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プロローグ

 あれは特に寒い日だった。

 地元の漁港で働く男は、いつもの時間になっても一隻も船が帰ってこないことに苛立っていた。


 「チッ、あんだって遅いんだよ……」


 他の従業員も同じだった。家から持ち出した双眼鏡で水平線を見ていた一人の従業員が声を上げた。


 「あ! 一隻帰ってきました! あそこ!」


 男が指を指したところから猛スピードで帰港する船が見えた。


 「遅すぎる……ありえねぇや」


 皆口々に不満を溢した。

 その時だった。

 突然船が空に舞い上がったのだ。そして遅れてドン、という臓腑(ぞうふ)の奥底に響くような大きな音がやってくる。船は綺麗に舞い上がった。大きな、大きな旗を風になびかせて――


 その船は空中で一瞬にして木っ端微塵となった。


 「どうなってやがんだ! 何があった!」


 そしてその瓦礫の中から人が二人、空に浮いていた、否、浮いているのではない。下から突き出す細い針のようなものの先に突き刺さっているのだ。


 「海保と警察に連絡しろ!」


 大西は、全員が釘付けになっている中、一人叫んだ。その声に反応して、他の人たちもちらほらと我を取り戻す。

 しかし、何も出来ないことに変わりはない。ただ串刺しになった仲間を見つめるだけだった。


 「何があった……どういうことだよ!」


 膝をついて、目の前の現実に脳みその処理が追いつかないまま、いよいよその人型の肉塊は声を出さなかった。







 地球の人口はここ百年で140億を越えようとしていた。環境問題や紛争、食料問題に格差問題など、世界を取り巻く問題が溢れていて、AIなどは「人間は不必要だ」という回答を出したそうだ。

 しかし、2123年12月9日、日本の田舎町の漁港で起きたとある事件をきっかけに、世界は終末へと向かうことになる。

 朝方出航した船が一隻も帰港しないまま行方不明になったという。当時一隻を除く全隻が難破したという結論が出されたが、どこからも乗組員の死体どころか、船の破片すらも見つからなかったのである。

 世界がこのニュースに注目する中、アフリカの田舎町で再び怪事件が起こった。

 朝、牛乳配達員が町を訪れた時、普段なら肉の焼ける良い匂いがしているそうだが、その日はしなかったらしい。なんでも、町中の人が忽然と姿を消していたというのである。全員で夜逃げした、とも思われたが、町の外に人間の足跡は無かった。

 そうしているうちに、また一つ、また一つと怪事件が起こり始めた。

 そして事態が急変したのはイギリスを基準とする世界時間2124年3月18日、スペインとモロッコの間のジブラルタル海峡で突如巨大な蟲が現れた。蟲と言っても、想像に足るような姿形ではなく、黒い外骨格を持ち、脚の数は数えきれず、この世のものとは思えない容姿をしていた。その蟲は陸に上がると卵の殻を破るかのように外骨格を突き破り変形し、人間を襲い始めたのだ。

 しかし、この事件はここだけではない。世界のあらゆる、海に面した国で起こった。

 140億に迫っていた人間はその数を一気に減らし、分かるだけで当時80億、現在(2130年5月30日)では10億を切った。

 私はこの事件の真相を探るため、初めて事件が起こった日本に行くことにする。


 著エリック・グレイバー


 こうして奇妙な序論でまとめられた手書きの論文は、この世のどこかでその続きが書かれることを待っている。

初めましておんすいです。

お読みいただきありがとうございます!

これから物語は進んでいくわけですが、その中で面白ければぜひブクマや評価をお願いします♪また、感想を頂けると喜びます笑

それでは引き続きよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あらすじに引かれて拝見しましたー。 面白かったです!
2020/05/17 10:29 退会済み
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