0-3 リアルおままごと
――今回ご協力頂いたBGMさん達――
TVアニメ バカとテストと召喚獣より『ムッツリーニ』
――こんなタイトルだがムッツリーニの印象はそこまで……。
クラッシック系の人の名前っぽいからだろうな。
比較的静かめのギャグシーンに掛かってた
無駄に雄大な曲です。
テーマ別に分ける為に、私がこの曲を入れたフォルダ名はエセ優雅です。
「いいから説明してちょうだい」
「ほんとうに分からないんだって。頭打ったみたいだから、打ち所が悪くて幼児退行でもしてしまったのだろうか?」
「こんな時にふざけた事いって、じつはあなたの隠し子なんじゃないの?」
「なっ!? お前こそバカな事言うなよ! うなわけねぇだろうが」
「じゃあなんなのよ?」
「……そもそも、お前の方がこの子に似てる」
パパの必死な横顔を見つめーーはぁとため息。
何言ってるの? 似てないよ。
なんであたしがこんな幼女と似てるのよ……。
いやまて、パパの子なら似ててもおかしくないのか?
そして幼女を見つめるが
似ていなくも……いやいや認めないよ! あたしこんな子、絶対に認知しないよ!
「はぁ〜? じゃあなに? あたしの子だっていうの?」
幼女は、心底あきれた顔でそう言った。
この幼女は、なにを言っているんだ??
あたしは、心底あきれて、そう思った。
それにしても、さっきから様子がおかしい。
この幼女……まるでパパの嫁のような態度である。
これが世に聞く、リアルおままごとってやつかーー怖ろしい時代がやってきたものだ。
本物の包丁を使うなんてーーそして今まさに、昼ドラ的展開。
あたし、刺されたりしないよね? ははは……。
まさか……遊びだもの。いくら本物の包丁を使ってたって。
「パパ、そんな幼女ほっといて一緒に家に帰ろ。ママも待ってるよ」
「ーーーー」
幼女は、耳まで一気に真っ赤に肌を沸騰させると、言語化不能な奇声を発し、空を何回も繰り返し斬り始めた。
幼女が包丁を振り回す姿は、いよいよ世も末だと思わせた。
「誤解だ! さちたん!」
だから幼女には、包丁はまだ早いって。
自分の指を切る痛みすら、まだ知らないような幼女に、人に刺される痛みなんて分かるとは思えないよ。
昨今の子供は親と遊ぶのも命がけとは余程、刺激に飢えているようで。
スマホを取り上げる前に、包丁を取り上げるべきだよ。
なんとかして、この狂れた幼女からパパを取り戻さなきゃ。
「えっと……さちちゃんでいいのかな?」
幼女は包丁を振り上げたまま動きを止めると、しばらくフリーズし
「……ちゃん?」
と意味不明な事をつぶやいた。
「ん? ちゃん? ……ちょっと、お姉ちゃんの言う事聞いてくれるかな?」
「……お姉ちゃん?」
目の下をピクピクさせ、そう言う幼女。何か気にさわる事を言っただろうか?
「そう、お姉ちゃん」
「誰が?」
「は? 誰ってあたし以外いないでしょ?」
ここには、あたしとパパと幼女しかいないのだ。誰がどう見てもお姉ちゃんは、あたししかいなかった。
ーー次回予告ーー
その矛先は、あらぬことか少女に向けられていたーー
少女をかばう夫ーー激情する妻。
説得する父は、本気でこの人を思うように心配そうな顔をしていた……