検証しました
ここは本当にあのラティクロの世界なのだろうか?
まだ、そうだと決まったわけではない。ただちょっと国名がラティア王国で、妹がシルフェリアなだけだ。俺がヒロインの兄、死んでしまう国王だと決まったわけではない。まだ慌てる時じゃない。ほら、俺王子だし。国王じゃないし。……例え、王子とは後々国王になる存在だとしても。
真相を確かめるべく、俺はこの世界とラティクロの世界を比較して検証してみることにした。
そのためには、まずラティクロについて詳しく思い出さなければならない。
俺はまず、ラティクロのあらすじや設定などの詳細を紙に書き出すことにした。くそっ、前世の高校時代に使っていたネタ帳さえここにあれば!
嘆いていても仕方がない。ラティクロは元々、俺が作ったゲームだ。誰よりもこのゲームについてよく知っているのは、俺だ。思い出せないはずがない。
『Latia Chronicle』は、RPGツクール2000で作ったフリーゲームだ。
物語の舞台は、ラティア王国。
剣と魔法の世界で、ほとんどの人間が魔法を使える。主人公たちは武器を取り、様々な魔法を駆使して戦う。
魔法は大きく分けて、三種類に分類されている。
黒魔法は、主に攻撃系の魔法。火、水、土、風、雷、光、闇の七種類の属性の魔法が存在するが、ほとんどの人間が扱える属性は火、水、土、風、雷の五種類。光と闇は、一部の人間にしか扱うことのできない高度な魔法だ。
白魔法は、癒し系の魔法。HPの回復、状態異常の回復、蘇生などができる。
赤魔法は、補助魔法だ。移動魔法や、強化魔法、結界、状態異常の付与などが該当する。地味に見えるが、極めるととても便利な魔法だ。
ラティア王国の特徴的な歴史背景は、勇者が建国した国だということだろう。
かつて世界を破滅に導いた魔王を打ち倒した勇者ラティアが、破壊された世界を復興するために築いた国。世界は一つの国となり、勇者ラティアの子孫たちの手によって守られてきた。
ラティア王国は王都を中心に、バレンナ公爵領、オズワルド公爵領、レーフィア公爵領、リガーナ公爵領の四つの領地に分かれて統治されている。四つの公爵家は四大公爵家と呼ばれている。
物語の舞台となるのは、第十六代国王の治世。
ラティア王国は、その時未曾有の危機に瀕していた。古に封印された魔人王を復活させようとしている、魔人教団が暗躍しているのだ。
魔人とは闇から生まれた理性を持たない怪物で、黒い影のような形をしている。言葉は通じず、全てを破壊し尽くすだけの存在。中でも最高の力を持っているのが魔人王だ。
古の戦士たちは魔人王と戦ったが勝てず、何人もの魔法使いたちの手によって魔人王は封印された。
魔人教団はそれを復活させ、世界を滅ぼそうとしている。
ラティア王城は魔人教団に占拠され、国王は死んでしまう。
国王の妹であり、今作のヒロインである姫シルフェリアは、城からなんとか逃げ出すが瀕死の状態で主人公に発見される。
主人公の介抱でシルフェリアは回復し、二人は魔人教団から国を、世界を救うために旅をする。
仲間キャラクターは全部で五人。
主人公、アルードラ・ネロ。作中では十八歳。
黒髪に赤い瞳。
無口で一見何を考えているかわからないが、根は素直で思ったことがすぐに行動に出てしまう本能的な男。
元々は彼の伯父であるクリストファー・シータが拾ってきた子供で、クリストファーの双子の弟であるロビンソンとその妻の養子になった。
正体は魔人だ。元々は従来の魔人と同じように理性のない破壊者だったが、クリストファーが殴って躾けたのでなんとか人の形を成し、人としての生活が送れている。
武器タイプは力技でなんとかするタイプ。一応剣や斧、槍、棍棒など様々な武器が扱えるが、そのほとんどは力技で振り回しているだけ。弓などの遠距離攻撃は、できない。
魔法は、赤魔法が得意だ。なんでも力技で解決する割に技巧的な赤魔法を覚えるのは、かなり意外だけど。
ヒロイン、シルフェリア・ラティア。
ラティア王国王女。第十六代国王セドリクス・ラティアの妹。十六歳。
青みがかった長い銀髪に、青い瞳。
両親、兄を亡くしており、ラティア王家の最後の生き残りである。責任感が強く、国のために自分が魔人教団をなんとかしなければならないと思っている。
武器タイプは、一応弓だがあまり火力はない。魔法での補助がメインだ。
魔法は白魔法が得意で、パーティーの回復役。重要な役回りである。
公爵家の子息、エリック・バレンナ。十八歳。
外ハネの癖がある金髪に青い瞳。
シルフェリアの父の古い友人であるジェームズ・バレンナ公爵の息子。シルフェリアと直接の交流はないが、公爵家の一員として、父の友人の息子としてシルフェリアの助けになりたいと思い一緒に戦ってくれる。
武器タイプは、槍。アルを除いた中では一番攻撃力が高くアタッカーの役割を務める。
魔法は、雷属性の黒魔法をメインに習得するが、白魔法も一部習得する。バランスがいい。
ユリシス・クライス。八歳。
青い髪に、青い瞳。
魔人の研究者であったアンジェリーナ・ユリスの孫。父親は魔人と人間のハーフで、研究に取り憑かれたアンジェリーナに虐待された。ユリシスもまた同様の扱いを受けてきており、アンジェリーナを魔女と呼んでいる。突然「魔女を殺す運動!」と言って準備運動がてら強力な黒魔法をぶっ放つことがある危険人物だ。
魔人について詳しく、その知識をアルとシルフェリアの旅に活用するために仲間になる。
武器での攻撃はほとんど威力がなく、能力値強化系の杖などの武器を装備させるのが主流のキャラクターだ。
その代わり、魔法の威力は桁外れ。水魔法を中心に、他属性の黒魔法も多少覚える。
アリアーネ・リディア。十八歳。
銀髪に青い瞳。
シルフェリアの父が亡くなった内乱で謀反を起こしたリディア公爵家の娘。リディア公爵とは、元々は四大公爵家の一つであったが謀反と共に爵位が剥奪され、リディア公爵家に代わってレーフィア公爵家が誕生した。
謀反を起こした父は仕方がないかもしれないが、兄まで殺すことはなかったと思い、ラティア王家を憎んでいる。
魔人教団に入団してラティア王家への復讐を誓い、最後の生き残りであるシルフェリアの命を狙って何度も戦いを挑んでくる。その度に負けて逃げ帰っていくという……なんというか、お茶目な敵キャラだ。
何度か戦う中で彼女の中に葛藤が生まれ、改心して魔人教団を抜けてアルたちの仲間になる。
武器タイプは、剣。男性陣ほど攻撃力はないが、素早さと会心率が高い。使いやすいキャラクターだと思う。
魔法は火属性の黒魔法を習得する。
この五人で旅をして、世界各地を巡り、神や精霊の加護も受けつつ、病で倒れてしまったシルフェリアの治療をしたり、ユリシスやアリアーネの過去と決着をつけたり、アルとシルフェリアの恋物語を挟んだり、魔人の秘密に迫ったりしながら、最終的に魔人教団を倒してハッピーエンドになる。
しかし、当然だがそこにセドリクス・ラティアの姿はない。だって最初のイベントで死んでるから。
願わくば、ラティクロのセドリクス・ラティアと、俺ことセドリクス・ラティアが全くの別人でありますように。
しかし、書き出した設定と現実を照らし合わせた結果、俺は認めざるを得なかった。
勇者ラティアの存在……一致。
国の歴史……一致。
四大公爵家の名前……一致。
父親……第十五代国王。
父親とバレンナ公爵……古い親友。
バレンナ公爵の息子……エリック。
リディア公爵の娘……アリアーネ。
ダメだ、終わった。認めるしかない。
この世界は、ラティクロの世界。最初のイベントで死ぬ国王は、この俺セドリクス・ラティアであると……。