第0話 はじまりはじまり
初めまして、インフルエンザなのに何故自分が小説を執筆しているのかわかりませんが暇だったんでしょう。よろしくお願いします。
黒い雲に閉ざされた大地、木々は枯れ果て川なんて呼べるものは見当たらない。大地は赤黒く生命の気配すら感じさせず、視界は悪く常に赤い霧が行く手を遮る。そんな魔大陸の果てにある城、飾り気のないただただ大きいだけの城こそ魔王城である。
魔王城は今、5人の人間の手によって落とされようとしている。
「フハハハハハハハハ!人間風情が!よもやこの俺をここまで追い詰めようとはな!」
左目は魔法で打ち抜かれ、左肩から先は切り落とされていた。重症を負いながらも高笑いをして誤魔化している彼こそ4代目魔王。この城の主にして魔物の総司令官だ。筋骨隆々な体に闇を宿した様な髪と瞳、背中には膨大な魔力を放出してできた翼の様なもの。これぞ魔王といった風体で、自らの傷が深い事を自覚していてもその堂々とした立ち居振る舞いは圧巻である。
「うるせぇ、真っ黒筋肉団子。今すぐその筋肉にのってるだけのバカ面をよこしやがれ」
この口の悪い黄金の剣を正面で構える男こそ魔王討伐部隊の筆頭、勇者である。彼の故郷の王様が、彼を勇者として魔王討伐に向かわせた当初はここまで口の悪い男では無かった。しかし、冒険を重ねるうちに見る影もなくなってしまった。
魔王は思案する、この状況を打開する策を。魔力は有り余るほど体内に残っている、だが大量に出血してしまったせいで強力な魔法を使えば自分の体が耐えられるかもわからない。仮にここにいる勇者パーティーを全滅することができても本来の目的である『魔族の安寧』がかなわない程に魔族は殺し尽くされている現状に絶望し、一つの答えを導き出した。
「よいぞ!よいぞ!貴様の全力でこの俺を殺してみろ!俺も全力の魔法を使ってやろう!(すまないな、皆のモノ。俺はこんなにも臆病で弱い存在だったんだな。守りたいものを守れなかった......だが!)」
「いいぜ!お望み通り、俺の最強の技で殺してやるよ!」
勇者は黄金の剣を上段に構え瞳を閉じ、全神経を集中させる。勇者パーティーの面々は各々の仕事を全力でこなし、勇者のバックアップをする。
魔王は最後の魔法を唱えるために次々と詠唱を唱えていく、注意すべきことは詠唱を聞かれてはいけないこと。幸い勇者パーティーは必死に防御結界を破壊しようと派手な魔法をぶつけてくる。
「---万象廻る事なれば我が魂も廻り逝く。転生流転」
魔王は詠唱を終えると勇者も目を見開き準備万端と言った模様。
「行くぜ!聖剣!あいつを殺すだけの力を!!!」
「来い!人間!」
魔王は無自覚だが、彼が何かしら悪巧みをする時とその策が上手くいったとき、少し笑ってしまう癖がある。勇者パーティーの魔法使いと思しき恰好の女が魔王の異変に気づき勇者を押さえようと走るが、彼女ではいささか遅すぎた。振り下ろされた黄金の剣から止めどない程の聖なる斬撃は、魔王の張った結界をことごとく打ち砕き、魔王を飲み込んでいく。
「フハハハハハハハハ!見事なり人間!俺が復活するまで精々幸せに暮らすといい!フハハハハハハハハ!」
その言葉を最後にこの世界から魔王の肉体は灰となり、魂は消失した。
ご覧いただきありがとうございます。どの程度で残酷な描写なのか曖昧だったんで一応タグを付けさせて頂きます。