セクシー吐息と低音キングの異世界初心者小説講座
なんだか最近、なんにも知らない若いコが、やたら増えた気がするのよね……え? そんなの昔から年寄りが若者に決まって言う、ジョートークだって? ちがうのよ。礼儀とか口のきき方とかじゃなくてさ――ホントになにも知らない、まるで異世界から来た迷子みたいなコたちが、シレっとフツーに暮らしてんのよ――
とある世界の国営放送で一周年を迎える教育番組が今日、七日ぶりに放送される。
……ん? 一年って、何日だっけ?
『どうも、ワタシだぁ。週の始めの日曜日、今日もこの番組のために予定空けてくれはって、おおきにぃ』
『今週も残しゅところあと六日……三点リーダーふたつ分や!』
『こぉぅるるぁタツミサトぉ、あと六日言われたら逆にサガるぅぅて何度言わすねん』
『! ……もう、シュモノトは舌巻き過ぎや。ビックリして一瞬黙ってもうたわ』
『そういうキミも溜め長いちゅうねん。ふたりでひとつのコンビプレイや、テンポよく行かんかい!』
『そんなこんなで今週もがんばらなアカン言うておりますけども』
『シュッ忘れとるるぅぁ!』
とあるリスナー夫婦の会話である。
「シュッシュブララアばっかり、なにこの番組」
「なんかな、シュタイリッシュセールのシューイチ、メオト……マンダム、だっけ? 若者に人気なんだとよ」
「マンダン? マンザイちが、――ツッコんだらアカン!――そ、それよりアナタ、若いコにずいぶんとご興味が?」
「い、いやぁ、この番組なんか気になってさぁ。オレもよく知らねえけど、七日単位でシューってコトらしいな」
「ナニそのショートサイクル、働き過ぎじゃない? それにいきなりMCが喧嘩するなんて、ふざけてんのかしら」
「最初の喧嘩のクダリは毎回、お約束だから」
「ま、毎週? ――ヤバイ、自爆や!――し、焼売なら知ってるけど……でもこの首都サウスカントランドでオーサカロライナ訛りなんて、このコらいい度胸してるわね」
「…………ぷっ! オオサカ、ロライナて!」
「何がおかし……、ウソ? アナタも異世界人なの?」
「やっぱオマエもか。ここの地名、完全にニホン人狙いに来てるよな」
とある異能力者が、その力を恐れた国王によって処刑されて以降、魔女狩りならぬ異世界人狩り政策が続くこの世界。後続の転移者たちは皆、全力で身バレを防いでいた――たとえ夫婦の間柄であっても――が、この謎過ぎる夫婦漫才講座をきっかけに異世界人バレしゅる者が最近増えておるとかおらんとか――な? 国王はん?
終っ