第一話始まり
涼しい風が吹き、日は沈みかけ、すぐ横では波の音が聞こえる。
しばらく歩くと、砂浜では、小学生くらいの子供たちが、ワイワイと走り回っていた。
それを見つけ、一息つく。そして、すっと息を大きく吸い込み。
「おーい、夕飯ができたぞー」
と、和馬は、大声で叫ぶ。砂浜で走り回っていた子供達は、笑顔で和馬のところ
まで走って近寄った。
「ねぇ和馬兄ちゃん今日の夕飯は何?」
質問をしてきたのは信人という少年。元気な小学5年生だ。悲しい事に、中学生
の俺が、持久走で負けた思い出がある。本当に元気な小学生だ。
「ごめんな信人、聞いてない」
和馬は、苦笑いし、信人に謝った。信人はエーと、言い、がっくりと下を向く。
「まぁ、帰ったらわかることだし、別にいいだろ」
和馬は、信人の肩に、ポン、と手を置く。信人は、うん、と頷いた。
「そうそう、和馬お兄ちゃん、今日学校でね、すっごく面白いことがあったんだよ」
次に話しかけてきたのは凛という少女こちらもすごく明るく元気な小学4年生であ
る。自己中なのが痛いところだが・・・。
「へー、でも今はもみじに帰ろう。咲さんが待ってる」
もみじというのは養護施設の名称で、咲さんというのは、もみじの職員で、俺たちの母親の
ようなものだろうか。
ここまで言ってしまえばわかると思うが、俺達は孤児であり、血の繋がりはまったくない。
しかし、家族のように、みんなと接しているつもりだ。たぶん、みんなも・・・。