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4.初めての街

 村の近くを探索したりしながら、三日間のんびり過ごした後。俺は、とりあえず一番近くの街に向けて出発することにした。


「もうお別れなのね。ずっといてくれていいのに……」


「すまん、ミサト。また戻ってくるからさ」


 滞在中にだいぶ打ち解けた宿の女将にお別れを言い、道具屋の親娘にも見送られながら、俺は西に向かった。

 ちなみに、娘さんから餞別としてちょうどいい剣の鞘をもらっている。これは地味に助かるね。


 道中、モンスターが襲ってくることはそんなになかった。というのも、村にいた間に魔剣にもいい感じに慣れてきて、なんだか変な技みたいなものをいくつか使えるようになったからである。

 今で言えば、殺気を振りまくことで敵を近寄らせないようにできる。この技はそのまま「殺気」と呼ぶことにした。


【イヌイは 殺気 を身に付けた!】


 そんな中で襲ってきたのは、これまでよりはるかに強いモンスターだった。

 見た目的には人に近く、しかし頭には角が生えて筋肉隆々の巨体を誇るという、よく鬼とかオーガとか呼ばれるようなアブないやつらだ。

 言葉を話せるほどではないが結構頭もよく、棍棒とかの道具も使えるので、ウサギとかクマとかの獣を相手にするのとは違う戦い方をしなきゃいけなかった。


【イヌイは 剣の理(対人) を身に付けた!】


 ま、そもそも剣術というのはそんな人型の相手にこそ生きるものなので、特に問題はない。それどころか、この経験で俺の方が結構メキメキ腕が上がった気がする。


 ちなみに、こいつらを倒して手に入ったのは角だったり心臓だったりと、魔石以外はまちまちだった。心臓の方になることはかなり少なかったので、レア素材ってやつかな。


 そうして旅を続けていくと、夜になる前にどうにか街まで辿り着けた。門の前に出来ている列に並んで、順番を待つ。


「次! 身分証は?」


「ないんですけど、お金でいいですか?」


 俺はそう言って金貨を差し出す。

 村にいる間に、身分証の代わりにお金を収めればいいってことを聞いてあったのだ。


「では通れ! 次!」


 金貨一枚というのは結構な額のようだが、つまり身分の証明にはかなりの価値があるということだな。

 よし、この街では身分証を手に入れることにしよう!


 街の通りをぶらついていくと、色々な店があった。道具屋、武具屋、鍛冶屋、屋台や食事処、もちろん宿屋もいくつか……

 面白いところだと、道場的な建物がいくつもあって目立っていた。あとで覗いてみよっと。


「こんにちは、泊まれます?」


 よさげな宿を見つけてカウンターで聞いてみると、これまでいた村よりかなり高めで、一泊素泊まり銅貨二十枚(!)。

 宿自体は気に入ったので、飯はいろんなものを食いたいからなしにして、三日分部屋を取ってもらう。

 ここでは金貨でも支払いができたので、支払い関係も解決だ。

 さてさて、腰を落ち着けるところができたところで、まずは飯! 村での飯もよかったが、いかんせん地味でパターンもそんなにはなかったのは否めない。しかし、この街ならば!

 先ほど見かけた屋台で肉串やポテトフライみたいなのを買い、飲み物は果物ジュースに決めた。

 みんなその辺の木の下とかに座って食べているので、真似して早速がっついてみる。


「うま! 異世界グルメ、やるじゃん!」


 味付けは意外と濃いめで、異世界風というか知らない味だけど、醤油と中濃ソースの中間みたいな……なんだろ、なんとなく馴染みがあってイケる!

 果物ジュースも、いくつかの種類の酸味と甘みと香りが一体になっていて、ぶっちゃけミックスジュースそのまんまな味だ。でも目の前で絞ってくれていたから、抜群に新鮮。これ以上のものはないって感じ。

 屋台でこんなレベル高いなら、ちゃんとした飯屋なら相当期待できるんでは?

 まだまだ制覇していないので明日の朝は屋台で食べて、夜こそガッツリお店に行ってみようと決めるのだった。


 ***


 翌日。ぐっすり眠れて旅の疲れもすっかり取れ、朝食は予定通り屋台でベトナムフォーみたいな麺入りスープ食べる。これもやっぱりうまい!

 それから、昨日気になっていた道場みたいな所に行ってみることにした。

 いくつもあったんだが、どうも槍とか剣とか、それぞれの武器の使い方を教えているみたいだ。

 俺が持ってるのは剣だから、まずは剣を教えてもらおうかな。


「たのもー、は違うか。すみませーん」


 入っていいのか分からないので、門の所から呼びかけてみる。すると、やたら人相の悪い獣人の男が奥から出てきた。

 何の動物かはよく分からん。鼠のような猫のような……この世界独自のやつかな?


「入門希望の者か。剣はあるようだが、経験者か?」


 ジロッとこっちの全身を見てくるそいつの目が、なんだか値踏みしているようで嫌な感じだ。つうか、多分そうなんだろう。


「はい、素人なもんで、剣の使い方を教えてもらえたらって。ここはそういう所なんですかね?」


 そう言うと、男は一気に不機嫌そうな態度を隠さなくなった。


「当たり前だろう。この名高き赤剛石流を知らんで来たのか? 無礼な奴め……いいだろう、一手つけてやる。来い!」


 お、なんか道場破りみたいな感じになってない? まあ、お手並み拝見てことで、お邪魔しますかね。

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