う ら ぎ り
私は裏切った。親友である君を。
私は君が長い間ずっと、戦っているのを知っていた。
夢に向かい突き進む姿が、眩しかった。
だから真似をしたんだ。
君みたいになりたくて。
これからは戦友だなと、君は喜んでくれた。
頑張れよ、と応援してくれた。
早く追い付きたくて。
君の横に並びたくて、精一杯走った。
そしたら、みるみるうちに評価され、天才だともてはやされて。
私は自分に酔い、すっかり天狗になってしまっていたんだ。
でも、ふと気付く。
足元を転がる現実に。
君が積み重ねてきた濃厚な時間を。
血の滲むような努力を。
夢にかける真っ直ぐな眼差しを。
その命をけずり取るようにして生きる様を。
他でもない私が、全部、否定してしまった。
あの夜、人知れず涙を落とす君を、今でも忘れられない。
私は君の隣に立つ資格などなかった。追いかけるべきじゃなかったんだ。
君を泣かせるくらいなら。
──だけど後戻りは出来ない。
もうやめる、なんて。
君の夢を踏み潰しておいて、どうして言える?
「ありがとう。頑張るよ」
君の苦悩と絶望を知りながら。
お決まりの白々しい台詞を吐き続ける。
優しい君を傷付けた分。
空っぽの笑顔で塗り固めた嘘の分。
きっと、重い罰を受けるだろう。
今日も私は君を裏切った。