0-6 血を見るより明らかだった……
「ーーーー」
幼女が止まっていた。
正確には、幼女を青年が後から座りこんで抱き締めていたーー。
なんです? この光景は? 誰か説明プリーズ。
「……ゆうちゃん……はなして……」
「母さんが包丁をはなしたら、離すよ」
幼女が首だけ振り返り、見つめ合う幼女と青年。
「でも、ゆうちゃん。お父さんがぁーー」
うるいを含んだ声で、幼女が青年の顔に息をはく。
「大丈夫だよ。父さんは母さんをうらぎる事なんてしないからーーほら」
と言い、包丁を持った幼女の小さな手に、その大きな手をかぶせ解きほぐす青年。
幼女は、なすがまま狂気を捨てさり、表情が柔らかくなっていった。
「取りあえず、中に入って話せば、よく分かんないけど」
こちらにそう言うと、幼女と手をつないで先にリビングの方へと歩き出す青年。
しかし、歩幅はいたって小さく、幼女を気付かう驚愕の変態紳士っぷりだった。
ほへーーあたしは終始言葉もなく、その光景に見惚れていた。
さすがは、パパの息子だ……
ロリコンの子はロリコンとはよく言ったものである。
もういっそ、あの二人が禁断の展開になってしまえばーー
パパは絶望して、あたしの元へーー
しかし、そんな事はあるわけはないわけで。
……よろしい……ならば戦争だ!
「パパ、あたし達も行こうか?」
あたしはそう言うと、立ち上がり、パパに手を差し伸べた。
「はい、パパ」
「……あぁーー」
パパは、少し戸惑う様子を見せたが、その手をとってくれた。パパの手には、やはり昔の大きさはない……。
それに、さっきの件でだろうか? ほんのり湿ってもいた……。
「行こ、パパ」
一歩進んでパパの手を引いて、歩をさとす。
「……う、うん」
リビング手前まで来ると、パパは手を振り解いた。
「うぅ……」
わたしはイラついて、パパの腕にしがみつく。
「おい君、いい加減にしなさい」
小声でそう言うパパ、幼女を警戒しての事だろうーーそして外そうとする。
わたしは、パパをだまらす事にしたーー。
「!? きみッ!?」
もっと強くーー
「あ、あたってるって」
「知ってるよ! あててるんだからーー」
パパがわたしの口に手を当てた。
更に緊張で湿ったのだろう手に、ちょっと不快。
「きみーー」
あたしが少し大きな声で喋ったのでビビったのだろう。
あたしは何故か、とっても、
「ひっ!?ーー」
パパの、手を、舐めてみたくなったーーパパが顔をしかめ、手のひらに目をやる。
パパの手は汗ばんでいたからか、しょぱい。まぁ美味しいものではなかった。
「もう勘弁してくれよぉ」
さすがに、やり過ぎたかと思い。サービスタイムはそこで打ち切った。
が、腕だけは離さないーーパパが、この家でどう思われようがあたしにとってはどうでもいい事だ。
さぁ行こうか? パパ。修羅馬と言うなの戦場へーー
ーー次回予告ーー
敵の心臓部リビングへ
少女が口を開く度に空気が揺れる
次々と明かされる真実に翻弄される幼妻
少女は絶対的な勝利を確信していた……