0-4 少女の嗜虐と父の選択
――今回ご協力頂いたBGMさん達――
TVアニメ バカとテストと召喚獣より『試獣召喚!』
――タイトル通りです。バトル中に掛かる場を大いに盛り上げる曲。
テーマ別に分ける為に、入れたフォルダ名は戦闘モード。
幼女は包丁を下にだらーんと下ろすと、
3Dのアヒルが一羽前へ小さな一歩を進めると、同時に今度はその矛先を真っ直ぐあたしに向けてきた。
「……おい、お前!!」
と幼女にあるまじきドスの効いた声に、鬼のような形相で睨んできた。
あたしは、幼女のあまりの変わりように得体の知れない恐怖を抱き
「なによ……?」
と出そうとした声量より一回り小さい声で聞き返した。
「誤解があるようだから言っとくが、あたしはお前より年上だ」
何を言い出すかと思えば、5さいじのたわ言でした。
あたしは、一気に全身の力が抜け脱力すると。
「うなわけないでしょ。まったくお姉ちゃんをバカにするのもいい加減にしてよね」
「お姉ちゃんをバカにしてるのは、お前のほうだ!」
構えたままの包丁が震えだす。
「そういう設定なんでしょ。近頃の子供はリアル趣向で困ったものね。
幼女は幼女らしく、お人形相手におとぎの国で遊んでればいいのよ」
「……幼女……おとぎの国……。もう許さない。お前はいってはいけない事を言った」
「幼女に幼女って言って、なにが悪いのよ」
「幼女じゃない! あたしはレッキとしたオトナのおんなだ!」
顔を赤くし、憤慨する幼女。あらあら必死だこと……。
自分でも驚くほどに、幼女をイジメるのが楽しくてならなかったーーあたしの中に、こんなにも歪んだ感情がある事に。
「あなたがオトナの女だったら、幼稚園はオトナが通う所だったのね」
「なんだとお前、あたしは大学もちゃんと出てるんだぞ!」
さっきからお前お前って、女の子が使う言葉じゃないよ。
しかも幼女に言われるなんて……。
まったく、最近のクソガキは親の顔が見てみたいよーー
……って、パパじゃないか。
と、パパの顔を見つめる。
パパは困った顔で、わたしと幼女を交互に見ている。
これからは、甘やかすのはあたしだけにしてもらおうか?
「なに幼稚園大学ですか?」
幼女は全身を震わせる。
鬼みたいだった形相はすっかり
お面のごとく剥がれ落ち、鼻の頭を赤くし鼻をすすりだした。
目元は萎え、うるうると今にも溢れ出てきそうだ。
ありゃあーー大人げなかったかな?
お姉ちゃん、少しイジメ過ぎちゃった。
ごめんね。と微かな罪悪感ーーでも今はこちらが心を鬼にする時だ。
恨むんならパパを奪った、さちちゃんのママを恨んでね。
「ころす。おみゃえ! ぜったい、ころしゅ!! あなたどいて! どかないと、あなたもいっしょにころしちゃう!」
「早まるな! さちたん! 冷静になれーー君も、あんまり家の嫁を侮辱すると許さないよ」
「パパなんで? そんな幼女……」
パパは、本当に大事な物を見るように幼女を見た。
あの女を見る時のいつもの目だ。
そして、あたしには可哀想な物を見るような目を見せた。
あの時とおんなじだ。
嫌だ!
あたしは、再びパパに抱きつく。
今度は、より強く二度と離れないように。
渡さない! 絶対渡さない!!
あたしは悪くない! 悪いのはあの女だ!
また、あたしを捨てるの? 嫌だ! 嫌だ! 嫌だぁーーーー
ーー次回予告ーー
緊迫した時間が続いていた……
抱き合う夫と少女ーー泣き止まない妻。
そこへーー