1/7
不幸体質な悪役
綺麗にすることは、穢れを祓うことで。
穢れを祓うことは、其のものの力を最大限に生かすことに繋がる。
「だから、頑張って綺麗にしてよ」
上から目線に言っているのは、妖弧と呼ばれる類の妖かし。
名を、久遠という。
山奥の夜のような漆黒の髪と、暗闇で光る金色の瞳を持つ久遠は先月、突然あたしの目の前に現れた。
「梅子、旅に出るんだろう? 俺も行くよ」
あたしの考えと真意を、当たり前のように理解していて、なぜか一緒に行くと言い張る久遠が妙であり、自然であった。
妖狐なんて、馬鹿みたいな架空の存在と一緒に旅をするなんて、つい昨日までは想像すらしていなかった。
しかし、乙女ゲームのストーリーが始まる、たった今。
ここに居てはいけない、とはっきりとわかっていた。