いざ行かん米国へ
2022年2月、東京で面接を受けた。某お笑いタレントではなかった。卒業生って結構いるんだと感心した。面接場所に機構の人も見え、我々の姿に驚いている。会場に入る前トイレで欺瞞を解いた。面接に際しては悪意察知のほか、相手の考えを読む魔法を使った「今日はよろしくお願いします」二人挨拶をする「遠くからご苦労様です」機構の人から挨拶がある、更に「いや、二人共凄いね」の言葉。それじゃあ、能力のことか容姿なのか分からないよ。
面接者は、一ツ橋陽太32歳で大倉官僚である。彼の心証は、提出した資料に基づく能力判定や見栄えによって好感度100%状態「君たちの面接を引受けて良かったよ。この様な素晴らしい才能を持った若人に知己を得ることが出来た」と言って、即合格というものであった。もう後輩扱いである。「卒業したら是非とも大倉省に」と卒業後の勧誘までする。我々も合格は当然と思っていたが。大学へは夏学期から通学することにする。住居は仮の住まいなので借上する予定だが、2年後子供達も来るから、本拠地に相応しい物件であれば即時購入も考える。出発は4月末で観光も兼ね楽しもう。
3月末、正式に合格通知が届き、これからは出発するまでに必要なアリバイ作りや契約手続きをする。電機は太陽光発電による売電契約があるので維持するが、水道、TV契約は解除、車は売却契約を結ぶ。郵便は娘の住所に転送とした。4月中旬には近所の親しくしている家族に、当分の間留守宅にすること、その間の管理は依頼しており時々娘が様子見に来る旨を伝える。
4月29日、俺と女房は羽田からボストンローガン空港への飛行機に乗った。デトロイト経由、14時間の長旅なのでファーストクラスを利用する。締めて340万円超は高いが不労所得があるから気にしない。出国は若い姿であったので注目され大変だった。搭乗手続きではやけに愛想が良いアメリカ人女性に捉まり、出発ロビーでは日本人以外の人から滅茶滅茶話しかけられた。
「旅行なのかいボストンは安全でいい所だよ」、「どこに泊まるの、市内を案内してあげるわ」、「フレンドにならない?」等々、姦しい。日本人は遠巻きスタイルだね。当然だが悪意察知、危険察知にも反応がない。以前、東仙市繁華街でも経験したが、これほど見栄えが人の好意に影響するという事例である。国際社会においても変わらないことが確認できたのは、我々にとって大きな安心材料となり喜ばしいことだ。
今回は、入学準備の為なので欺瞞を掛けないで行動するので、当然書類も合わせた物にしている。入国ビザも大学受験・入学でなければ滞在期限が短くなる。不動産契約時には欺瞞が必要になるか。到着は正午。到着ゲートでも大歓迎。身体検査のお触りちょっと長くない?背筋に悪寒が。無事入国し、気を取直して空港内でゆっくり食事をする。やたらウインクが多いが、これもサービス?
空港からハイーバード大学までは、タクシーで15分程。公共交通機関でも30分掛からない「母さん、観光客気分で7日間リンクパスを利用しよう」、「いいわよ。使い勝手はいいんでしょ?」、「市内移動に便利だよ」と説明する。宿泊は贅沢に、ボストンダウンタウンにある5つ星ホテルのボストンハーベーである「チェックインに早いから近場にある旧マサチューセッツ州会議事堂を見学しよう」と歩いて移動する。
時間があるので、赤いレンガの線が入ったフリーダムトレイルを目的地まで散策する。二人腕を組んで歩くと、ここでも映画ロケだと思うのか、観光客らしい人が怪しげな挙動をする。すっかり慣れた我々はクスクス笑いながら景色を楽しむ。
十分に散策や見学を楽しみチェックインする。「凄いホテルね~嬉しいわ」女房の楽し気な声。ま、今まではこんな贅沢させてやったことないしね。これも不労所得様々。カウンターのダンディおじ様の笑顔に送られ、宿泊階に進む。セレブ仕様で在っても強化された精神には蚊に刺された程も気にならない。過去の自分達ならオドオドしっぱなしだろう。室内も豪華だ、どれほど金を掛けているんだろうかとゲスの勘繰り。
翌日、出発前に「忘れてたけど二人の時以外はケイとハルミと呼ぼう」、「フフフ、この年では当然ね」と話し合い、地下鉄グリーンラインでハイーバード大学に行く。10分程度の距離。車内は学生が多く、我々に興味深々の様でフランクに話しかけてくる。「何処から来たの、どこに行くの」、「日本よ、ハイーバード大学に行くの」と女房が告げると「大学へは観光?」、「入学手続きに行くわ」と女房が答える「ワォ、素晴らしいわ。友達になって」、彼方此方から声が上がる。正に陽気なヤンキーだ「入学したらよろしくね先輩」と返事しておく「それにしても貴方達たちの英語はネイティブ勝りね」と感心される。
その後、アドレス交換を強請られたり、二人の関係やら趣味を聞かれたりしていると目的地に着いた。仲良くなった学生達に、手続き窓口のある建物まで案内してもらったので、広いキャンパスで迷わないで済んだ。窓口で入学手続きをしたい旨説明した。また、大学と取引のあるアパートメント斡旋業者を聞いた。
通常、大学ではそのようなことは教えないが、この見栄えの効果であろう、至極簡単に教授や学生が良く利用する、オリエントコネクションズという業者を教えてくれる。ほんと感謝だな。その後、キャンパス内を観光者の如く歩いていると、まあ寄って来る寄って来る。明るい日差しの中、二人して淡く輝いているような姿だもの仕方ないか。餌を強請る鳩じゃないかと思う程集まり、親し気に話し掛けてくる。
「こんにちは。何処から来たの」先ほどと同じ様なやり取り。学生たちの好奇心をある程度満たした処で、此方から窓口で聞いたエージェントについて聞くと、女子学生が案内を買って出てくれた。その業者の近くに住んでいるとのこと「ありがとう。先に昼食御馳走するから食べた後で案内してね」女房から食事のお誘いをする「わぁ、ありがとう。じゃあ大学近くのレストランに案内するわ」キャッシー・ボルトマンというその学生がいう。
キャッシーは、2回生で主に社会科学を学んでいるとのこと。食事をしながらキャッシーが「エージェントに案内するんだけどアパートメントを借りるの?」と聞いてくる「借りる予定だけど物件次第では戸建てを購入するよ」というと「へえ~凄いわね。二人で住むの?」、「当面二人だけど後からかなりの家族が押しかけて来る」、「良く分からないわね」と笑いながらいう。そりゃそうだ。
食後、キャッシーが車で15分ほどの距離にある業者に案内してくれた。お礼を言いアドレスを交換する。紹介されたエージェントのスミス・パーガソンに此方の希望を伝える「ハイーバード大学に通うための住居を探している。賃貸を考えているが、気にいった戸建物件なら買うことも考える。当面は二人だが、日本から2家族ほどが来ても泊まれるような物件を希望している」悪意察知を使いながら反応を伺うと、軽い反応があるので女房と交代しスミスの思考を探る⦅こいつ等本当に買えるのか?賃貸で月2000ドルはするぞ⦆本当の悪意ではなく我々を疑った訳だ。それも当然だと納得し、悪意察知もまだまだ習熟度が足りないと反省する。
俺は「これは日本の銀行が発行した預金残高証明書だ。単位は円なのでドル換算では1/100となる」残高は約17億円でドル換算で1700万ドルになる。スミスは残高に驚き真剣に対応する「物件の内覧はしますか?」、「内覧を希望する。戸建ては0.8エーカー位の敷地、ベッドルームは大3~4、小4~6を希望する」、「アパートメントは?」、「アパートメントなら賃貸でベッドルームは2でいい」
打ち合わせを終え今日内覧できる建物に向かう。大学から西に車で10分ほどにある、イーストウォルタータウンの一角の戸建住宅だ。中産階級の住む地区で瀟洒な建物だったが、敷地が1/2エーカー程でベッドルームも合わせて5室と小さく、金額は60万ドルと安いが不満。なので、明日、数軒の内覧をすることになり、この日は大学近くの4つ星ホテルのザチャーチルズに泊まる。
翌日、昨日と同じ地区で2軒、隣りのウォルタータウンで2軒を内覧し、ウォルタータウンに希望以上の物件を見つけることができた。米国不動産の購入においては、買主責任が重いのでスミスの話を聞くときは、特に悪意察知と思考読み取りを使い万全を期す。同時に鑑定や透過スコープを使った結果、多少汚損や破損以外の構造的瑕疵やシロアリも見当たらなかった。
また、日本では、地震が多いため地耐力が問題となるので、敷地の中を透過スコープを使いながら鑑定も働かせていると、状態の項目に地耐力2.5と表示された。思わぬことに驚いたが、これは地耐力を意識していたこと、自宅建設時の地耐力調査資料を深く読込んでいたため、この資料との比較で表示されたのではないかと思う。
その後、スミスには、ディスクロジャーされた資料を再確認し仮契約を行う用意があること、デューデリジェンス(一定期間調査できる権利)で問題がなければ契約を完了させることも話した。今回、これ程の取引を行うのに、我々側のエージェントを用意せず、売主側エージェントの立場であるスミスだけで順調に取引が進んだことで、かなり中立的立場を取るようだ。
購入する物件は、大学から車で15分程の距離にあるウォルタータウン地区の戸建住宅で、築45年、敷地面積1エーカーでベッドルームは大4・小8。プール、テニスコート付きで金額は750万ドル。入居予定は5月20日になる。当分ホテル住まいになるので、観光をしながら成長不足のスキルを積極的に使い育てることにする。ここでは、知人に会う心配はないが違うリスクがあるので、常に危険察知、リフレクションを掛けておく。
過去、様々なスキルを獲得した経験からか、リフレクションやカウンターも工夫は必要だが簡単に獲得できていた。予定して残っているのは洗脳、記憶改竄・抹消、ステータス、時空間魔法である。アイテムボックスは壁に穴でも開けて、手を入れる練習でもすればいいのかな?異空間ってどう想像すればいいんだろうか。天文学者に講義でも受ければ何かの切っ掛けになるとか。まさか、青ダヌキの出るアニメを延々と見ればなんて落ちある?4元素魔法のうち火と土は、今必要と思わないので、まだ獲得対象としていない。
時間があり、観光に車があれば便利ということで、この州の免許を取得することにした。日本で40年以上の運転歴を持っている上、強化された身体能力を以ってすれば1日で免許を取得できた。流石に路上試験に必要な同乗者は用意できないので、ドライビングスクールの手を借りたが。
車はレンタカー、2週間の契約で保険を含め400ドル程度と安い。ボストン市内を中心に観光をした。危険察知、リフレクションを使い、動体視力も強化されているので安全安心な道行きだ。パブリックガーデンやアーノルド植物園、ヘイマーケットやクインシーマーケットなど庶民的な名所を回る。別にセレブな生活がしたい訳でない。購入した住宅に必要な品々も5月20日に届くよう手配しておく。
一度マーケットで引ったくりに遭った。俺達の左後方から足早に近づいて来た中年の男が、女房の腕に通したバッグに手を伸ばした瞬間、左前方に2m程吹き飛ばされ石畳の上に倒れた。二人共危険察知で男が近付いて来たのは知っていたが、リフレクションの効果を知るため様子を見ていた。歩く動作と手を伸ばした動作の運動量が2mの反射となった様だ。男は茫然とし何が起きたんだという顔をしている。
俺達は素知らぬ顔で悠然と前に進み、少し離れた処で我慢していた笑い声を立てる。
二人して暫く笑った後、リフレクションの効果について話し合う「結構な反射だね」、「ええ、場合によっては見ていた人は疑問を持つわ」、「ああ、これって調整できないかな?」、「やってみて頂戴」女房は人任せ「反射じゃなく結界魔法ならいいか」
5月20日、不動産の譲渡に係る手続きも無事終わり引渡しを受けた。とうとう米国での我が家を手に入れた。子供達にメールを送信する。日本との時差が14時間なので21日の8時に当たるので皆起きている。皆から「次の長期休暇は絶対行くよ」と返事「鼻息荒いなあ」、「英語大丈夫か?」、「スペイン語、フランス語もOK」と娘、頑張っているなあ「使わない部屋は締めておく、来て掃除だよ」、「ふざけんなよ」長男の怒り。
手配していたベッドやダイニングテーブルなどの家具、テレビ、洗濯機などの電化製品を運び入れ、予定の場所に設置する。台所用品やアニメティ用品などは、気に入ったものを時間を掛け、少しずつ集めるということなので本当に最小限の数だ。ライフラインの契約も終えているので本日から住める。
今日は、米国風に二人だけのホームパーティー、食事はフードデリバリーで済ます「乾杯、これからが我々家族にとって本当のスタートだね」、「ほんとね、お父さんが頑張ったから素晴らしい家が出来たわ」、「そう言って貰うと嬉しいね」、「今後ともよろしくね」、「ああ頑張るよ」豪華なシャンデリアの下でキラキラス姿の二人。傍目からはハリウッドスターの様に見えるだろう(当人同士、枯れているのはなぜ?)俺は疑問に思う(年齢に精神が引っ張られるんじゃないの。こんな若い美男美女なのに何故か燃え上がらない)心で嘆く。
心が若くなった実感がない俺は(これからは二人別々に行動し、第三者にチヤホヤされた相手に、嫉妬を妬き妬かれることで若い心を取戻すとか、それともキャンパスライフが始まれば周囲の学生の若さに感化され、自分の心の若さも自然に取り戻せるだろうか)などと真剣に考えた。姿と心の不一致は深刻な問題になりそうだ。心理学の命題にもなりそう。20歳の体に70歳の精神は人間として無理があるのだろうか。