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王子について考えました

 まずい。非常にまずい。

 このまま、のんべんだらりと王子生活を謳歌していたら、俺は十八歳で死ぬ。

 まじ無理。


 十八歳と言ったら色々やりたいことが沢山ある盛りじゃないか!

 前世で俺がRPGツクールに没頭したのもこの世代だ。残念ながらゲーム制作に没頭しすぎて世間一般で言うベタな青春……部活に明け暮れ、恋人といちゃつき、勉学に勤しむというイベントはこなしていない。

 しかし、楽しかった。

 社会という枠組みの縛られない時間。若さ故のみなぎるやる気。少々無理のきく体。それが、十八歳という年齢に秘められた青春の力の正体だろう。三十路になった今だからこそ、そう思う。いや、死んだけど。今、八歳だけど。

 セドリクス・ラティアにはその幸せがないのだ。だって十八歳で死ぬから!

 まじ無理。


 だが、このままみすみす十八歳で死ぬ俺ではない。今、俺は八歳。ラティクロで死ぬ予定の十八歳になるまで、あと十年ある。


 死亡退場回避クエスト、開始だ!


 死亡退場を回避するために、まずはこの俺セドリクス・ラティアの人生についてよく知っておかなければならない。

 とは言っても、物語開始前に死亡退場しているキャラクターなので情報は少ない。


 セドリクス・ラティア。十八歳。

 初代国王であった勇者ラティアの生まれ変わりと言われた賢王。

 美しく輝く白銀の髪と、宝石のような青い瞳も伝承にある勇者と同じだと言われているが、彼が生まれ変わりだと言われていたのは何も見た目だけの話ではない。

 頭が良く的確で、剣の腕は超一流。絵に描いたようなイケメンなのだ。

 規格外と呼ばれる化け物クリストファー・シータを除いて、世界一の強いと言っても過言ではない。

 ちなみにクリストファーと言うのは悪逆非道の何でも屋で、金のためなら大抵のことはやる男だ。超人的に強いが、金儲けがしたいだけなので放っておいてもセドリクスの人生には影響はないだろう。


 セドリクスの主な功績は、リディア公爵家の謀反を迅速に終息させたことだろう。

 第十五代国王の治世、リディア公爵家は謀反を起こした。目的は、国王と王族の暗殺。つまり、お父様、俺、シルフェリアの暗殺だ。表向きは国王への不満が謀反の理由であったが、実はリディア公爵には魔人教団の息がかかっていた。

 魔人王を復活させ世界を破壊するためには、勇者ラティアの末裔であるラティア王家が邪魔なのだ。

 リディア公爵は、第一爵位継承権を持つ長男と一緒に城へ来ていた時に、国王暗殺を企てた。城は一時戦火に見舞われ、リディア公爵の手によって国王は暗殺された。

 そのリディア公爵も、セドリクス王子の手によって処分される。リディア公爵の長男は捕らえられ、後に処刑されることになる。リディア公爵家は爵位剥奪となり、領地は新たに設立されたレーフィア公爵家の物となる。

 この辺の話は、仲間キャラクターのアリアーネの過去が語られる際に出てくる。


 そして、十七歳の時に史上最年少国王として戴冠し、翌年に魔人教団に城を占拠されて死ぬ。

 剣の達人であったセドリクスが死んでしまった理由は、妹のシルフェリアを守ったからだ。そして地下の水路からシルフェリアを逃し生き絶えた。


 ……作中では回想イベントでしか出てこないが、意外と格好いいキャラクターだと思う。

 でも、ちょっと待って。え、このイベント俺がこなすの? 俺が剣を持って、リディア公爵を倒したりしなきゃいけないの? 人、殺すの? まじ無理。

 それに、本当に罪があるかどうかもわからない、ただいただけかもしれないリディア公爵の長男を処刑するように命令しなきゃいけないの? 責任重大すぎる。まじ無理。

 セドリクスの人生、ハードモードすぎる。死地しかない。どう考えても人生詰んでる。

 もう泣きそうなんですが。


 これは人生を覆すほどの入念な作戦が必要そうだ。形振りは構っていられない。

 俺は生まれ変わったこのセドリクス・ラティアの人生で、『Latia Chronicle』を大幅リメイクする! 目指すのは、セドリクス・ラティアが死なないストーリー……いや、誰も死なないストーリーだ!


 十八歳の高校生(かつての俺)は大切な人の死を乗り越えて強くなるシリアスストーリーが好きだったのかもしれない。しかし、三十路の社畜(前世の俺)はシリアスなんて求めていない。物語の中でくらい、全員幸せになってほしい。

 っていうか、セドリクス(今世の俺)も幸せになりたい。


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