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時を超える記録
時は流れ、十九世紀の湿地は、今や静かに歴史の中に埋もれていた。
ある研究室で、若き科学者が古い箱を開ける。
埃をかぶった記録帳、手書きの図、淡い灯油の匂いの残る紙。
ページをめくると、そこには見覚えのある観察記録が残されていた。
球体破裂。
微小体の放出確認。
昆虫体内で血中寄生体が次段階へ移行する証拠。
署名は「ラヴラン」「ドラン」。
若き科学者は息を呑む。
「これが……十九世紀の観察……」
顕微鏡を取り出し、当時の方法で再現実験を試みる。
小さな球体が破裂し、微小体が動く光景を目の当たりにして、胸が高鳴る。
制度や権力に阻まれ、時代に埋もれた真実が、
時を超えて、再び世界に姿を現した瞬間だった。
若い科学者は記録帳を胸に抱き、静かに呟く。
「科学は、待つことを知っている」
窓の外、遠い湿地の風が微かに揺れる。
顕微鏡の中の微小体は、今も規則正しく分裂を続ける。
そして、静かに未来の理解へと橋を架けていた。
めでたしめでたしでした
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