直ぐには必要
になると思わないので獲得方法だけ説明した。幻覚
で大金を見た女房「父さん隠し金持ってたんじゃあ
無いでしょうね。幻覚とか言って見せびらかしたん
じゃあないの?」それって、俺に何の得がある(い
や、魔法でもお金に関する現象は絶対禁止だ。碌な
事にならん)と独り言ちる。
折角、獲得した魔法だから使ってみたい。近くに
魔物なんていないしと思っていると「ヂェーヂェ
ー」と絞殺されるような声。何時も庭に来る鳥だ名
前は知らん(よし彼奴だ)標的は決まった。目隠し
用の常緑樹の枝にいる。約15m先だ。そろりそろり
と近づいて10mで試す(スリープ)、「ヂェー、ヂ
ッヂ」首を忙しなく動かしている。更に接近8m
「ババッ」飛び立った。まったくの失敗だ「まだ習
熟度が低いんだろうな」意気消沈。そんなに簡単じ
ゃあない様だ。