第2話 私の魔法
メイドの初仕事が終わった。
「お疲れさまでした、よくできてましたよ。」
「結構やらかしましたけどね。」
「さて、夜遅いですから、寝てくださいよ。」
「ミリアさんは?」
「魔族は睡眠は必要ないですからね。それに、やることがまだあるで。」
「休んでくださいよ?」
「誰に向かって言ってるのですか?」
「そうでした。」
私はミリアさんと別れ、部屋に戻ろうとしていた。
「つーかまっえた!」
「きゃっ、は、離して!」
「そーはいかないぞー?サプライズされたら、やり返すしかないでしょ!」
いつも助けてくれた、ミリアさんは来ない。
声は聞こえているのだというのなら、心配していないということ。
…ならいいか。
「あっ、来た!」「シークー!待ってたよ!」「急なせいで、ありもので祝わないといけないけど。」
「祝い…。」
「信じてないなぁ。素直になればいいのに。」
「いえ、ゆ、友人がいなかったので、母や従者以外に祝われたことなくて。」
「へー、つまり、私たちは友人みたいなものってことね。」
「え、違うんですか?」
「違わないよ!もー、大好き!」
女子はキャッキャ。男子はにっこりと笑みを浮かべていた。
「さてと、戯れはこれくらいにして。のど乾いたでしょ?」
「ありが…って、何のジュースですか、これは。」
「ぶどうジュース☆」
「まだ子供なんですけど。」
絶対ワインだ。
「またまたぁ。もう十分大人だよ。」
鏡を持ってきていた。
そして、戦慄した。
明らかな急成長。兄と同じ…もしくはそれ以上だ。
そういえば、この前言っていた。
〈魔族って、成長が早くってね。学校(?)とかないのよ。〉
魔族だけと思っていたが、人間にも適用されるのか?
「ね?」
「ま、まだ心の準備ができてませんし…。」
「ね?」
私は目を回した。
「シーク―…頭痛い。」
「自業自得でしょう…。」
次の日、当然のようにパーティ参加者が二日酔いだった。
「はぁ、止めても無駄ですし、しょうがないですよ。」
「ミリアさん…。」
「その場に酔って、飲みすぎていないようですね。安心しましたよ、シーク。」
「ありがとうございます。」
頭をなでられて、うれしかったのは、内緒。
その後、二日酔い組は仕事になればきちんとしていたので、驚いた。
※
「魔法…ですか?」
「えぇ、憧れではあるなって。学園には通えませんでしたし。」
「わかりました。では…。」
「その件、俺が受けよう。」
後ろから男の声がした。
「魔王様?」
「少し時間が空いててな。いいか?」
「か、構いません。」
「では、ミリア。シークを一時休ませるように。」
「えっ。それなら、私はやめ…。」
「シーク。」
名前を呼ばれた。それだけだった。
息をのむ。さすがは魔王様。
「ミリアを護衛にさせているのは、シークがまだ未熟だからだ。それに、時間をかけないとできるとは思えん。ミリアに迷惑をかけたくないのであれば、素直に応じるべきだが?」
「…そう、ですね。ミリアさん、お願いしま…。」
「いいですよ。もう、変更はできています。」
できる女だった―!
「来い。」
連れられたのは城内図書館。
「これを読んでいろ。俺は持ってくるものがあるんでな。」
と、図書館から出て行ってしまった。
古い本だ。でも、ちゃんと人類語だ。
”魔法における基本”
魔法には、三原則がある。一つ、魔力。二つ、制御力。三つ、想像力。
「想像力?」
魔法において、聞いたこともない言葉だ。
魔力、制御力はわかる。でも、想像力が必要だとは思えない。
「読んだみたいだな。」
「魔王様!」
「今はプライベートだろう。その呼び方は堅苦しい。グレッグと呼べ。」
「グレッグさん…?」
「そうだ。それと、これを。」
渡してきたのは石板。
触れた瞬間ぐねりと動き出した。
「なにこれ…。」
「ステータスだ。ふむ、今まで放ってるのがもったいないくらいだな。」
「そんなにですか?」
「手を加えてないから、まだ弱いともいえるな。」
「ひどいです。」
「勇者に匹敵するほどまで育ててやる。」
「え?」
勇者?いや無理無理。一応あいつらとは仲はいいけど、勝てるものじゃないよ…?
「じゃ、始めるか。」
もしかして、私、魔改造される!?
「まずは、魔力を感じることからだ。」
「ひゃぁ!」
すっと腕を指でなぞられた。
当然くすぐったい。
「す、すまない。」
「じ、事前に行ってくださいよ…。」
「もう一度、いいか?」
「…お願いします。」
今度は成功したようだ。
体に流れる白い線。これが魔力だろう。
「魔力は生命において必ず必要なものだ。だが、それを引き出すのは難しい。膨大であればあるほど、感じやすいのだ。お前は人間の中でもトップクラスの量を持っている。俺のような魔力を近づければ、こうなるのだよ。」
魔王なだけあってやっぱり博識だ。吸収することは多いだろうな。
「で、だな。膨大だからこその制御のむずかしさがある。本番はこれからだぞ?」
それから、地獄が始まった。
魔力を体の中で動かすというもの。
聞くだけなら簡単だが、知ると使うとはまた違う。
何もできないまま、1時間以上過ぎていた。
「シーク。休憩しよう。疲れは悪化するばかりだぞ。」
「わかりました…。」
悔しかった。そりゃ、早くできないとは思っていたが、ここまでとは思わなかった。
「ほら、水だ。」
「ありがとうございます。」
魔法でできた水。ただの水ではない。疲れが取れるうような…。
「水にも魔力はある。が、濃度が濃ければ濃いほど、たくさんの効果を持つ。」
濃いか…。
そういえば…。
―――――――
「あん?ガキは帰りな。」
「おばさま、なにをしてるの?」
「化学じゃ。お前にゃ、わからん事じゃよ。」
「わからないからおしえてほしいんです!」
「はぁ…これだからガキは嫌いなんだよ。来な。」
―――――――
その時、科学というものを少し教えてもらった。
もし、水という液体ではなく、小さな粒の塊として考えたら…。
「おい、休めといったはず…。」
ぶわりと白いものが右手に集中したのだ。
「何をした?」
「水の濃度がヒントだったんです!水の濃度が高いということはそこに魔力がたくさんあるってことです。魔力は血のように液体だと思ってました。でも違った。小さな粒の塊だったんです!液体としてみたら、それを一個としか見ない。だから、一個の力で全部を動かすことないん手出来ないのと一緒で、一粒一粒を動かせばできました!想像力が必要ってこういうことなんですね!」
「…そんなこと、考えないだろ…。」
あきれたように魔王はため息をしたが、私は嬉しくって気づかなかった。
「まぁ、それができたのなら、あとは一つだけ。使うことだ。お前の得意なのは氷属性魔法だ。使ってみるといい。」
「何で知っているんですか?」
「触れたとき、魔力が冷たかっただけだ。」
「なるほど。じゃぁ、’アイス…’」
「待て。」
右手を握ってきた。
「な、ななな、なんですか!?」
「詠唱はいらないぞ。想像して、出す。それだけだ。」
「嘘ですよね…?必要って聞いたのに…?」
「嘘は言わない。あれは魔法強制執行詠唱と言って、魔力を制御できなければ負荷のかかるものだ。シークならなんともないだろうが、必要はない。」
「そうなんですか…。」
なら、やってみるしかない。氷を想像しよう。槍のように細くとがったもの…。
「あれ?」
思ったより小さな氷だった。
「初めてだろう?それだけできれば十分だ。」
ぽん、と頭をなでられた。
「…は、恥ずかしいので…やめてくださ、い…。」
ドアの向こうでのぞき見をしている人がいたのだ。
「いいだろ、別に。」
「え?」
なぜか顔をそむけた魔王様。
「魔王様?」
「もう1か月か…。言うべきなんだろうな。」
「何を?」
「お前をさらった理由だ。」
2話目!
打つの頑張りました!
ほめてほめて!
次回も頑張って作ります。お楽しみに!