表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

天才と凡人

う ら ぎ り

作者: 架け橋 なな

 私は裏切った。親友である君を。



 私は君が長い間ずっと、戦っているのを知っていた。


 夢に向かい突き進む姿が、眩しかった。


 だから真似をしたんだ。


 君みたいになりたくて。



 これからは戦友だなと、君は喜んでくれた。


 頑張れよ、と応援してくれた。



 早く追い付きたくて。


 君の横に並びたくて、精一杯走った。


 そしたら、みるみるうちに評価され、天才だともてはやされて。



 私は自分に酔い、すっかり天狗になってしまっていたんだ。



 でも、ふと気付く。


 足元を転がる現実に。



 君が積み重ねてきた濃厚な時間を。


 血の滲むような努力を。


 夢にかける真っ直ぐな眼差しを。


 その命をけずり取るようにして生きる様を。



 他でもない私が、全部、否定してしまった。



 あの夜、人知れず涙を落とす君を、今でも忘れられない。



 私は君の隣に立つ資格などなかった。追いかけるべきじゃなかったんだ。


 君を泣かせるくらいなら。



──だけど後戻りは出来ない。



 もうやめる、なんて。


 君の夢を踏み潰しておいて、どうして言える?




「ありがとう。頑張るよ」



 君の苦悩と絶望を知りながら。


 お決まりの白々しい台詞を吐き続ける。



 優しい君を傷付けた分。


 空っぽの笑顔で塗り固めた嘘の分。



 きっと、重い罰を受けるだろう。




 今日も私は君を裏切った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 感想を送ったと思っていたら、反映されていなかったでござる(白目) すみません、改めて読みました! 前作と対になっているという事で、互いに相手を思いやりながらもすれ違っている様をよく描けてい…
[良い点] 改稿前後読ませていただいて。追記部分、『私』が罪を自白した時点で、ようやく『君』の隣に立つことの本来の意味を、自身はその入り口にあるのだと自覚した。そのように読みました。彼の積み重ねてきた…
2019/06/20 13:54 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ