表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/19

うおおおおお、我がクラスに女神が舞い降りたあああああ

 新学期恒例の始業式、もとい全校集会という名の校長のクソ長いお喋りを終え、教室に戻ってきた我々、生徒御一行。特に休む間もなく、ガラガラと乱暴にドアを開け、先生が教室に入ってきた。


「はーい、静かにしろー。二年C組の担任になった斑鳩真尋(いかるがまひろ)だ。一年間よろしくなー」


 ビシッと、着こなしたスーツはしっかりと凹凸が表れており、タイトスカートから出る足は黒のタイツに覆われているが、およそ女性らしくない態度や話し方、そして黒板を目一杯使って自身の名前をデカデカと書いていく。


「よーし、進級早々サボってる奴はいないなー? それともうひとつ、そこの席空いてるだろ? そこ、欠席じゃなくて転校生なんだわ」


 さらっと告げられた情報に、ワンテンポ遅れてみんなが各々リアクションを取り、一瞬でお祭り状態になる。


「男子、女子どっちかな?」

「どこから来たんだろう?」


 俺は優希ちゃんと同じクラスになれたから、最早何も必要としていないので、まじで興味がない。どうせ、向こうも俺には寄ってこんやろうし関わる予定もない。ちなみに左隣の海斗は机に突っ伏して爆睡している。


「はーい、静かになるまで紹介せんからなー」


 収まりそうにない生徒たちを制するように、先生は手を数回叩いた。


「よし、じゃあ入っていいぞ」


 先生のコールと共にドアがゆっくりと開かれ、その正体が現れた。

 男どもはゴクリと喉を鳴らして唾を飲み、女たちはざわざわとしていた。

 そして、俺はというと。


「なん……だと……」


 目が逸らせなかった。視線を外そうにも、まるで磁石のようにその転校生に吸い寄せられてしまう。モチロン好意の視線ではない、驚愕だ。

 何故なら、この転校生とは昨日、二十四時間以内に会っているのだから。


「はじめまして、今日からこの教室で皆さんとご一緒させていただく王寺遥(おうじはるか)と申します。中途半端なタイミングでの転校に戸惑いもありますが、皆さん仲良くしていただけると嬉しいです」

「「「うおおおおお、我がクラスに女神が舞い降りたあああああ」」」


 怒号の如く男たちのテンションが爆発する。


「うっそ、顔ちっさ!」

「色白でお人形さんみたいなんですけど!」

「ねえ、ねえ! 今恋人いる? 好きなタイプは?」


 最早、収拾が付かず、各々が感想や質問を浴びせかける。聖徳太子じゃなきゃ全く聞き取れんやろ。

 それにしても人違いやったか。

 よくよく見れば、メガネは掛けているし髪型だって昨日とは違って、真っすぐに下ろされている。それに名字が一目瞭然。

 そんなラノベの主人公みたいな展開が早々あってたまるかよ。ふぅ……焦ったぜ。


「みんな、ちゃんと仲良くしてやれよー。王寺の席はあの赤い髪の男の左後ろな」

「は……い」


 先生が席を指さした時に、一瞬王寺と目が合ってしまい、彼女の目が驚きの色に変わったのを見逃さなかった。


「どうした?」

「あ、いえ……なんでもないです」


 おい、嘘だよな? 今のあの反応……やっぱりアレは飛鳥遥なのか?

 冷静に考えると、メガネや髪型だけで別人とは断定できないし、名字だって芸名なんて可能性は芸能界だと珍しくないはずだ、知らんけど。

 疑心が沸々と確信へと迫ってくる。

 指定された席に向かって歩いてくる王寺、それを視線だけで追っていると、声こそ出さなかったが、口パクでこう告げてきた。


「はじめまして」


 目の前に映る笑顔は、昨日見た目が笑っていない営業スマイルそのものだった。そこでほぼ確信してしまった。

 本物だ。

この作品が良いと思ったら評価、ブックマーク、感想やレビューをしていただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ