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転校先で甲子園を目指すことになったが、俺以外全員女子!?  作者: 朝比奈 夕夜
プロローグ「二度目のプレイボール」
1/7

「そこまでして勝ちたいのか!」

202X年、3月。

高校球児にとって聖地とも言われる甲子園で行われる「全国センバツ高校野球大会」がまさに行われている。一回戦第1試合は、開幕戦から異様な雰囲気の中試合が進み、局面は9回裏に差し掛かっていた。


打席に入っているのは、東神奈川代表、水蘭高校4番平良秀一。今日のここまでの成績、3打席全て四球。おそらくこの試合最後の打席になるであろう彼は、諦めともとれる表情でマウンドを見ていた。


奇しくも同じ都道府県同士の対戦となったこの試合は、西神奈川代表、館川学園大付属翔洋高校が2-0でリードしていた。前評判では実力は五分、中でも水蘭高校の平良は大会第1号ホームランを打つだろうと開幕戦アーチを期待されるほどのスラッガーであり、高校通算ホームラン記録を更新するのではと評されていた。


9回裏、2アウト満塁となったところで、球場全体は怒号のような歓声に包まれていた。これまで一度もバットを振らせてもらえなかった平良が、一打サヨナラの劇的な場面で打席へ向かう。三塁側から背番号18をつけた選手がマウンドへ向かい、輪の中心にいる選手へ一言、二言と言葉を告げた。


「プレイ!」

主審のコール、ほんの一瞬の静寂の後に球場全体が大ブーイングに包まれた。テレビ中継の音声が拾うほどの大きな声で、観客席からマウンドに向かって言葉が浴びせられている。

「勝負しろ!」

「そこまでして勝ちたいのか!」

キャッチャーは立ち上がり、右手を上げて大きく外すような仕草を見せている。


ーーーーー敬遠である。

通常、空いている塁を埋めることで守備側が守りやすくするために勝負を避ける戦術だが、今は全ての塁が埋まっている。かつて甲子園で同じ選手を5打席敬遠し、物議を醸したことがあった。後に敬遠された選手はプロへ進み海外で活躍するほどの大打者であったが、この話はその選手が現役を退いた今でもなお暗いエピソードとして語られている。


その前段を考えても、球場で繰り広げられている光景は異常なものであった。一点献上を覚悟で、故意的に四球を与えようとしている。


完全にヒール役となった、館川大翔洋の2年生エース。マウンド上で一度アンダーシャツの袖で額の汗を拭い、セットポジションに入った。この日投じた122球目。


この投球が、東海林翔の、野球人生最後の一球となった。


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