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16.新たなる旅立ち

 なんやかんやあって地下から地上に出ると、外は朝日が昇るところだった。

 そういや、ジョセフは置いてきぼりにしちゃったけど、どうなったかな? まぁ、助ける義理もないから放っておこう。アビも何も言わないし。


「幽霊なのに日の光を浴びて大丈夫なの?」


「うん、全然問題ないよ」


 この世界の幽霊は、俺が知ってるのとちょっと違うのかな。てか、元の世界で幽霊に会ったことないけど。

 迷宮の管理人に幽霊といるところを見つかると面倒かもと思ったので、うまいこと気を逸らしておいて迷宮から離れる。

 そうして街へと戻る道中、こっちの事情やこれからのことなどを、幽霊少女ーーマナに話しておく。


「へー、ユーエスエイってまだあるのね。私が生きてた頃から大きな国だったわ。行ったことはないけど」


  色々話した感じ、マナが生きていたのは数百年前っぽかった。今と当時との違いに驚いたり喜んだり懐かしんだり、事あるごとに興味深そうに反応する。


「--それで、この石碑を手に入れたからには、一刻も早くユーエスエイに戻りたいと思っています。故国で苦しんでいる民草を一刻も早く救わなきゃ」


「それなら、いい方法があるかも。まだ残ってるといいんだけど……」


 マナは、そんなアビの切実な気持ちに応えられるかもしれない、何かを知っているらしい。


「えーと、確かあっちの方だったはず」


 そう言ってふらふわ浮かんでいるマナについていくと、迷宮と街の間にある森に入った。かなり古い森らしく、奥の方に行くほど、樹齢何百年という感じの古い木がいっぱいある。


「あった! ここよ」


 やがてマナが指差したのは、岩壁に空いた洞穴だった。中は暗くてよく見えないが、涼しい空気が流れていて安全そうだ。


「この様子なら、アレはまだ無事に残ってそうね。大丈夫よ、そんなに深くないわ」


 ぐんぐん奥に行くマナの後を追うと、すぐ行き止まりの空間に辿り着いた。そこで、マナは何事か呪文を唱える。


「アーブラカータブラ!」


 すると、ドドドドっと岩の壁が動いて、なんと金銀財宝で埋まった秘密の小部屋が現れたではないか。

 すげー、おとぎ話に出てくるような憧れのやつじゃん。


「ここは昔、この辺りを治めていた王の隠し財産を置いた場所なの。あの迷宮に閉じ込められている間にいろんなことを見聞きしたのだけど、ここの噂は本当だったようね。

だとしたら……あった! きっとこれよ!」


 マナが奥の方で見つけてきたのは、一隻の小舟だった。これ、何よ?


「見てて! もう、すんごいんだから!」


 はしゃぎまくるマナが、アビを引っ張っていってその小舟に乗せる。すると、なんと小舟は宙に浮いて自在に飛び始めた。スピードも結構出るらしい。

 そっか、これ、アーティファクトか。


「わわわ、すご、すごいですねこの舟! これならすぐ海を渡れます!」


「でしょ! まだ残っててよかったね!」


 三人乗っても余裕で大丈夫なサイズだし、こりゃ助かる。マナを仲間にして早速いいことがあったな。


【イヌイは 魔宝(アーティファクト)・アメノイワフネ を手に入れた】


 その他の財宝も手当たり次第俺のアイテムボックスに収納し、洞窟を出た。

 試運転がてら、街の近くまでアメノイワフネに乗って飛んでいき、一旦降りてアイテムボックスにしまってから街に入る。こんな珍しい物、人に見られたら噂が立っちゃうし。

 あと、さっきの洞窟で手に入れた指環がまた便利なアイテムで、指環の中に部屋があり、そこに自由に出入りできるというものだった。いわば持ち運びできるワンルームマンション、って感じだ。

 幽霊少女には基本、街中に滞在中はそこにいてもらうことにする。


「ワウラの街で過ごすのも今日で最後か。マキノにも挨拶いていこっと」


 思い返せば、色々いい経験を積ませてもらった思い出深い街だ。離れるのは少し寂しいが、次に行く街だっていい所かもしれない。自由な旅を楽しもう。


 ***


 翌日。宿でぐっすり休んだおかげで体調はバッチリ。装備も整えて、準備万端、レッツらゴーてなもんだ。


「南にあるマヨコハの街の港から海に出ましょう。二、三日で着くはずよ」


 というアビの提案に従って、街から出たらアメノイワフネでぐんぐん南下。おかげで、二、三日どころか半日とかからずマヨコハに着いた。

 マヨコハはワウラより栄えていて、街並みもオシャレな感じだ。海が近いせいか、全体的に青がイメージカラーになってる気がする。


「とりあえず今日の宿を探しましょう。そして明日早朝、出発です」


 アビの意見には特に反対意見もなく、街を歩くと良さげな宿がすぐに見つかった。

 さて、晩飯までまだ少しある。俺はさっき見かけた道場に行ってみようかな。

 諸々手続きを済ませに行くというアビに指環の中にいるマナを預け、俺は一人で出かけた。


「頼もー、なんちゃって」


「おう、いかがいたした? 入門希望か?」


 俺も前の同じ轍は踏まない。ワウラを発つ時にマキノがくれた紹介状を見せて、和やかな感じで取りいることに成功。しかも、この紹介状が思った以上に効いたらしく、親切にもいくつか技を教えてもらえた。


【イヌイは 秘術・遠天打ち を身に付けた】


【イヌイは 秘術・単身突破 を身に付けた】


 それぞれ、ここの道場に代々伝わる遠距離攻撃と短距離攻撃の奥義だそうだ。

 そんなのを俺は見ただけで覚えられちゃって、我ながらこんな簡単に身に付けられていいのかと思ったけど……道場の人達はビックリして何も言えないくらいだったから、やっぱ俺の方が変なのかも。

 そんな空気の中であんまり長居するのもアレなので、そそくさと退散。宿に戻ってアビと合流し、美味しい晩餐を楽しんだ。

 さあ、明日からいよいよ新たな旅が始まる!

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