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神がいる世界  作者: 土竜
2/2

『力の差』

「ただ一つの違いだった。『思い』から『力』を手に入れるのか、『力』から『思い』を手に入れるかの違い……。」

雨はどんどん勢いを増していっている。

「だけどそれが、決定的な違いだった。その違いによって、俺は『力』も『思い』も手に入れて、お前は『力』も『思い』も失った。」

まるで雨の中には俺とこいつしかいないような気分だった。

正反対な俺とこいつだけの世界。

「それじゃあな。俺は行く。この世界を、俺らしい『正しさ』にあふれた世界にするために。」

その言葉をいって、俺達は離れ離れになった。



「料金は3000ロン位になるけどいいか?」

ケイトが尋ねる。

それをきくと、ストレイジが少し不安そうな顔をする。

「えっと、料金は三日後くらいになっても平気ですか?」

「ああ、平気だよ。まぁ都合よくまだ金もきつくないしな。なんなら一ヶ月後でもいいぜ。」

そういうと、ケイトが何か思い出したように、手の平をこちらに向ける。

買い物のお釣りを渡せ、って事だろう。

やばい、そうだった。

「悪い、金全部偽金だったみたいで、飲物かえなかった。」

「……は?」

めちゃくちゃ笑顔で聞き返して来る。

ブチ切れてやがる。

「いや!だけど持ってった金が、たまたま偽金だったんだから仕方ないだろ!」

そう言い返すと、すぐさまでかいため息をつく。

「ならその偽金はどこだよ。」

「荷物になると思ったから、偽金って教えてくれた店のおっさんのところにおいてきた。」

「やっぱテメェはアホだ。テメェを行かせたの俺もアホだけどな」

「意味わかんねー。何がいいたいんだよ」

そういうとケイトが、灰皿にあった火がまだついている煙草を手にとる。

そして俺の額に押し付けながら怒鳴った。

「お前は騙された、って言ってんだよ!このボケが!テメェがおいてきた金は全部本物だったんだよ!」

そう怒鳴り終えると、ケイトはストレイジの方を向く。

「わるい、三日後までには絶対金を用意しといてくれ。」

「は、はい。わかりました。」

その言葉をきくと、ケイトが上着を羽織り、煙草を口にくわえる。

「俺は、いまからその金を巻き上げやがった糞野郎んとこにいってくる。レム!テメェは念のためストレイジちゃんを守っとけ!」

そう怒鳴って外にでていった。

「守るっつっても、おそわれることなんてないだろ。」

そう呟く。

第一、詐欺りやがった奴なんてもう逃亡済みだろうしな。

そんなことを考えていたら、ストレイジが急に俺に質問を投げ掛けて来る。

「あなたのように『神』と言う言葉は、今では大体の人がくだらないといいます。けれど、『神』を信じている私からしたら、何がくだらないのかわからないんです。一体なにが、『くだらない』んですか?」

「何だよ嫌味かよ?」

「い、いえ!そんなつもりは……!」

まぁ別にどっちでもいい。第一そんなもの、答えは決まってる。

「他の奴らの意見なんてしらねーが、俺は『神』がいるかいないかより先に、例え『神』がいたとしても、『神』はくだらない奴だといってんだよ。」

「『神』がくだらない?何故ですか?『神』は世界を作った立派な―――」

「世界を作った事は立派なのか?」

俺が言う。俺からしたら答えは決まっている、立派なんかじゃない。

「生きる喜びを絶望によって感じなくなった奴にとって、世界を作った『神』なんて、一番の敵対する存在だ。立派なんかじゃない。」

そう断言すると、ストレイジが言い返す。

「確かにその人からしたら、『神』様は敵かもしれません。それに『神』を憎むのも仕方がないかもしれない。けれど『神』様にだって、限界があるんです。だからそんな助けきれないを助けるために、人々に『個々の力』を託して下さったんです。だから私達のような救われている人々は、『神』に感謝するべきなんです。」

ストレイジの考えはそうなのかもしれない、けどそんなの俺には関係ない。それに

「なら俺は『神』を憎む権利がある。」

俺が言い返す。

ストレイジが疑問の言葉を発する前に、俺が言葉を紡ぐ。

「昔いた俺の幼なじみはさ、とてもいい奴だったんだ。俺の1番信用できる奴だった。何より、あいつがいない人生なんて考えられなかった―――俺はあいつが好きだったんだ、と思う。」

今頃いっても何にもならない。それくらい知ってる。

ストレイジは、俺の突然の独り言に軽蔑もせず聞いてくれている。

「15くらいの時まで、あいつは俺の心の支えだった。だけどそれは暗転した――」

――あいつは売られたんだ、あいつの親父に……。

今でも怒りがほとばしる。あいつの親父に、何より俺に。

「いつもと様子が違うことくらいわかってた。遠慮しがちな笑いも、気が緩んだ時にみせた悲しそうな顔も、だけど俺はあいつに何も尋ねなかった。そんなこと聞いたら、軽蔑されたり、何か変わってしまったりする気がして、怖くて尋ねなかった。」

俺は逃げたんだ、力があっても逃げだしたんだ。

「なんて残酷な――。なるほど、それであなたは、神様を憎んでいるんですね。」

それに頷くと、気持ちを切り替えるためにもため息をつく。

「だけどそれは後の祭りだ。どうしようもない。それより、今は生きることに必死だしな。」

そういって、床に寝転がる。

その瞬間、床から誰かの足音が伝わってくる。 ケイトにしては早過ぎる。

方向は―――ストレイジの方向!

「ストレイジ避けろっ!」

ストレイジがスカートで座っていることなど、構っていられなかった。

すぐさま手が届く武器を、ストレイジの方へ投げる。

投げたナイフは、電気を放って、ストレイジの真横を通り過ぎた。

手応えはない。

「逃げたの……?」

ストレイジが頭をかかえながら尋ねる。

「わからない。とりあえず俺と一緒に外へ来てくれ。」

そう伝えて武器をもつと、注意をはらいつつ、ストレイジと外にでる。

「あれ、誰もいない?」

ストレイジが回りを見渡す。

確かにまわりには誰も見当たらない。

「だけどわからない、いるかもしれない。丁度こういう時に、こいつは役に立つんだよな。」

そう呟くと、玄関に立て掛けてあったボウガンを構える。

そして俺の力を使う。

屋根裏。

「隠れるのがうまい奴。」

そういって敵にボウガンを放つと、屋根裏から飛び上がり、俺達の正面へと降りる。

「どうやって、俺の『消える』力を見破った?俺の力なら電磁波だってみえないはずだ。」

電磁波……。とりあえず電気の力みたいなものか?

「俺の力は電気なんかじゃねーよ。」

そういうと、ボウガンを降ろし、さしてあった刀を構えて、能力を使いつつ、剣を振るう。

その瞬間に、男が剣を盾にするように右手を突き出す。右手に剣は見えない。

だが、風の刃は見えない剣と共に、男を吹っ飛ばした。男は砂詰めの袋へとぶつかった。

それをみて、すぐさま間合いをつめて、砂埃のなかを剣で突く。またも手応えはない。

「だけど、これでいい。俺命名のこいつの武器名は『風鋼刀』―――」

旧使用者の能力は風――!

「風爆!」

風鋼刀を中心に風の爆発が起きる。

それは砂埃を払う、なんてレベルじゃない。正に爆発という程の、半径10メートルの物が消え去るレベルの風が起きた。

爆発が収まったものの、敵は見えない。

「どこに――」

「きゃっ!」

ストレイジの悲鳴に振り返る。

男はいつの間にかストレイジの背後にいた。

「やめ……ゴホッ!」

「おとなしくしていろ。」

そういってストレイジを肩にかけ、消えながら逃走をする。

「くそっ!」

俺もすぐさまボウガンをもって、力を使い男の後を追う。

油断した!見失う前に追いつかないと!

走る、走る、走る。

「ちっ、随分としつこいな!ついさっきあったばかりなのに、よくもまぁ思い入れがあるんだなぁ!」

男がこちらに叫ぶ。

知るかよ。ただ俺は、ストレイジを、あいつの二の舞にしたくないだけなんだよ……!

「だけど残念、タイムリミットだ。」

男がそういうと、急に一人の少女のまえで立ち止まる。

「後は頼んだぜティアナ。」

「了解。後はあなたは、悠揚とその娘を運んでいればいいわよ。」

男が、ティアナと呼ばれた少女と手を打つ。

ちっ、仲間がいたのか……!

「そこをどけっっ!」

俺がボウガンを投げ捨て、ティアナにナイフ『雷包澄』を振るう。

けれども少女は動こうとしない。

「焦りは禁物。確かに『先んずれば人を制す』ともいうけどね。だけどそれなら―――」

私のほうが早いかも。

『雷包澄』がティアナがたどり着く時には、少女は既に俺の顎に蹴りをかましていた。

「な……んで……。」

俺は軽々しく吹っ飛び。何メートルか後ろに倒れ込む。

「残念、あなたには死んでもらうわね。」

そういって、ティアナが近づいて来る。

今手元には、ナイフを手放してしまったから、刀二本しかない。その内一本は回復用。つまり刀は一本しかないようなものだ。

だけどこいつだけで充分だ!

無理矢理腰を持ち上げ、刀をもつ。

いけっ!すい―――

「全く油断大敵ね」

ティアナは、俺が力を使う前に、隠し掴んでいた刀を蹴りとばした。

いつの間に……。

その瞬間に、俺の勝ち目はなくなった。殺されるだけだ。

そう思っていたら、ティアナが顎に曲げた人差し指をやり、何かを考え出す。

そして突然に意外な質問を繰り出してきた。

「あなたの力、何か教えてくれないかしら?力によっては、あなたは殺さないであげるわよ。」

言わない。こいつの言う通りに動きたくなんてない。

それに言わなければ、俺の力は当てようがな―――

「『武器に宿った力を解放する』、つまり『昔、その武器を使っていた人が持っていた力を、武器から引き出す事が出来る』そんなあたりじゃないかしら?」

図星をつかれる。

大体言い当てられたこんなの状況では、反論のしようがない。

その反応を見て、こちらにいいかける。

「なら見逃してあげる。その分精一杯生きなさい。」

そう言うと後ろをむき、とても小さな声で何か呟く。

「悪いわね。利用させてもらうわ。」

その声は聞こえなかった。

しかし、俺にはそんなことよりも大きな絶望感があった。

守れなかったことに対してではなかった。

勝てなかったことに対して、絶望していた。

そして何より、そんな自分が嫌いだった。



ここまで読んでくださってありがとうございます。


わかりにくいかもしれないので、登場人物各各の力を書いていきます


レム・ロバート……『適当な武器をもつことで、その武器を前に使っていた人達の能力を使用できる能力』。短くいうと『武器力を引き出す能力』


ケイト・ユノアール……(後ほど)


ストレイジ……(後ほど)


男 ……『見えなくなる能力』。手に触れている武器なども見えなくできる。


ティアナ……(後ほど)


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