0-5 ユウジと遊二
なんでよ……こんな幼女にはもっと幼いーー
「たっだいまーー」
……へ?
少年の声がし、ガタッとドアが閉まる音ーーだれ?
「あ、きいてよ、ゆうちゃ〜ん」
「……え? なにこの状況? かあさん、なんで包丁なんか? ……泣いてるの? あぶないよ……包丁」
母さん? 幼女が母さん? そんな馬鹿な……。
パパぁーーうそでしょ?
いくらパパがあきれるくらいロリコンでも。
さすがにダメだよ。
エロゲで幼女を18才以上だと表記してあっても、ダメなものはダメだよ。
許されないんだよ!!
つまりなんだぁーーパパは父さんなのか?
そして、この少年がパパの息子?
気になり顔をあげる。
「デカっ!?」
「なんだよ。今気づいたみたいな反応しやがって。つか誰だよ。この子?」
おかしいなーー今までは少年だと思てたんだけど、パパより大きな青年だった。
こんな幼女から、こんな青年が産まれてきたのか……とても信じられない。
まるで夢でも見てる気分だった。
うん。
確かにパパによく似ている。
パパの若い頃はこんな感じだったのかなぁ。
わるくはないけど……。
「いや、お前の友達のーーーー」
「は? なんで俺の友達と抱き合ってんの?」
「……俺にもわからん? 玄関開けたらいきなりこの子が……ほら、ユウジが帰ってきたぞ」
「え?」
目線をそちらへ向ける。
「……だれ?」
「誰って、ユウジだよ」
「へ? パパはパパじゃない」
と、パパを見つめて言う。
「いや、だからパパじゃないし。君は、息子のユウジに会いにきたんだろ?」
「……むすこ? パパは遊二じゃないの?」
わたしはなにがなんだかわからなくなってきた……。
「だからパパじゃないと……もういい。私は、ユウジの父親のユウイチだ」
「……えっ? ユウイチ?? なにいってるの? パパ?」
「なにをいっていると言われても、私の名前は、佐藤ユウイチなんだよ」
「パパはユウイチだったの?」
「あぁ、私はユウイチだ」
「そうかぁ……」
と言いながら、あたしは顎に手をあてーー視線を下げた。
「分かってくれたかい?」
パパが、わたしの顔を軽くうかがうように視界のすみに顔をみせる。
「……うん。分かった」
「そうかーーよかった。誤解も解けたようだし、そろそろ離れてくれないかい?」
「パパ、ごめんね……」
顔を上げパパの顔を見つめ、そう言った。
「ん?」
「名前間違えてたみたい。でも、パパが悪いんだからね! パパがわたしを捨てたからーー」
あたしは、パパに全面的に非があるように言い捨てた。
だって、わたし悪くないもん!
パパとしか呼んだことないし、ママだってパパとしか言わなかったし。
「あなたぁ?」
見ればーーそれまで黙っていた幼女が、
再び顔を赤くし、包丁を握りしめ、今にも噴火しそうなようすだった。
「やっぱり隠し子だったのねーー」
あたしは、パパに擦り寄るーー包丁を振り上げる幼女。
「わ、わ、違う!」
パパは、この期に及んでも認めなかった。
ーー次回予告ーー
振り上げられた刃物は、誰に向かうのか!?
抱き締められる身体
ーーそれは、背徳の感情か? それとも、ただの親子愛か……
少女は手を差し伸べるーー父親はその手をゆっくりと握った。
ーー物語は、まだ始まってすらいなかった……